頁:17 その【対話】戦闘につき。◆挿絵有り
翌日の早朝。
まだ陽の光が昇っていないような時間――って思ったけどそうじゃないね?
僕たちは昨晩、お困り事を解決した後に不思議な森の集落――
たしか……白兎小人族の集落、ルルのお家にお邪魔していたんだった。
僕はまだ、勇者に選ばれてからそう日にちも経っていない。
だから、どうしても村での生活が抜けきっていないみたい。
面白い服を着たルルに起こされるけど――駄目だねぇ……眠いやっ!
「おーい、起きろー?上の住人に会いに行くぞー?覚悟しとけー」
先に目を覚ましていた聖女さんの姿は確認できるけど……あれ?
もう一人……絶対に見失わない僕の友人がいない。どこだろう?
って思ってたら――いた。
昨日僕に沢山寄り添ってくれたあの『丸いふわふわ生物。』
あの丸い生き物がパルにびっしり集団添い寝!すっごいね!
あれじゃ『こびりついてる』って言葉のほうが適切かもしれないよ……。
ルルも『知らないですけど?』みたいな顔してるし……どうしたものだろう?
でもそれもパルが目を開けて『ウオォッ!』って叫んだら……散らばった。
結局あの光景は一体なんだったんだろうねぇ……?
聖女さんと目があって、面白かったから笑い合ったけど……良かった。
なんだかずっと、気を張っていたみたいだったから、心配してたんだよね。
本当は僕に何でも相談してほしいけど、まだ――
多分……彼女は僕のことを深く信用はしていないと思うから。
その後はかるーく身支度して、ルルのお家から出たけど……。
どうにも向かう先は昨日戦った場所の近くだってお話みたい。
「んで……?エルフん所に行くっちゅう話だったよな?
なんでんな場所まで行く必要があるんだ?説明が欲しいんだが――」
「あれ?あたし昨日説明せんかった?森で迷子なった人たち――
帰してあげる役目を担っとるの、エルフ族って。」
「あたし、昨晩説明したと思うんじゃけどー」
居住区を抜けて外に出て――また森の中を歩くけど……。
うーん、やっぱりすごいねぇ!外の世界って広いって、知らされるみたい!
陽の光はあまり感じなくて、薄暗いからちょっと不気味だけど……。
うん……自然の香り!畑の次くらいにいい匂いだねっ!
あれ?でもおかしいね?集落付近に咲いてた薔薇……。
たしか昨日見たときは深い赤色だったのに、今は……青色?
「おっ、勇者ちゃん気が付いた?すごいじゃろ。この薔薇って目印なんよ。
赤色だと危険信号で、青色が安全信号。ちなみに――」
「昼間になったらまた色が変わるんだぜ?仕組みは分からんけど。」
自慢げにしてるけど……すごいねぇ!僕の知らない世界!
なんだか足元に例のふわふわの生き物が……纏わりついてる……。
付いてきて貰っても困るけど……どうしようにもないねぇ。
一応は追っ払ってみるけど……うん。これで大丈夫だね!
――しかしこの時のノアは気が付いていなかった。
彼の頭の上に、まだ一匹のふわふわ生物が乗っかっていたことに。
歩くこと数十分――やっと目的地に到着したみたい。
ルルが短い杖を構えて、なにやらくるくる回してるみたいだけど。
(何してるんだろう?)
ずっと見てたはずなのに、なにか空間の揺らぎ……?
まるで空気が水面みたいに波打って、気が付いたら目の前に木!
そこに無かったはずなのに、急に出てきてびっくり。
ルルが大きな木を叩いたら扉が出てきて……。
そのまま促されて扉の中に入ったら、更にびっくりする光景で。
螺旋階段が広がってたけど、もう何段あるのか僕には分からなかった。
多分僕は顔に『うげぇ』って出てたんだと思う。
ルルに言われたのは『まぁみとき。』って短い言葉で。
そこからはもう……びっくり!ルルが短い杖を振ったら階段が動いて!
段差に足を乗せてるだけで、勝手に上に進んで行くのは……気持ちいいね!
後ろに目を配れば、パルも聖女さんも不思議そうにしてるみたい?
そのまま流れに身を任せて、あっという間に一番上に来たけど――
ルルが先に行くから、とりあえず皆で付いていった。
扉を抜けた先には、また僕の知らない世界が広がってて。
圧巻の光景で、僕たちは何も言えず、ただ無言で見つめるしか出来なかった。
とっても大きな樹木の上に立っているってのは理解できるんだけど……。
僕にはそのことしか分からない。周りにはぽつんぽつんと、ツリーハウス。
下を見れば雲海が広がっているし……ここは……どこなんだろう?
下から見たときには確かに空が広がっていたはずなんだけどなぁ……?
雲なんて掛かっていなかったはずなのに、不思議だねぇ?
というかなんだか……頭に違和感があるんだけど、何かな?
って、これ――ど、どうしよう……!付いてきちゃってるよ……?
「ねぇ……どうしよう皆ぁ……僕に付いてきちゃったみたいなんだけど……。」
「しらね。勇者ちゃんのこと、気にいっとんじゃろ?つれてけー」
そう簡単に言うけど……まぁいっか!旅は道連れって誰か言ってたし!
『勇者っぽくはないのですが……可愛らしい光景ですねぇ……!』
『やべぇよな……すげぇ面白ェ光景になっちまっていやがるぜ……。』
(二人とも、小声で言ってるつもりだろうけど、ちゃんと聞こえてるよ……?)
あんまり喋れる気配じゃないっていうか――
どこか遠くから視線を感じちゃって、黙ってルルに付いて行ってたけど。
うーん……無言の時間って、僕……苦手なんだよね……。
「とりま、今向かっとる場所はこっちの……エルフのおえれーさんとこ。
皆エルフどもの視線が気になっとる感じ?すまんなー。」
「実はあたしも、あんまここ来るの好きじゃないんよね。」
そうしてルルに連れられて進んでたんだけど――なんだろ?
風みたいな、自然の気配……?僕だけが感じているのかな?
そう思っていたけど、勘違いじゃなかったみたい!
風を纏ってふわふわ宙に浮いてる、とっても綺麗な……エルフさん!
でも見た目だけじゃ女の人か、男の人か分からない……。
「まぁまぁ、こないな場所に小人族の方が来はるやなんて。」
「滅多にあらしまへんえ?ウチ、百年ぶりに顔みたわぁ。ほんで?
今日はどないなご用向きやろか?」
すっごく綺麗なお声……!見た目じゃ分からなかったけど……男の人だ!
でもおかしいね?こんなに柔らかな見た目と声なのに……。
どうして聖女さんもパルも固まってるんだろう?
「エルフさんの方ですかっ?初めまして!とっても素敵なお声ですねっ!
実は僕たち、森に迷い込んでしまって、困っていたんですっ!」
「それでね“僕の仲間”の小人族さんに案内してもらってたんだぁ!
僕たちを帰してくれるのは、エルフさんって……そう聞いたからっ!」
「あ、安心してください!長居はしないのでっ!」
――きっとエルフの青年は皮肉を込めて言葉を放っていた。
しかし、勇者であるノアの前では無力。
彼は……天然という鉄壁の防御で、エルフの口撃を無効化。
『ノ、ノアさんは平気なのでしょうか……?私、少し怖いのですが……?』
『お、俺も情けねぇんだが……圧力を感じちまってよ……。』
(だから聞こえてるよ二人とも……。)
二人でコソコソ話してても、多分目の前のエルフさんにも伝わってるよ?
すっごいいい笑顔だけど……どこか睨んでる?あーあ……。
「そない声ひそめんでも、よー聞こえてますえ?この耳――
伊達で付けてる思われましたやろか?事情やけど、分かりました。」
「長やけど。長やったらあっちいはりますえ?ほならウチはこれで。」
エルフさんはそれだけ伝えて、長い杖を抱えて――
そのまま自然に溶け込むみたいに飛んで行っちゃったけど。
どうして皆、こんなに疲れた顔してるんだろう?
「……ハァ~~~~~ッ。これじゃけイヤなんよ。とりまあっち行こ。
エルフは全員もれなくあんなんじゃけど、迷い込んできたひとたち――」
「かえさんにゃいけんけぇさ、協力はしてくれるけぇ……ハァ~~ッ」
先頭を歩いてるルルだけど……なんでそんなに不機嫌なんだろう……?
もしかして、僕が変なこと言ったとか……かなぁ……。
少し不安もあったけど、僕にはどうすることも出来ないねぇ……。




