その【岩礁】虫楽園につき。
荒れた岩礁の足場は、意地悪な迷路のように入り組み、足元が悪い。
苔や海藻でぬかるみ、時折波がしぶきをあげて押し寄せる為――
丈の長い法衣を纏うセラにとっては、最悪な状況だった。
彼女は岩場のぬかるみを確かめるように、ちょんちょんと足先で確認。
その後足を動かし、滑らない事を確認し、一歩一歩を確実に渡る。
が、当たり前ではあったが――かなり遅い。
そんな彼女をよそに、セラ意外の三人の移動はとても素早い。
ノアはぴょんぴょんと岩場を渡り、パルテオンは大股で移動。
ルルですら跳ねるように岩場を渡っており、セラは置いていかれていた。
アメトは皆の後ろ姿を確認し、セラの様子をじっと観察していたが――
あまりにも怖がるザマに小さく息を零すと、彼女の元へと移動。
「キミさぁ。 それだと時間掛かりすぎなぁい?
ちょっとボクの手を取ってくれるカナ。 転送でも良いのだケド……。」
「この距離なら瞬間移動の方が魔力の効率がいいからサ。」
セラの側まで寄り、そっと手を差し伸べ、胡散臭く微笑むアメト。
手を取るか迷ったが周りに視線を向けると、皆の姿はもう遠い。
「すみません。 助かります… その、有難うございます……。
閣下のお手を煩わせてしまい、申し訳ございません。」
セラは視線を逸らし、アメトの手を取ると皆を置いて陸地へと移動。
少しだけ身体に浮遊感を感じたが、先程の恐怖よりマシだと息を付くセラ。
「ボクと聖女サマは服を汚したくないからサ。 ココで待ってるネ?
やー、ホント便利だヨー。 ヒヒッ!」
声を上げた後、側にいるセラの耳に顔を寄せ、小さく囁くアメト。
『悪いネ。 今のキミの表情からは、ボクに触れられたくないと――
そういう感情を感じられる。 相変わらず“閣下”呼びだし……
少し傷つくナー? ボクの事、そんなに嫌いカナ? ま、当然だよネー。』
飄々とした口調。胡散臭い微笑で相変わらず何を考えているか、分からない。
「嫌いとかではありません。 ですが、私と閣下の身分を考えると妥当かなと。
それと――私は閣下のその…冷たい微笑が時折恐ろしいのです。
緊張もしておりますし……。 不愉快でしたら…ごめんなさい。」
アメトは「やれやれ」と言いたげに肩を竦め、そんなやり取りの最中――
岩場を跳ね渡るルルが、セラとアメトの姿を確認し、抗議の声を上げた。
「移動方法ずっこい! 二人だけ駆け落ちしてからに!
あたしも運んでや! あたしの足は皆とちがって超みじけーんだぞ!」
「はーもう!! あたし、足短いだけに、足手まといじゃ!!」
ルルの悲痛の叫びのような抗議を聞いたアメトは、瞬時にルルの元へ。
「キミさ…ソレ、言いたいダケデショ…辞めなヨ……?
ボクよりよっぽど“幽玄の白雪”ヤってるヨ…恐ろしいネェ……?」
アメトはルルの首根っこを掴み、そのままセラのいる陸地へと移動。
「めっちゃ素直にあたしの言葉きいてくれんじゃん。 こっわ。
でもとりまあんがとよー 助かったわー」
「怖いって…あのサァ。 チビっ子チャンの言葉を飲んだのに――
ボクの厚意を何だと思ってるのサ…。 ま、別に構わないケドね?」
その後すぐにノアとパルテオンとも無事に合流。
陸地の直ぐ側に広がる森へと、一同は足を運んでいった。
潮風を受けた木々たちは、葉擦れの音をさわさわと響かせる。
背後からは波の打ち付ける音が聞こえ、周囲には不気味な雰囲気が漂う。
辺りを見渡し、ノアがぽつりと独り言を呟いた。
「様子がおかしいってお話だったよね? どんなお話だったっけ…?
魔物が騒いでるとかだったかな? 僕忘れちゃった…あはは……」
周囲に人の気配はなく、草木が生い茂る獣道は来る人を拒むよう。
時折蔦が足を取り、そんな足場の森の道を、慎重に進んでいく一同。
「ここ事態がおかしいちゅー話だったはずだぞ。」
とノアの疑問に答えるパルテオンだったが、しかし。
突如として地中から何か音が聞こえたかと思うと――下からの不意打ち。
ノアが何かを叫ぶ前に、唐突に地面がボコボコと盛り上がる。
地中に何かが居るような蠢きを見せた後、地が震え、大地が裂け――
裂け目から這い出るように、一同の前へと姿を見せた魔物。
その姿は鋼鉄のような外骨格を持った、巨大な多足類の昆虫。
節ごとに鋭い爪と硬い外骨格――禍々しい姿。
ノア、パルテオン、ルルは既に臨戦態勢へと移っていた。
が、セラは顔を青ざめさせ、片手で胸を押さえつけ、呼吸を荒げる。
血の気が引いているらしく足が竦み、どうにも頼りない。
そんな彼女の様子にいち早く気が付いたアメトは、そっと彼女の側へ。
身を屈め、囁くように『見ないほうが良い。』と冷静に言葉を投げた。
続けざまに、わざとらしい溜息を吐き出し、セラの背をぽんと叩く。
「怖いのなら、無理する必要は無いんじゃなぁい? ヒヒッ!
この程度、キミたちならどーとでもなるとは思うケドー」
「とりあえず聖女サマ。 皆への支援の《祈り》は忘れずにネー。」
言葉を落としながらも彼はなにやら手を翳し、何かをしている様子。
しかし、彼の予備動作は前衛の騎士や勇者には、見えてない。
「おいッ! 敵が目の前に居んだぞッ! 何コソコソしてやがんだッ!
あんだけ啖呵切っておいて、おめぇさんは戦わんのかッ!!」
パルテオンが声を荒げるが、アメトは胡散臭い笑みを浮かべるだけ。
だが眼の前に迫っていた魔物は、何かに足を取られているのか――
もぞもぞと身動ぎするばかりで、それ以上動く様子がない。
「ン、もうやってる。 拘束しといたからサ。 後は好きにしなネ。」
怒声を向けられていたが気にする事無く、彼は軽薄な調子で片手を動かす。
パルテオンが視線を敵へと移すと、魔物の節には無数の白い蔦が絡みついていた。
「なっ……! どういう、こった……! いつから動いてやがった……!」
ノアは驚いてはいたが好機と見て、多足類の魔物をあっという間に両断。
が、最初の魔物に誘われたのか、周囲にはいつの間にか敵影で溢れかえる。
「ちょっ……!! なんだかすっごく集まってるねっ…!!」
ノアが瞳を細め周囲に目を向けると、気がつけば魔物に囲まれていた。
周囲には巨猪、巨鳥、大蜘蛛や蠍等。多種多様な魔物たちにぐるりと包囲。
「ワーオ。 四面楚歌ってヤツー? 勇者サマ方はどうするのカナー?
キミたちがどう戦い抜くのか、ボクは興味に尽きないヨー。 ヒヒッ!」
彼は囲まれているにも関わらず、飄々とした態度を崩さない。
様子を伺い、皆に判断を委ねている。
相変わらず胡散臭い笑顔を湛え、動揺する素振りもない。
どこか他人行儀で皆を見つめていた。
魔物たちは唸り声を上げ、臨戦態勢で今にも襲いかかりそうな様子。
羽ばたきや節が地面をえぐる音、外骨格が何かを打ち付ける音。
それらが入り混じり、森全体が魔物たちの奏でる音で満たされていた。
ノアはそれらを一瞥しながら、心中で僅かに焦燥を芽生えさせる。
(空にも陸にも敵がまばら…これだけ散らばってたら……)
(勇者特権は使えないねぇ…どうしよっか。)
『――勇者特権・起動……』
ノアの構えている聖剣に僅かに光が集まっていき、力を高めるが――
『ちょっとまって!! 聖剣さん!!違うから!
まだダメ!!まだダメだからッ!!!』
彼はワタワタと慌てふためき謎の挙動をし、必死に聖剣を振り回し宥める。
パルテオンがその様子を「なんだぁ…?」と呟き、大盾をドンと構えた。
彼らの後方に控えるルルが短杖を召喚し、高らかに声を落とす。
「雑魚はあたしにまかせーい!!
ひっさびさに、どでっかいの、いっくでー!」
ルルは短杖を握り高く掲げ、紅い瞳に魔力が灯り、詠唱開始。
「蒼穹の天……八重雲を糧とし、神さぶる怒号を招かん。
導は此処に、万物を裁く指先が今、汝の心魂を貫かん――
《テンペスタ・フルグロール》ッ!」
彼女の言葉が紡がれると共に、空を覆う雲が徐々に収束していく。
次第に、陽光を覆い隠すほどの分厚い黒雲へと変化。
白い閃光と凄まじい轟音と共に、稲妻が空を飛ぶ魔物を穿つ。
ノアとパルテオンは思わず息を呑み込み、凄まじい様を見つめていた。
巨大な鳥型の魔物は、稲妻の直撃を受け地に落とされ、その数を減らす。
周囲の敵の数の多さに圧倒されるが、セラは胸元に手をやり、錫杖を変形。
目を瞑り錫杖を胸に掲げ、皆の為に《防護の祈り》の言葉を紡ぐ。
「天にあらす我らが主よ、星の巡りの元……不浄、災い、悪しきを退け――
その御力を以て、長き安寧を与え給う――《ドミヌス・グラティア》」
錫杖から淡い金色の光が迸り、たちまち全員の身体へ守護の結界が展開。
各々が戦いに励む中、アメトはというと突っ立ったままで、彼は棒立ち。
ノアは聖剣で地上の魔物を切り裂き、ルルが魔法で後方の敵を焼き尽くす。
打ち漏らした魔物をパルテオンの大盾が弾き返し、メイスで叩きつける。
そんな前衛二人をセラが錫杖を胸に、静かに《祈り》を捧げ、守護。
聖女の後方から、巨大な猪が突進して来ていたが、しかし。
途中で足を取られたのか、猪は停止し、それでも足を動かす。
何か行動を起こす前に、薄紫色の炎が猪を燃やし尽くし呆気なく撃破。
(後方にも気を遣いなヨ……。 前方ばかりに気を取られてるネー彼ら。)
「――はぁ。キミら、もっと後方も見ないとダメだヨー?
さーて。 キミたちはどう切り抜けるのカナァ?」
「るせー! あたしらはあたしらの戦いをすんだ!!
もいっちょ!魔法いっくぜー!」
アメトの言葉を受け声色に怒りが滲んでいるルルが、声を張り上げ詠唱。
「流転する水よ、生命の根源たる力を以て、御敵を包み……
逃れ得ぬ奔流を呼び起こせ――《アクア・ヴォルテックス》!」
空気中に水が生成され、生成された水は渦を巻き蜘蛛や蠍を絡め取る。
水の鎖に足を取られ、ジタバタと暴れる魔物。
アメトは涼しい顔で片手を上げ、指先で空を軽くなぞる。
すると晴天であるはずの空から、紫色の細い雷撃が奔る。
水に囚われた魔物を貫き、雷光は水を伝い、逃げ場を失った魔物たちを足止め。
たちまち動かなくなった魔物の身体から草花が芽吹き――
えげつない光景を生み出し、ルルは絶句。
短杖を握り、何を考えているか分からないアメトを見つめる。
「む、無詠唱…?嘘じゃろ…。 しっかし容赦ねぇしえっぐいなー…」
包囲されていた一同だったが、あっという間に敵を殲滅。
残った魔物は散り散りになり逃げ去った。
後に残るは、死体の山々と、その死体に芽吹く植物――
飛び散った羽毛に焦げた匂い。
聖剣を鞘に収めたノアは、視線をアメトの方へやると、疑問を彼に投げる。
「ねぇ、アメトさん…。 気になったことがあって…。
その、訊いても良いのかな?」
「魔族の方って、みんなアメトさんみたいな感じなの…?」
ノアの問いかけは、純粋な興味と好奇心。それと僅かな畏怖の念から。
問われた彼は肩を丸め、外套についたホコリを払う。
衣服を整えると、何食わぬ顔でノアの疑問に答えた。
「“ボクみたいな感じ”って質問の意味が少し分からないネ。
まぁ大体の想像はつくケド。 魔法を使うのか……っていう問いなら――
答えは“違う”だネ。」
「ちなみに魔族の中で“強い”か“弱い”かって問いなら、ボクは“弱い”」
ノアは考え込む様子を見せ、拳を顎に当て「うーん?」と唸り声をあげる。
パルテオンもまた頭に疑問符を浮かべ、大盾を背負い戦闘を終えた。
セラは分かっているような素振りを見せていたが、黙していた。
疑問符を頭に浮かべている二人に代わり、ルルがアメトに向かって言葉を投げる。
「つまりってーと、他の魔族は“魔法”を使わんけど“強い”ってことじゃろ?
それってどういう事? 皆に分かるように説明してくれんと、わからんよ?」
言葉を投げられた彼は外套の襟を直し、小人族へと視線を投げ、寸瞬思考。
「ンー…。 そうだネ。 魔族って魔力を筋力に変換するのが常なのネ。
知能が低い……と、ボクはそう感じるネ。 魔法を構築するような頭が無い。」
「本能的といったほうが良いカナ? でもボクからしたらサ。」
アメトはくるりと身を返し、意地の悪い微笑を全員に向けた。
「単純な力のみで、押される方がよっぽど厄介に感じるヨ。
あー、ちなみにボクは筋力変換は苦手だヨ。 見た目通りってコト。」
「多分そこの勇者サマと単純な筋力勝負したら――
ボクが余裕で負けちゃうネェー? ヒヒッ!」
感情の籠もってない、笑い声のような音を喉で鳴らすアメト。
先程まで雷撃で敵を打ち、炎で焼き――
魔物の身体から草花を芽吹かせた人物とは思えない軽さ。
パルテオンとセラは言葉を失い、視線を地面に向け俯いていた。
すると、そんな彼らの憂いを吹き飛ばすように、ノアが明るい声を出す。
「なるほど!じゃああなたが暴れたりしたら、僕が止めないとだねっ!」
アメトは再び「ヒヒッ…!」と嗤い、魔物の遺体に近づく。
手慣れた手つきで、討伐の証である部位を切り取り、鞄に詰め込んでいった。
皆がアメトにならい、同じように魔物の遺体を解体――
その後アメトが魔物を焼き尽くし、処理。
手慣れた彼の様子に、一同は若干だが引いていた。
その後、勇者一同と一人の半魔族は再び散策へと赴くのだった。
◇ ◇ ◇
孤島といえど、どの程度の規模か不明で、適当に散策するには少々手に余る。
木々の合間を縫うように探索していくが、偶に魔物に遭遇する程度。
特段変わった様子は見られず、一同は緊張から一転し、疑問のまま足を運ぶ。
最後尾を歩いていたアメトは、時折視線をあちこちへ移す。
地面を踏み鳴らし、皆へと付いて歩いていたが、彼はふと、口を開いた。
「さっきの魔族のお話してもいーい? 魔力の筋力変換のコト。」
唐突な話題の投下に、ノアは目をぱちくりと瞬かせ、後ろを振り返る。
全員がアメトの言葉に耳を傾け、何事か?といった様子を見せた。
「それってつまりサ。 たとえ無詠唱で魔法を使えたとしてもネ。
物理攻撃の速度に追いつけないってコトなのネ。」
片目を覗かせ赤紫の瞳を細め、楽しそうな調子で皆に語りかける。
落とされた言葉は、皆にとって驚愕に余りあるものだった。
「なんでこんなコト話すのか、疑問に思っているみたいだネ。」
「前にサ、怖い魔族の童女と対峙した時のコト、覚えてる?
聖女サマさ、短刀を投げられたデショ? 覚えてるはずだよネ。
あの時、実はボクも近くで見てたのネ。 ヒヒッ!」
半魔の青年は怪しい微笑みを浮かべ、唐突に立ち止まった。
黒紫の霧を手に纏わせ、影の様な見た目の“短刀”を形作る。
「あの時の短刀、ボクの目にも早すぎて視えなかったんだよネー。」
彼はそう言うと、黒い靄が蠢く影の短刀をすっと、振りかぶる。
まるで“その時”の再現をするように「スッ」と腕を使い、短刀を投げた。
「あの童女にとって、軽く投げたつもりでもあの速度ナノ。
因みにボクの全力はあの程度。 分かるデショ?“格が違う”ってサ。」
「ボクにはあんな、バカみたいな速度で投げられない。」
再び手に黒紫の霧を纏わせ、先程同様に短刀を生成し、投げるが――
今度は紫電が奔り、目にも視えない速度で閃光のように放たれた。
的になった大樹がなぎ倒され、一同はその威力に驚愕し、声を失う。
彼は薄ら笑いを浮かべ「ヒヒッ!」と声に出して笑うと、言葉を続けた。
「今のは、魔法で構築されたボクの“全力投球”だケド……
構築するのに、どのくらいの時間が掛かったと思う?」
「おおよそ、数十秒。 ボクは歩きながら、今の魔術を構築してたってコト。
どお? 魔術の構築をする暇があったら、筋力で投げた方が早いって――」
「だから魔族って、魔力を筋力変換する個体が多いってワケなの。」
銀白金の長髪が風に揺れ、彼はふっと、表情を消す。
まるで能面のような、波一つ立たない水面のような静けさ。
瞳は一層冷たい色を帯び、彼の言葉と態度からは、冗談めかさないそれ。
「だからサ。 無詠唱って一見強そうデショ? でも――
魔族の常識では通用しない。つまり無意味ナノ。」
「こないだ……共存したいってボクが言っていた意味と理由。
これで少しは理解してもらえたカナ?」
彼は再び胡散臭い微笑を戻し、全員の反応を待つのだが、皆は顔を伏せる。
ルルに至ってはどんよりとした空気を纏い、絞り出すように声を出した。
「あんさ。 それだとあたし、おる意味が、無いんじゃけど。」
「ンー。 魔族間の話であって、こっちだと魔法って普通に強いデショ。
だから気にする必要無い気がするケド。 それとチビっ子ちゃんはアレ?
ボクたち魔族の滅びを願ってる感じ? 違うデショ?」
「それに無詠唱なら、口の中で詠唱したり、詠唱を破棄したら良いデショ。
ボクには“詠唱”がなんで必要なのか分からないしサー? ヒヒッ!
ま、キミはコッチじゃ“強い”デショ?気にしなくてもいいんじゃなぁい?」
ぱたぱたと足音を立て、アメトの側まで駆け寄るルル。
彼女は彼の腰をタコ殴りにするが、彼女の筋力ではダメージは皆無。
なんなら、そこら辺にいる小動物よりもか弱いルルの拳。
「るせー! あたしにはルルリカって名前があんだぞ!!
なめんじゃねーー!!! 舐めんぞ!! おらーーーっ!」
頬を膨らませ、アメトの腰に必死にポコポコと打撃を与える。
ルルの必死の様子に、張り詰めていた緊張がふっと解けていった。
「舐めてないし、舐めるのは辞めようネェ…?」
アメトという男は、この道化師服の小人が理解できず、恐怖の対象だった。




