頁:28 その【書置】不信感満載につき。
その後の二人は、酒場の前まで急ぎ足で戻った。
勇者たちが出てくるまでの間、腕に抱えられた紙袋を抱きしめるセラ。
セラとルルの間に会話はなく、先ほど暴漢に囲まれたこと。
それに、タイミングよくあの貴族が助けてくれたことが妙に胸に突っかかる。
(なぜ、あの方はあんな絶妙なタイミングで助けてくださったのでしょうか。)
(偶然にしては、出来過ぎではなくって……?見張られている――とか……。)
しばらく待機していた二人だったが、酒場の扉が開かれ――
やがて勇者たちが姿を現した。
セラとルルは安堵からか、急ぎ足で彼らのもとへ駆け寄る。
「遅くなってごめんねぇ……!色々と情報を――って、どうしたの……?」
様子がおかしい彼女たちに対し、心配そうに声をかけたノア。
そんな彼にルルがガサゴソと懐を弄り――先ほどの地図を勇者へと渡した。
「ええっと……これは地図?買ったものにしては色々と書き込まれてるけど……。
ごめんね、これだけじゃ僕はなんのことだか分からなくって……。」
「んと――これね……――って理由があって。ほら、あの胡散臭いヤツ。
ヒョロ長くて、貴族っぽい……たしかセラちゃんは『ニヴェイシア』って」
「はい……夜会でお会いしたあの貴族の方が落とされていって……。」
改めてまじまじとその地図に目を通す勇者一行。一見すれば怪しい箇所はない。
詳細な書き込み……地図の空白にはいくつもの丸が書き込まれ――
メモ書きのような言葉すら添えられ、余計に理解が出来ないでいた。
そして地図に記載されている街の中心を示す場所には『大図書館』との記載。
「ふむふむ……なるほど。怪しい貴族さんって僕たちも一度あった人……。
セラは気を失っちゃってたから、知らないだろうけど――」
「たしか『アメトリクス』さんっていうとっても真っ白の人だよね?」
「あたしはセラちゃんの言ってた『ニヴェイシア』って情報しかしらん。
んであの草原で出会った気色悪い笑顔の“人”であっとる。」
青年の真意は誰にも理解することはできない。
騎士も不審そうに地図を凝視するが、やはり特段変な箇所は見当たらない。
「酒の席で聞いた情報と一致してやがんのがかえって気味悪ィなァ……。」
全員で地図に目を向けて気が付いたこと、ひときわ目立つ色に矢印。
矢印と丸印には言葉が添えられており、勇者が『これは?』と聖女に尋ねた。
「ええっと――『ここの宿、僕のおすすめだよ』と、書かれております。」
凍りつく空気――
全員が顔を見合わせて満場一致で即決した解。
「ここは……避けようね……!」
「あの胡散臭い貴族野郎のオススメってこったろ……?
ぜってーなんかありやがるッ……!騎士の勘がぷんぷんしやがるッ!」
噂の渦中にある彼は、密かにくしゃみをひとつするが、それはまた別のお話。
結局――酒場で聞いた“普通に評判の良い宿”に宿泊することが決定。
宿は堅実な旅人御用達といったごく一般的な宿、空き部屋も十分。
二人部屋を二部屋ほど借り、時間はまだ寝るには早かったのだが――
馬車疲れや先の件もあり、疲労困憊の聖女。
女性陣の二人は動く気になれず、すぐに眠りへと落ちていったのだった。




