表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その【聖女】転生者につき。~祝福?チート?……いいえ、呪いです。~  作者: お餅憑き
二章:誘われるままに。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/66

頁:26 その【騎士】泥酔中につき。◆挿絵有り



そうして迎えた夜会――


きらびやかな仮面舞踏会の会場は、様々な紳士淑女で溢れかえっていた。

幾重にも吊り下げられたシャンデリアからは、七色の光が落とされる。


人々のひしめき合う中、主催を務める【聖女(セラ)】は緊張の面持ちだった。

勇者(ノア)がついているとはいえ、社交界に出なかった自身が主催など――


考えることや不安が纏わりつくが『なるようになる』と活を入れ、壇上へ。

やや緊張もあったが壇上へ着くと、人々の視線が一斉に注がれる。


(こういう時は、人間を野菜に見立てるのです。 ……ふう。)


「本日はこのような夜会にお集まりいただきまして、感謝申し上げます。

 私……【聖女】セラフィーナ・ヴァイオレットの名のもとに――

 日々を与えてくださる神々の恩恵と、その御慈愛に感謝を捧げ……。」


「この国に生きる、全ての民の平穏と、今宵訪れる奇跡を祈念し――

 今ここに……祝福の夜会の幕開けを、宣言いたします。」


言葉と共に両手を胸の前に組み《祈り》を捧げる体勢を整える聖女(セラ)


目を瞑り、静かに《祈り》の言葉を紡ぐ。


『天にあらす我らが主よ、(くら)きを灯す明星の燦然たる輝き……

 星霜を超え、我らに福音を与え(たも)う――《ベネディクティア》』


言葉が落ちると同時、聖女(セラ)の身体は淡い金色の光に包まれ――

爆ぜるような虹色の粒子が周囲に漂い、人々を煌々と照らす。


【聖女】の《祝福の祈り(ベネディクティア)》が会場を包みこみ――

こうして、鮮やかな聖光と共に、聖女主催の夜会が無事開催したのだった。


開会の宣言をした後、セラはすぐに下り控えていたノアと合流。


「セラっ!お疲れ様! とっても素敵だったよ!思わず見惚れちゃった!」


「あはは……どうにも、人が集まる場所は落ち着きません……。

 ですが、ありがとうございます……!」


現在の勇者(ノア)の姿は普段の服装と違い、夜会用に急遽用立てされた衣装。

夜会用の深紅の正装に身を包んだ彼の姿は、より『王子様』感が増していた。


淡くも柔らかい金色の毛髪に、青空のような、美しい碧灰(シエルグレイ)色の瞳――

まさに、おとぎの国から飛び出したような――王子様そのものの様相。


仮面で半分は顔が隠れてはいたのだが、その仮面のせいで妙な色気を放つ。


(これは、仮面は逆にまずかったのでは……? この勇者様恐ろしいですね。)


が――セラはというとノアとは対照的にシンプルな装いだ。

綺麗な衣装ではあったが、生成り色で簡素な作りの為、一見すると地味。


しかしさすがは【聖女】主催かつ、勇者の姿もあるというだけあり――

会場全体からは不可思議な熱気を帯びており、二人は当然、注目の的。


そういった、注目を浴びるような場所に慣れていないセラ。

彼女は緊張感で喉が乾いてしまい、身体が水分を欲していた。


ノアに断りを入れた後に、水分補給のため彼から一度離れることに。


(ダメです……緊張で舌まで乾いてる気がします。 カラッカラです。)

(飲み物は……あちらですね? ノアは……ああ……ごめんなさい、ノア。)


セラという防波堤を失ったノアの周辺には人集りが出来ていた。

主に貴族子女が押し寄せており、彼の姿は――頭しか確認できないほどに。


勇者(ノア)はたじたじになっているが、それでも微笑は絶やしていない。


「まぁ、勇者様……!お若いのになんて凛々しさなのでしょう……!」

「剣の鍛錬の秘訣をぜひわたくしに、お教えくださいましっ!」

「お好きなお花はありますのかしら……? 贈り物の参考にぜひに……!」


勇者に向けられるのは、黄色い視線と声――令嬢たちから押し寄せる質問の嵐。


挿絵(By みてみん)


一歩も引かず、怯むこともなく、朗らかな微笑と共に言葉を落とす彼。


「こんなにも――多くのお嬢様方にお声がけいただけるだなんて……。

 勇者冥利に尽きるというもの……僕はなんて幸福なのでしょう……!」


勇者(ノア)の声はとても澄み切った声色――それでいて、花の蜜のように甘ったるい。


(なんて素晴らしい声音なのでしょう……! たまりませんわ……!)

(勇者様と目があってしまいました! わたくし、今日が命日ですのね……。)


一斉に息を詰まらせる令嬢たち……ふらつくものまで現れる始末。

困ったような微笑で令嬢たちを見回した後、言葉を続ける勇者(ノア)


「それゆえに……あなた方にひとつだけ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?

 ――『ニヴェイシア』という家名の貴族について、ご存知の方は?」


場の空気が一瞬固まるが、返ってきた言葉は口々の否定。

「しらない」や「聞いたこともない」といった言葉ばかり聞こえてくる。


令嬢たちは互いに目を合わせ、口元を扇で隠し各々で『ヒソヒソ』と語る。

が、やがて一人の令嬢が控えめの挙手の後に、ノアを見つめながらも声を届けた。


「『ニヴェイシア』――ですのよね? でしたら確か……薬学に長けた家系と。

 そう聞いた覚えがございますわ。 研究家のお家柄でしたはず……ですわ。

 滅多に社交界へはお出ましにならない家系でして――」


「わたくしも詳細を知るところではございませんの。 ただ……。

 とても、見目麗しい家系――と、お耳にしておりますわ。」


『はっ』とした表情を浮かべた、別の令嬢が口元を隠し言葉を重ねる。


「――確か、交易都市のヴァルメリアにて、お屋敷を構えてらっしゃるとか。

 いつだったか、お父様からそうお聞きしましたの。」


小さく頷いた後、令嬢たちに優雅に一礼をするノア――

勇者(ノア)のその仕草は、洗練された美しい所作――令嬢たちから湧き上がる声。


勇者(ノア)が少しでも何か行動をすると、周囲からは抑えきれない吐息が漏れていた。


「ご教示いただき、心よりの感謝を……お嬢様方。

 僕がこれ以上ここに居ては、この場を乱してしまいますね?それでは――

 綺麗な妖精の皆さま……どうか、心ゆくまで楽しんでいって下さいねっ」


ノアは無意識にとんでもない色気を振りまき、令嬢たちはふらり――

一斉にため息をつき、頬や胸を抑えるもので場は混沌を極めていた。


そんな令嬢たちを一歩引いた目で見つめ、そそくさとその場から立ち去る勇者(ノア)


(びっくりしたぁ……まさか聖剣さんが僕の口を借りるだなんて――)

(でもお陰様で助かったから……何も言わないでおこう……っ!)


◇ ◇ ◇


ノアと別行動となってしまったセラはというと――

彼女は喉の乾きを潤すため、グラスを片手にため息を漏らしているところ。


空になったグラスを給仕へと渡し、ノアのもとへ戻らなければ……と。

そう思考しながら戻る道中、目の端に映るのは白金色(プラチナブロンド)の影。


心臓が跳ね、胸が締め付けられるような不快感に思わず息を呑んだ。


(今の髪色っ……! もしかしてアメトリクス・ニヴェイシア……!?)


しかし今現在のセラはドレス姿――ゆえに大層動きづらい。

パニエに足を取られ、大衆の中、肩をぶつけながらも縫うように進む。


人々に謝罪を投げ、なんとか影に追いつこうと藻掻くのだが――


仮面を外したその人物は、まるで全くの別人だった。


(そりゃ……そうですよね。 そう簡単に見つかるわけがありません……。)


安堵に息を洩らすが、同時に冷たい何かが背すじを撫でる。

見間違いで済んでよかったが、追いかけてどうするつもりだったのだろう?


短く息を付いた後、恐怖を無理やりにでも抑え込み、笑顔を作る。

ドレスを翻し勇者が待っているであろう場所へと戻る。


彼の元へとたどり着く頃には舞曲が流れ、会場は別の意味で賑わっていた。


いたるところで着飾った男女がステップを刻み、ダンスに没頭している様子。


(今は舞踏の時間でしたか……さて、私たちは……。)


セラは大人しくするつもりでいたのだが――いつの間やら目の前にいるノア。

何事かと小首を傾げていると、彼は微笑を湛えたまま軽く一礼し――


「――ぜひ……僕と一緒に一曲踊っていただけませんか? 聖女さまっ!」


目を見開き、目の前の勇者を凝視する聖女――たしか彼は農夫の出だったはず。

そんな彼がダンスを?前日も『踊れない』と言っていたはずでは?と――

思案するのだが……彼は期待の眼差しを向けるばかりで、断りづらい。


勇者から浴びせられる眼差しもそうだが、周囲の空気と圧力が有無を言わさない。


恐る恐るではあったが、ノアの手にふわりと手を乗せ、ぎこちなく微笑むセラ。


(わ、私と踊るんですか……? だ、大丈夫かしら……? ええい、ままよっ!)


「私でよければ、よろしくお願いいたします……! 勇者さまっ!」


優雅な三拍子……ゆるやかな舞曲が流れる会場――

周りにいた貴族たちは、主役である二人に遠慮するかのように空間が開ける。


勇者(ノア)の心配をした聖女(セラ)だったが、杞憂だった。

彼はあまりにも淀みなくステップを刻み、感服するほど。


ノアの足取りは優雅であり大胆で、軽やかなのに気品を感じられるもの。


(おかしいですっ……! 私の歩幅に合わせてくださってる……っ?)


安定した彼の足取りに、思わず小声で語りかけるセラ。


『ノアって踊れたのですか? 踊れないと仰ってましたのに……!』


『凄いんだよ……今日ね……たしかに、置いてきたはずの聖剣さんに――

 ほぼずっと、身体を操られてるんだぁ……ふふっ!』


とんでもないことを、割と平然な顔で言ってのける彼に思わず笑みが溢れる。

『なんでもありですね。』と、小声で応酬を交わす二人。


朗らかに笑うノア――そんな彼に対し、柔らかな微笑を向けるセラ。

大衆の目から映る二人の姿は、それはそれは絵画のように美しく映っていた。


『そんなことが出来るだなんて、知りませんでした……!』


『あははっ……僕も今日……今初めて知ったんだよ?

 でも……不思議な感覚で、今後はあんまり味わいたくないかもっ!』


周囲には他にも舞曲に励んでいる人はいるが――


舞曲すら遠慮するような、彼らの甘くもどこか和やかな空気。

そんな二人が大勢の注目を浴びることとなったのは……言うまでもない。


◇ ◇ ◇


そんなこんなで夜会を終え――

二人は夜会の衣装からいつもの服へと着替え、宿へと戻る。


道中でセラはコルセット疲れからか、ノアにエスコートをしてもらっていた。


「く、くるしい……。 苦しすぎます。 どうして他の令嬢方は平気なの……。

 私、もうだめやもしれません。 身体の内側が、悲鳴を上げてます……。」


泣き言を零す彼女に対し、ノアは心配そうに彼女の手を握る。


「そ、そんなに大変だったの……? というかセラってたしか――

 本家が伯爵家ってお話だったよね……? 社交界には出なかったの?

 もっと……ドレス慣れ? してるのかなって思ってたんだけど――」


「わ、私! 聖女の修行期間中どころか!物心付いた時から社交界なんて――」


他愛のない会話を重ね、仲間が待つであろう宿へと歩みを寄せていく二人。

ふらつく聖女(セラ)の身体を支え、なんとか宿へと到着した二人。


借りている部屋へと向かい、のそのそと大部屋の扉を開けるノア。


足を踏み入れるとすでにルルの姿があり、彼女はくつろいでいる様子だ。

いつ禁書庫から戻ってきたのか分からないが、ソファに横になるルル。


彼女の手には、書物と赤い果実が握られ、頭上にはあの謎毛玉生物(キュー)が鎮座。


「おっかー。 どーじゃったー? きらびやーかな夜会さんはよー。

 ちな、パルちゃんじゃけど、まだ帰ってきとらんよ。」


『しゃくり』と果実を食み、無表情で語りかけるルル。

書物の頁をめくる音と、果実をかじる音が響くだけの静かな空間。


「私……人が大勢いらっしゃると、どうしても緊張しちゃいまして……。

 思ったより、多くの人々が夜会へと参加してくださったのですが……。

 圧倒されちゃいまして、情けないです……。」


未だに苦しいのか、セラは腹部を抑え、苦笑しながらも答えた。

セラの隣にいるノアは視線を動かし、肩を竦めて笑う。


「あはは……。 でも、会場ではセラ……とっても堂々としてたよ?

 僕は少しだけ疲れちゃったかも! 身体はどうともないんだけどねぇー。

 気持ちが筋肉痛! 僕の相棒さんに、身体も操られちゃってたし……。」


「ともかくさっ!」と声をかけ、ノアは椅子に腰を掛けた。

耳飾りを懐から取り出すと、全員の姿を確認し、言葉を続ける。


「僕たちが集めた情報を、一旦整理してみよっか!」


果物を食べ終えたルルは本を畳み、しゃっきりとソファに腰掛――

何を思ったのか、彼女はぽつりと「剣だけに相棒。」と囁きを落とした。


彼女の周りだけ空気が凍るが、幸いにも誰の耳にも届いていないらしい。


「賢者ちゃんおるー? こっちじゃけど、とりま――

 ノアちゃんたちから、情報の報告してもらう感じじゃけどー」


『ではッ! 情報のまとめ役は不肖ワタクシめが――ッ』


禁書庫内の賢者(バルタザール)が何かを言いかけると同時――『ドカッ』と扉が開かれた。

開かれた瞬間に、酒臭い香りが部屋全体に流れ込み、全員が扉へと目を向ける。


ふらふらとした千鳥足で入室したのは……絶賛呑兵衛パルテオン。


彼が入室した瞬間から香ってくるアルコールの香りに、しかめっ面になる聖女(セラ)


「うぃ~~~! 騎士様がご帰還なすった~~っ……ぜッ!」


顔は真っ赤――額に巻かれた謎の帯……彼から漂う凄まじいアルコール臭。

軽鎧のベルトもところどころ緩んでおり、現在の彼は完全に酔いどれ親父のソレ。


「俺もッ!! 俺も、だぞぉッ!! 騎士の呑み仲間から、ちゃあーんとッ!!

 情報を……持ち帰ったッ……ぜッ!! ガーッハッハ!」


非常に元気良く宣言するも、足取りはおぼついていない様子。

壁に手をつき、ずるずると滑るように移動する騎士(パルテオン)


あまりの酒臭さにルルは鼻をつまみ「クッサ!」と暴言を吐き出す。

セラもまた鼻と口を抑え、眉間に皺を作り彼を軽蔑の眼差しで見つめていた。


「おい……。 この酔っぱ、耳飾りどこおいたんよ。」


「あーん……? えー……たしかここにしまったはず……あんれぇッ??」


鎧のあちこちをまさぐるパルテオンだったが――

酔いのせいなのか、動きがとんでもないほどに鈍い。


見てられなくなったノアは、ため息を混ぜ、器用に騎士の身体を探る。


「っもー! 何してるのパルっ! ちょっと僕に貸してっ!」


あちこち確認をしていると――騎士の臀部のポケットから出てくる袋。

袋の中身は勿論、賢者(バルタザール)から渡された耳飾り型の魔道具。


全員が「あーあ。」と顔を見合わせ、ノアは盛大にため息を吐き出す。


『――あの、ええとッ……。 で、ではッ……僭越ながら――

 情報の整理はワタクシが……。 あのコレッ……。』


『進行しても、問題ないヤツでしてッ……??』


耳飾り越しから聞こえてくる賢者(バルタザール)の訝しむような声。

一同は顔を見合わせ、ルルが「頼むわ……。」と小さく呟くが――


なぜかその場を仕切るように、パルテオンが千鳥足のまま、部屋を闊歩。

やがて椅子に座ったかと思いきや、床にドサリと腰を据え――


真剣な面持ちでなぜか床を『ドン』と叩いた。


「俺なぁッ! 聞いたんだぜッ! え~~~~っと……えっとなぁ……。」


不安そうな目で騎士(パルテオン)を見つめる小人族(ルル)――勇者(ノア)聖女(セラ)も彼の言葉を待つ。

しばらく唸るだけの酔っ払い――やがて思い出したのか、言葉を続けた。


「あれだッ! 王歴の六百六十四? あー?六百六十六年頃だっけか?」


「ひっく」と途中で言葉に詰まり、更に「うぇ……」と気持ち悪そうにする騎士(パルテオン)

皆顔を合わせ、怪訝な目を向けながらも騎士(パルテオン)の言葉を待つしか出来ない。


「俺らん国が~……戦争?? でぇ~……物資不足に陥ったじゃんよ~~ッ?

 んでよ~……初代の……アスモ……。 アメ……アメソリソコちゅーヤツ?

 そいつが~~ッ! 独自に公益の路線を確保した? ってぇ~~……?」


「すんげぇ大量の食いもんを持ち込んでよぉッ! 煌陽国(セレスタリア)を救ったってよぉッ!

 すんげぇよなぁッ! ガッハッハ! ヒェック……。」


途中で『ゲフゥッ』と、喉奥からこみ上げる下品な音が漏れ聞こえる有り様。

全員の顔はしかめっ面を通り越し――虚無と化した。


『フムフム。 アメソリソコではなく『アメトリクス』ですぞッ。』


耳飾り越しから響く賢者(バルタザール)の声が、今の勇者たちにとっての癒しと思えるほど。

「んでぇッ!!」と――騎士(パルテオン)の話は、まだまだ続くようだ。


「そいでぇ……六百七十年頃によぉ……叙爵したんだってよぉ~……!!

 そっからぁ~~ッ!七百二年頃……七百八年頃にぃ?? 流行り病……。

 すげぇでけえ感染病がぁ……あったらしくってよぉ……ううッ……!」


唐突に泣き出した騎士(パルテオン)……一同はもう、どうすれば良いのか分からずに放置。


「その治療薬を作ったのが~ッ!! なんと、二代目のアスモレクスだッ!!」


(言い切ったね、パル……。)

(言い切りやがったな……騎士ちゃん……。)

(アスモレクス……どちら様なのでしょうか……。)


「ああ~~? 家名……。 なんつったけか……ファ、フィ……フェ……。

 フォイ・ニヴェィーシャッ!!子爵のヤツだッ!」


騎士(パルテオン)の呂律は完全に終了しており、とても聞き取りにくい。

しかし語られた言葉は確かな重みと情報……一同は困惑の顔つきに。


「最後だぁッ! 七百二十四年に、二代目から三代目に継いでんだァ~~ッ!

 だからぁ……つまりよぉ……今は……今って王歴何年だぁ……?」


『今は王歴七百二十七年ですなッ……。』


思わず合の手を入れる賢者(バルタザール)だが、果たしてこの騎士(パルテオン)の耳に届いているのか。


「んじゃぁ~~ッ!現子爵の当主はぁ~~三代目ってこったな!」


「ハッハー!」と締めくくり、騎士(パルテオン)はやりきったと言わんばかりに――

そのまま床に突っ伏し倒れ込み――着替えることなく、気を失った。


後にアルコールの臭いを散らし上げ、轟音イビキが場の空気を支配。


「ははは……。 はぁ……。 その状態で寝られるの、パルくらいだよ?」


ノアが力なくツッコミ――三人はやれやれと言った様子で首を横に振る。

床に転がり、轟音イビキを鳴らし眠る彼を、見つめるしか出来なかった。





7/27 大幅加筆修正。主にPCブラウザで見やすいよう、調整致しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ