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その【聖女】転生者につき。  作者: お餅憑き
二章:学術都市と賢者。

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28/127

頁:26 その【令嬢】意味深につき。



 荷馬車での旅路の道中――


 ゴブリンに襲われたりなどもしたが、定刻通り進んでいった。

 ノア以外の全員の腰が限界を迎える頃、ようやく見えてきた高い城壁。


 目的地である学術都市。遠方からでも伝わる賑わいを感じられる街並み。

 中央には目立つ巨大な建物が確認でき、期待に胸を膨らませる一同。


 都市へと到着する頃には、すっかり日は落ちかけで夕焼け色。


 御者が手続きを済ませ、続いて勇者たちの手続きを終え――門内へ。

 これまで旅路を共にした御者に別れを告げ、一同は街の中へ。



 茜色の陽光に照らされた街並み。


 勇者たちの目の前に広がるのは黄金色に輝く石畳。

 門を抜けたすぐ先には市場が広がっており、さすがは都市。


 道行く人々は行商人や旅人の他に、黒いローブ姿もちらほら。


 遠方に確認できるのは、高くそびえる立派な建造物。

 活気づく町並みに一同は顔を見合わせて安堵の吐息を洩らしていた。


「つ、疲れたねぇ……僕はちょっと腰が痛いかも……。」


 夕刻に差し掛かる頃合いということもあり、門を抜けてすぐではあったが――

 市場では人々のざわめき。目を向けてみればいくつもの露店や屋台。


「とりあえずよ、まずは飯だろ。んで、飯のついでに情報収集ッ!

 ほれ……そこに丁度いい場所があんだろッ?」


「情報収集に最適な場所が――よッ!」


 彼はそう言って顎をしゃくりあげ、堂々と発言した先の店は――酒場。


 が、店先の看板には悠然と――デカデカとこう注意書き。


 ――『十六歳未満(みせいねん)入店禁止』――


 どう考えても子どもにしか見えない小人族に視線を移す聖女。

 小人族もまた、聖女に視線を投げ、互いに目線を交わし――困惑。


 店の前には屈強そうな用心棒の男まで突っ立っているではないか。


 用心棒の男は、怪訝な眼差しを女性陣へと向け『ふんッ』と鼻で笑った。


「おいおい……冗談はその胸だけにしとけ?」


「どう見たって嬢ちゃんら……未成年だろ?ガッハハハ!

 あと五年もしたら案内してやってもいいぜー?」


 用心棒の言葉に、聖女は怒気を孕んだ瞳で視線を騎士へと投げた。

 入店を断られたことは辛うじて受け入れられるのだが――


(人が気にしていることを……堂々とッ……!許せないッ……!)


 キューを抱え、諦めたようにため息を吐き出し視線をセラへと向けるルル。


「――はぁ…………。」


「でしたら……ノアとパルテオンさんには酒場で情報収集をお願いします。

 私たちは食料とか……必要そうな物資の調達をするため市場に行きますね。」


「そうだね……ごめんねぇ……それじゃ、お願いっ!」


 困ったような微笑を浮かべ、そう言い残した勇者と騎士の二人。

 彼らは用心棒の男に促されるまま、酒場へと吸い込まれていったのだった。



 かくして――自然な流れで二手に分かれることとなった勇者たち。

 扉の向こう側へと消えていく彼らを見送り――二人で頷き合う女性陣。


「さて……それでは私たちは私たちの使命を果たしましょう……!

 ルルさん……ルルちゃん……よろしくお願いしますっ!」


「おっすおなしゃーす!まかせろーい!……てかさ。」


「キューちゃんって……なに食って生きとるん?」


 ◇ ◇ ◇


 場面は酒場へと潜り込んでいった男性陣の様子になる。


 都市という場所自体初めての経験だったはずなのに、どうして――

 お店の番人みたいな男の人に案内されて入ってみたけれども。


 酒場ってなんだか……僕って場違いじゃないかな?と。


 橙色のランプが灯されてるけど、どこかお店の中は薄暗くって。


 周囲の雰囲気はとっても――怪しい!


 鼻を突くみたいな、濃いお酒の香りがするけど、不思議な感覚だなぁ。

 僕は確かにお酒には弱かったはずなのに、聖剣さんの力かな?


 見渡してみれば机には色んな人がついてて。


(あれれ?女の人もいるみたいだけど……不思議な人もいるなぁ……。)


 至るところで樽みたいなジョッキを打ち鳴らす音が響き渡ってて。

 案内してくれた筋肉の人は『好きに座れ』と言い残していったけど……。


 困ったことに空いている席はなくって、ほぼ満席。


 そうして店員さんに促されるまま相席になった相手は――


(あれれ……??セラよりもっと……年下の女の子……?)


 金色の毛髪。毛先は紅色が差し、高い位置で二つ結びにした髪型。

 とても幼い印象を与える風貌で、瞳の色が――左右で違う。


 赤色と金色の左右非対称の瞳。黒のドレスを身にまとった貴族の令嬢。


「相席……よろしくねぇ……?あの、未成年は立ち入り禁止って――」


「……ぬ? 我を未成年と云うのか貴様――ッ!」


「なんと無礼な……我を誰だと心得るッ!……いやまて。

 知らぬほうが当然であろうなぁウム。 して残念ではあるが――」


「我はこうみえて三十を優に超えているのだッ!クククッ!

 故に飲酒は許されておるでな! カーッカッカ!」


 なんだか変わった人だなって思ったけれど――きっと口に出しちゃ駄目。

 パルに視線を投げるけど、パルも一緒に驚いてるみたい……。


 僕たちはどちらからともなく『そっか……。』と声に出てた。


 その後注文したお酒が席へと届けられたけど……なぜだか三人分。


「折角なのだッ!よい機会ではないか!杯を交わそうではないかッ!」


 なんだか断れる雰囲気でもないし、杯を打ち鳴らして乾杯!

 喉が乾いてたってのもあるけど……お酒っていいね!


「さて!それでパル――僕たちは情報収集っていうけど、どうすればいいの?」


「おうッ!まずは賢者がどこにいるのかを聞く感じだなッ!

 あとは安価でいい感じの宿の場所も聞けたら吉……だなぁ。」


「ふむ、貴様ら賢者目当てか?然らば中央の大図書館を目指すとよいのだ。

 かの知識の化身は大図書館にて身を置くと伝え聞いておるでな?」


「それと……宿だが。我の勧めでよければ聞かせるのだが。

 聞きたくなければそれでもよいぞ?さぁ……どうする?」


 僕たちの答えは当然『はい』一択で、その後――彼女から聞いたお話。

 宿の場所だったり、この辺のことだったり……沢山語ってくれたよ。


 パルが他の人にも念のため同じ質問をしてみたけど、似たようなもので。


 さらにお話を聞いて分かったのは『賢者』っていうお名前の人――

 その人は大図書館の禁書庫の中にいるってお話らしい……?


 本を管理するのを任されているみたいだけど――

 令嬢さん本人も詳しい事情は知らないってことだった。


 しかも――賢者さんって人はすごく気難しいとかって……。

 会いに行くのも一苦労かも知れないから、覚悟しておけと言われる始末。


「ガッハッハ!気難しい相手ほど得られるもんもデケェってこったな!」


「えーと、情報ありがとうねっ!それで、今更なんだけどさ……そのぉ……。」


「けんじゃって……なあに?」


 僕の一言の何が悪かったのかな?一緒にいた令嬢さん――

 盛大に口からお酒を吹き出しちゃって、ドレスを汚しちゃった……。


(ああ……僕またなにかやっちゃったかな……。)





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