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その【聖女】転生者につき。~祝福?チート?……いいえ、呪いです。~  作者: お餅憑き
二章:誘われるままに。

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42/68

頁:42 その【半魔】確信犯につき。

※注意喚起

一部濃厚接触に見える部分がございますが、あくまで医療行為です。(※本人談)



早朝の爽やかな空気を纏い、眩しい陽光が窓から射し込む、清々しい時間帯。

屋敷内の静寂を破るように、目覚めた一同が広間へと次々に集まる。


ノア、パルテオンの二人は、椅子に腰を掛け、会話を交わすそんなすぐ側――

ルル。彼女の頭上には、彼女の帽子に住み着いた、謎毛玉生物(キュー)が鎮座。


三人は挨拶を交わし、もう一人の仲間【聖女(セラ)】の起床を待っていた。


「今日もよく寝られたねぇー! ここのお屋敷のお布団さん……

 とっても柔らかいよね! 最初は怪しい人だなって思ったけどっ!

 アメトさんって良い筋肉だし、優しいよねぇー!」


「ノア、違うぞ。 ありゃ俺たちを利用しようとしてる感じだ。

 流されるな。 というか良い筋肉ってなんだぁ…?」


パルテオンとノアがそんな会話をし、ゆるりと時間が過ぎるが……。

一向に姿を表さない聖女に、何かが怪しいぞ?と三人が顔を見合わせる。


「セラ、起きてこないね…? おかしいね。

 いつもならもう、とっくに起きてきてる…よね…?」


生真面目な彼女の事だ、普段であれば、確実に起きてきている時間。

いよいよ怪しく思い、ノアが椅子から立ち上がる。


「ちょっと見てくる!」と言い、扉まで歩んでいた、そんな時だった。


唐突に扉が開かれ、屋敷の主(アメトリクス)が姿を現すが――

その腕に抱かれているのは、まさしく今話題に上がっていた、聖女の姿。


「ヤッホー。 急にゴメンネー? オハヨ、勇者サマ方ー」


軽快な声色とともに、扉が開かれ、颯爽と広間に入ってきたアメト。

何事かと、皆一同が目を見開き、彼の腕に抱かれている聖女へ視線が釘付け。


「えっ…なっ…。 ど、どゆこと?」


ルルの声色は、何故だか若干楽しそうに弾み、輝く瞳は興味津々の様子。

一方でノア、パルテオンはというと、怪訝な目を、屋敷の主へと向けていた。


自然に視線はアメトと、彼の腕に抱かれているセラへと注がれていた。

彼の腕にすっぽりと収まっているセラの顔は、妙に赤い。


そして呼吸も荒く、どうにも体調が悪い――否、体温が高そうな様子。


「アメトさん、とりあえずは、説明してもらっても…?

 一体何が…? まさかとは思いますが――」


ノアの声には、心配と不安、若干の怒りにも似た感情を滲ませていた。

アメトはセラを抱えたまま、僅かに肩を動かし、怪しげな微笑を浮かべる。


「そのまさかが、ボクには“ナニ”か分からないネ。

 ボクが彼女に、害をなしたとかじゃない。」


「今日の日も上がってない深夜に、ボクの書斎にうっかり来てネ。

 しばらくボクの仕事してる姿見てたケド――そのまま寝ちゃったみたいでサ。」


「ボクが気が付いた時には、このザマで、正直ボクも少し驚いてるヨ。」


腕の中で、荒い呼吸で眠るセラに、これでもかと顔を近づけるアメト。

思わず赤面するノア。なにか言いたげなパルテオン――興味の色を隠せないルル。


三者三様のリアクションを見せ、そんな一同の様子をアメトはちらりと確認。


彼は腕に抱かれた聖女へ視線を落とし、溜息を吐き出す。

睨むように見つめる一同に対し、瞳を細めながらも淡々と告げた。


「ウン。体温が高いから、多分軽い風邪。 もしくは――

 慣れない環境からの気疲れとかだろうネ。」


「ボクという存在が居るから、それが負担になったのかもしれないし。

 それじゃ、ボクは調剤をしてくるからサ。 後は勇者サマたち、お願いネ?」


聖女を腕に抱えたまま、アメトは広間の外へと歩み、ふと、立ち止まる。


「あ、そうだ。 彼女は寝室に運ぶから、しっかり付いてきてネー。」


言い終わるや否や、彼はセラを抱きかかえたまま、広間を出ていく。

つかつかと歩き、セラの間借りしている部屋へと歩くアメト。


彼の後ろにはノア、パルテオン、ルルの三人が、鴨の親子の様に列をなす。

アメトがセラを寝室に運び終えると、意外にも丁重にセラを扱っていた。


彼女の薄い身体を寝台にそっと横たえ、布団を掛け、額に手を置く。

体温を確認した後「ウン。」と頷き、振り返ると胡散臭い笑顔を浮かべた。


三人に「任せたヨ。」と伝え、彼の姿は黒紫の霧を残し、一瞬で消え去った。


ぎょっとする三人だったが、ルルがそれどころではないと、セラに駆け寄る。

心配そうに顔を寄せ「ホンマに風邪か?」と聖女の顔を覗き込んだ。


しかしそんなルルをよそに、どこかよそよそしい男性陣二人。


「お、俺はちょいッ!! セラに触れるのは気が引けるッ!! 

 代わりにルルが体温を確認してやってくれ…ッ!!」


「僕もセラに触れるのは……ちょっと、ね?

 決して風邪が怖いとかじゃ、ないんだよ! その…ね…?」


頼りがなさすぎる男性陣二人に、ジト目を向けたルル。

彼女は額に手を当て、体温を確かめ、首筋に指を当て、鼓動を確認。


しっかりと病状を診た後、後ろに控える男二人に話しかけた。


「鼓動がはえーな。 …んで、体温も高い。

 疲れ熱か…風邪ってのは間違いじゃないとおもう。」

 

「熱がでるときってよー、他にも、魔力に当てられた時とか――

 たまーに体温が上がるんじゃけど、そんときとは症状が違うけぇ…」


「……ん。 子爵ちゃんの読み通りじゃと思う。」


ルルの言葉を受け、男二人が「ふんす!」と鼻を鳴らし、視線を交わす。


「なら僕たちにできることをしようっ! 看病するしかないね!」


ノアの言葉に、ルルとパルテオンが無言で頷き、聖女の看病の為、行動を開始。

パルテオンが使用人から水盆とタオルをもらい、ノアはただの応援係。


パルテオンの用意した水盆に、魔法で作り上げた水を溜め込むルル。

人差し指を入れ、水の温度を調節すると、ノアがタオルを濡らし、絞る。


セラの体温を冷ますべく、冷えたタオルを彼女の額の上へと乗せる。


心配だが、彼らにそれ以上出来ることはなく、ルルが溜息と共に項垂れた。


「こゆときってさ、首とか脇とか、冷ましたげたらええんやで。

 でもなー……ノアちゃんとパルちゃんがおる手前なーー……」


「セラちゃんを男二人の前で脱がすわけにもいかんしねー……でもなーー?

 あたしひとりじゃ、セラちゃんを脱がせんし……どうしたもんかねぇ?

 うへっへ…しゃーねぇーよなぁー? うひひ……」


「おいルル…なんでお前、なんか妙に嬉しそうなんだ…?怖えぞ…?」


ルルの言葉にノアは何の想像をしたのだろうか、彼は赤面し、そっぽを向く。

寝台に苦しそうに横たわる聖女から目をそらし、何故か顔を隠し肩を丸めていた。


結局のところ、三人に出来ることといえば、聖女の看病くらいのもの。

寝台に椅子を寄せ、三人が並び、ぱっと見、怪しい儀式的な様子でセラを見守る。


そうして、儀式的な様子で看病をしていると、不意に扉からノックの音。

続けて「入るヨー」と軽薄な声が届けられ、軽い様子で部屋へと入室。


薬の調合を終えたのであろう、屋敷の主が、小瓶を片手に歩みを寄せる。


「はーい、ドーモ。 ニヴェイシア印の特性おくすり。

 ボクが直々に作って持ってきてあげたヨー。 ボクってば優しいネー」


軽い足取り。軽薄な声音――

彼の片手には、小瓶が数本握られており、中には淡く濁った白色の液体。


ノアが訝しむ様子で「それは…?」と手に握られている小瓶へ視線を落とす。


「――ハァ。 見て分かんなぁい? 普通に薬。 ()()()()

 効果は解熱と鎮痛。 後はコレを聖女サマに飲ませたら大丈夫ー。

 身体の熱を外に逃がして、苦しさも紛れるヨー? 多少はネ。」


それだけ伝え、アメトは面倒そうに、勇者ノアへと薬瓶を投げ渡す。

ノアは薬瓶を受け取るが、なんとも言えない薬液の色に、怪訝な目を向けていた。


彼の表情を読み取ったルルが、すかさずアメトに対し、物申す。


「ほんまにおくすりか? なーんか怪しい毒とかなんじゃねーのー?

 色もほら、なんか……うん。 ちょいやばい色しとるしー。」


アメトは「ハァ…。」と、大きめのため息を吐き出した。

大股で部屋の扉付近まで歩き、壁に掛けられてあったベルを鳴らす。


ほどなくして無表情のメイドが入室し、全員に軽く会釈。


「――ってワケだから、試飲お願いネ、アイリス。」


主人に促された無表情のメイドは、その表層を変えることはない。

淡々と、薬瓶の一つを受け取ると、躊躇うこと無く一気に飲み干した。


メイドは「ハァ。」と溜息を零すと、空の瓶をアメトへと渡す。


「偶に、口にさせて頂くお薬です。 いつもと同じ味ですね。

 とてつもなく、とんでもなく苦いだけの、それだけのお薬にございます。

 毒ではありません。 毒でしたら私は今頃此処にいません。 では、失礼。」


メイドはそれだけ伝えると、軽く一礼した後、颯爽と部屋から立ち去った。


「わざわざ有難うございます、アメトさん。 ルルもごめんね?

 僕がいいにくそうにしてたから、代わりに言ってくれたんだよね。」


「ほら、セラ! アメトさんが薬を調合して持ってきてくれたよ!」


ノアがセラの肩を抱き起こし、彼女の唇に、瓶の飲み口を押し当てた。

しかしセラは飲み込む気配はまるで無く、彼女はノアの腕の中で、小さく唸る。


代わりに拒絶の意を示し、手で瓶を払い除け「うぅー…」と苦しそうな声。

瞳と唇を固く閉ざし、嫌そうに身を捩り、あまりにも嫌悪を顕にしていた。


「ええ……ちょ…これどうしたらいいのぉ……?」


片腕にはセラ、片手には薬の小瓶を持ち、狼狽えるノアの瞳には焦燥が滲む。

黙って見ていたパルテオンも唸り、ルルも考え込む様子で静かに唸る。


「んなのサァ~~…普通に口移しであげたら、良くなぁい?

 一番手っ取り早いし、一番効率的デショー。」


屋敷の主たる、アメトリクスから放たれた言葉。

その言葉が爆弾のように落とされると、場の空気が一瞬で、氷点下まで低下。


「だ、誰がすんのそれ!?」とルルが目を剥き、辺りをキョロキョロ。


「にげーんだよな! あたしは一抜け!!」


彼女は、あまりにもあっさりと拒絶。

セラから視線を逸らすと、ぎろりとノアへ、視線を注ぐ。


ルルに睨まれたノアは「え、僕?む、無理だよ!」と顔を真っ赤にさせ拒否。


パルテオンは、無言で腕を必死に組み、バツ印を作っていた。

首を横に振り上げ、無理をこれでもかとアピールし、拒絶を見せつける。


全員に拒まれてしまった、悲しき聖女のセラフィーナ。


彼女はノアの腕から離され、寝台の上で苦しそうに呼吸を繰り返す。


そんな一同の様子を眺め、アメトは幾度目かの溜息を吐き出した。


彼は瓶の一つを手に取ると、そのまま、とろりと揺れる液体を揺らす。

自身の口へと含ませ――セラが寝ている寝台へ歩みを寄せた。


銀白金(アルゲント・アルビナ)の髪が、さらりと流れ……セラの吐息が掛かるほどの距離へ。

顔を寄せ、なんの迷いもなく、まっすぐに彼女へと唇を重ねた。


うっすらと瞳を閉じ、彼女の様子を確認し、薬液を注ぐアメト。


唐突の事態に固まる一同は、やがて事の重大さに、顔色が徐々に変化。


渦中のセラはと言うと、彼女は熱に浮かされ、抵抗する素振りも無い。

こくりこくりと、薬液がゆるりと喉を通り、かすかに喉を鳴らすだけ。


アメトといえば、この男はわざとらしく時間を掛け、ねっとりと……。

口に含んだ薬液を作為的な程に、じわじわと流し込んでいた。確信犯である。


冷たい薬液と、体温を僅かに帯びた唾液が溶け合うソレを――

セラの細い首を、ゆるやかに伝っていく様が、皆にもはっきりと見えていた。


「ちょ、ちょちょ!! 嘘でしょ……!

 なっ……!! ええっ……!! そんなぁ…! 眼の前で……!」


ノアは顔を手で覆い、指の隙間からその光景をマジマジと見つめる。

パルテオンは俯き、バツの悪そうな顔で、視線を二人から逸らした。


「まじかよ……超にげー薬なんに……! 全然躊躇がねえ……!

 すげえ……! 流石……! あたし、感動してしもうた……!」


ルルは別方向で心が動かされたのか、それでも目を背けず、見届ける。


そんな全員の視線を、知ってか知らずか――否……完全に認知していたアメト。


彼は唇を離す直前、あまりに白々しく、名残惜しげに――

舌先を彼女の唇へ這わせると、瞳を細め胡散臭い微笑を彼女に向ける。


薬液を一滴残らず、逃さぬように送り込むが、セラは身動ぎ一つ。


「んぅっ…ん――」


彼女は顔を紅潮させ、小さく喘ぐように喉を震わせ、嫌がるように手を動かす。

アメトは平然と彼女から顔を離し、何事もなかったように口を拭った。


「ッハァ。 ったくもー……。

 代わりにボクがヤっといたヨ、ハイ。 コレで良いデショ?」


ノアは両手で顔を覆い、耳まで赤く染め上げ、謝罪の言葉を繰り返した。

パルテオンは申し訳なさそうに、俯き項垂れ、無言を貫く。


だがルルは相変わらずで「いや、あたし、苦みはちょい」とあっけらかん。

そんな三人を尻目に、アメトは踵を返し、部屋の出口へと向かい、軽口を叩く。


「全くもー、世話が焼ける勇者一行だコトー……。 大切なお仲間デショー?

 次からはちゃぁんと、キミたちが“口移し”ヤってあげるんだヨー?」


それだけ伝え、彼はあまりに涼しい顔で、その場から居なくなった。


後に残された面々は、先程の濃厚すぎる“口移し”の光景が――

目に焼き付いて離れず、しばらく脳裏に留まり、悶々と堂々巡り。


未だに熱に浮かれ目を覚さないセラ。彼女に先ほどの出来事を伝えるべきか――

一同は頭抱え、静かに……だが確かに、悩みの種となったのだった。





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