↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その【聖女】転生者につき。  作者: お餅憑き
四章:夜会と新たな目的地。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/127

頁:46 その【主催】聖女につき。



 ――早朝の学術都市。


 都市は起きたばかりの朝露の香りが漂うような時間帯。

 薄い霧が立ち昇り、静けさを纏い人影もまばら――


 石畳の上を「コツコツ」と、乾いた靴音を響かせ、会話を交わす二人。

 勇者(ノア)と聖女(セラ)はとある目的の為、彼らで行動を共にしていた。



 道中――ふと立ち止まり、勇者は腰に佩(は)いた聖剣の鞘を軽く叩く。

 胸中で唱える言葉は『今日もよろしくね。』という、短い言葉。


 返ってくる言葉もまた短く『承知した。』と、一言それだけ。



 二人の目的地は、聖女の希望で、昨日彼女が訪れたという教会。

 教会へとたどり着き、白亜の門をくぐり――周囲をぐるりと見回す勇者。


 どうやら間が良かったようで、ちょうど礼拝が終わった頃合いらしい。

 信徒たちは三々五々と、散っていくところだったようだ。


 じっとその様子を観察していた二人。


(なんだか話しかけづらい空気ですね……神官様はどちらでしょうか?)


 キョロキョロと視線を巡らせていたところに、一つの影が近づく。

 二人を歓迎するように、ぴしゃりと背すじを伸ばした老齢の姿。


 白を基調とした司祭服を身に纏った、恰幅の良い男性が二人へと近づいた。


「おやおや、これは勇者殿――それに昨日に引き続き、聖女セラフィーナ様。

 朝のご挨拶を申し上げます……お二方。」


 老体の割に伸びた背すじ。その歩みには迷いというものが見られない。

 司祭は深く一礼した後、穏やかな声音で言葉を続けた。


「実に丁度いい間でこられました、お二方。 ――神々に感謝を。」


「さて――実はですね聖女様。昨日の癒しの数々、その功績を称え――

 星律教導(オルディナストラ)としても、お力添えをしたくですね……。」


「是非――聖女様ご自身主導での夜会を催したいと、考えておりまして……。」


「――えっ!?わ、私(わたくし)が主導ですかっ!?星律教導(オルディナストラ)ではなくっ!?」


 ビクリと肩を震わせ「あわあわ」と辺りに視線を彷徨わせるセラ。

 どうやら寝耳に水だったらしく、本気で焦っている様子だ。


「ええ……聖女様の清らかな御心と、慈愛の心を人々に広く示すべきと――

 どうかご安心を……神殿や教会が全面的に協力をさせていただきますゆえ。」


 返答に困り、言葉を失ったまま逡巡。隣に控える勇者へと視線を向ける。

 胸の奥にはどうにもそわそわとした不安に駆られ、落ち着かないのだ。


(私のような未熟者が夜会の主催だなんて……これまで私社交界は――)


 だが、これは絶好の機会であることはさすがに分かってはいた。

 昨晩の話し合い、勇者が語っていた言葉――


『貴族のことを探るなら――』


 頭では理解していても、脳裏によぎるあの末端冷え性(ニヴェイシア)の貴族(こと)――

 彼の冷たい温度を思い出して尻込みしてしまうのは、どうしようもないこと。


 隣に視線を移せば、勇者が瞳を細め、朗らかに微笑んでいる。


「大丈夫!セラが主催だったらきっと沢山の人を安心させられるよ!

 僕もいるんだし!セラの安全は僕にまかせて!それに――」


 聖女の耳元に口を寄せ、付け加えるように囁く勇者。


『セラは“ニヴェイシアさん”を追ってるんでしょ?なら――

 なおさらでしょ?セラが主導なら、色んな貴族さんが集まるかもだし……!』


 茶目っ気を感じる微笑に『ねっ?』と片目を瞑ってウィンク。

 彼の言葉に、感じていた不安が多少は和らぎ――瞳を伏せ呼吸を整える。


「わかり、ました――っ!不安はありますが、私に出来うる限りのことを!

 と言っても――私主催の夜会だなんて初めてで、大丈夫かしら……?」


 老齢の司祭は頭(こうべ)を深く垂れさせ――力強く言葉を落とした。


「おまかせくださいませ、聖女セラフィーナ様……。」


 顔を上げ――夜会の概要や必要なもの、注意事項を二人へ伝えた。


 司祭の話に、真剣に耳を傾けるセラの姿――

 彼女の姿は、ノアの瞳には凛とした女性に映っていた。


 ――かくして、聖女主導の夜会の開催が、急遽決まったのだった。


 ◇ ◇ ◇


 しかしその後――二人は結局宿へ逆戻りする羽目に。

 必要なものや準備のため、とんぼ返りすることとなってしまった。


 その道すがら――耳飾りの魔道具を装着し、口を開いた勇者。


 セラ主導での夜会が催されるのだと、簡潔に語った。


「――ってことだから、僕は夜会に参加することになったんだぁ!

 かめんぶとーかいだって!たのしみだねぇ!あれ……でも――」


「僕……踊れないよ……??」


『成る程――夜会ッ!承知いたしましたッ!ではワタクシとルル嬢は――

 勇者殿と聖女殿がご活躍の間、資料と情報の整理を引き続きッ……』


 禁書庫という空間のせいなのか、彼の声はやたら残響して聞こえた。

 そして――どうやら禁書庫内にいるのは賢者だけではないようだ。


『えー……あたしもドレス着て踊りたかった。それか曲芸でもいいぜ?

 賢者ちゃーん、あたしと踊ろうやー?』


『道化師としてあたしも招いてーやー!ぶーこら。』


『残念ですがッ!ワタクシ舞踏の心得はありますが――なんせ持久力がッ!

 立って三分、歩いて一分!舞踏開始五秒で崩れ落ちる自信がありますッ!』


『ですので、心得があっても無用の長物ですなッ!! ハハッ!!』


『……まるで武闘の舞踏ってな……っぷ、くく。』


 何やら聞こえてきているのだが――やはり、誰も何も言えない。

 ただただ、冷えていく空気に身を委ねるしかない。


「えっと――パルのは自慢できることなのかな……?あはは……。」


 ノアの隣に控えていた聖女は、どうやら脳内で妄想を繰り広げていたようだ。

 彼女の脳内では、文字通り五秒で崩れ落ちる賢者が再生。


 必死に笑いを堪え、肩を震わせて声に出さないように腹部を抑える。


「あれれ?そういえばパルは? パルー?お返事してー?」


 騎士の声を待つが――耳を澄ませても騎士の声は届かない。

 笑っている場合ではないと、不安に駆られてしまう聖女。


 彼もまた――ニヴェイシアの被害にあってしまったのでは――?


 聖女の不安をよそに、隣にいるノアは特段気にする素振りはない。


「ま、パルのことだから大丈夫だよっ!騎士仲間を当たるって言ってたし!」


『セラちゃんの声も聞こえんけどでーじょぶなん?』


「セラは僕の隣だよ――」


 軽く受け流している全員。自身の杞憂で終わればよいが――


 しかし考えすぎも確かにあまり良くない。それに彼は騎士だ。

 そう判断し、聖女は勇者とともに行動開始するのだった。






【設定メモ:煌陽国の宗教の名前】


 本文に出てきた『星律の教導(オルディナストラ)』という名前ですが

 煌陽国セレスタリア、聖女の所属する宗教の名称です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。