第4話
遅くなりました^^;
それから2日間でしっかり情報が集まった。
まずはハンカチの持ち主チェリーについて。チェリー・ブロウム男爵令嬢。元々は平民で、ブロウム男爵が戯れに手を付けた小間使いが母親。例によって平民へ戻されていた母娘だが、母親死亡に伴い男爵家へ迎え入れたんだとか。もう、乙女ゲームの定番すぎる展開ですな。
でもって、魅了魔法の素となる木の実は、危険性大という事で輸入・輸出ともされていない。しかし、裏では莫大な金額で取引されている。世界の不思議というか、人間の業というか。誰だって自分の好きな人にちやほやされたいとは思う。 手段間違ってるけど。
で、『婚約破棄』騒動が始まった時期と裏取引の実情を重ね合わせて計算してみると、どんぴしゃりである人物が浮かび上がってきたんだな。それを含めたところで『お馬鹿な計画をぶっ潰そう!』計画が現実味を帯びてきた。
さらに6日かけて計画を煮詰める。決行は今度の舞踏会。名目は王太子殿下の誕生パーティ。
あ? そうだよ、この断罪劇、大々的にやらかす予定さ。黒幕も焙り出すつもりだからね。
ふふふふっ、た~のしいパーティにしちゃるから!
パーティー当日。会場は華やかに飾り付けられ、あちこちに着飾った令嬢令息がそぞろ歩いている。舞台の上には大きなミラーボールが輝きをあちこちにまき散らし、いやがうえにもお祝い気分が盛り上がって……はいなかった。
原因? そんなのひとつだけだよ。舞台上に並んだ男女の群れがぶち壊してるんだから。
王太子殿下、その腕にぶら下がった令嬢、後ろに側近候補の公侯伯爵令息たち。
「皆の者! 私の誕生を祝うこの席に集ってくれたことを感謝する! そしてこの場を借りて、大事な発表を行いたい!」
さあ、いよいよ始まったぞ。これはタイミングが命、しっかり見極めるようにイルには言っておいたけど、大丈夫かな?
「ミラルダ・ロードリック公爵令嬢! ここへ出るがよい!」
さて、ここからは目が離せないな。
「ブライアン王太子殿下。デイアン・ロードリック公爵が娘、ミラルダ・ロードリック。お召しにより参上仕りました」
「ふん、よくまあノコノコと顔を出せたものだな! 今からその仮面、剥いで見せよう!」
あららら~、王太子殿下、あんまりしゃべんない方がいいと思うんだけどぉ~?
「よく聞け! 私、ブライアンはこの場を借りて……」
「兄上!! おめでとうございますっ!!」
おっし、イル! バッチグーだ!!
「あ? ああ? イリアード?」
「兄上、晴れの舞台ですね! 心よりお祝い申し上げますっ!!」
「あ? ああ、ありがとう……?」
「この良き日に、私イリアードからのお祝いをお受け取り下さいっ!! さあっ、このひもをどうぞっ!」
「……ひも?」
「ここをこう持ってですね、はい! せぇーの、で引っ張ってくださいっ。はい、せぇーの!」
「こう、か?……っ!!!」
ザッパアァァッッンンン………!!
…………この音で分かる奴は分かるだろう。舞台の上につるした特大のミラーボール、あれ、実は「くす玉」なんだよ。
「くす玉」、知らない? あの、引っ張ると中から紙吹雪やテープや垂れ幕が下がってくる、お祝いに定番の、アレ。
今回は紙吹雪ではなく、魅了魔法を打ち消す解毒薬と消臭効果のある水を仕込んでおいた。
それが真下に居た王太子殿下や隣のチェリー嬢、後ろの側近連中へまとめてぶち落ちたんだから……結果はどうだったか。
「「「「うおおぉぉっっ~~!?」」」」
「きゃああぁぁっ~~!?」
うん、見事に全員水浸し。
その前に前列にいた人や公爵令嬢は、会場のメイドやら給仕やらに指示してそっと後ろへ誘導しておいたからだ~いじょうぶ。結界もあったしね。
「何コレ何コレなにがあったのぉっ!? なんでどーしてアタシずぶ濡れなのよぉぉっっ~~!!!」
あらあら元気だねぇチェリー嬢は。男どもは呆然としてるってのにさ。
まあ、魔法が解けて愕然としてると言った方が正しいか。
舞台の王太子殿下にイルが近づく。
「兄上、お目が覚めましたか?」
「ああ、イル、これを仕掛けたのはお前、か?」
「はい。兄上に掛けられていた魔法を解くための作戦です」
「そうか。それで……随分と面倒を掛けたのだな、すまん」
「その言葉は私ではなく、ミラルダ様にお願いします」
「っ!! そうだ、私はミラルダに、何という事を!」
「ブランったら、どこ行くのよぅ! こぉんなにみっともない格好なんてすぐに着替えさせてよぅ!」
腕に取りすがったチェリー嬢を、これでもかと冷たい視線で見下ろす王太子殿下。
「なんだお前は? この私に魅了を仕掛けるとはよほど死にたいようだな?」
「なっ! ブラン、アタシが大好きって言ってくれたじゃないの! 忘れちゃったのぅ?」
「忘れるものか。その記憶を消せるものなら何をしてもいいくらいにしっかり覚えているぞ。衛兵! この恥知らずを牢へ連行せよ!」
「いやっ! 何すんのよっ! ラル! カイト! ミック! 助けてぇ!」
「わ、私は魅了にかかっていたのか……くっ」
「こんな女だったとは不覚だ。修行が足りなかった」
「二度とあなたの顔は見たくないですよ」
「え、そんな! 誰か助けてっ! ブラン、ブランーっ!」
盛大に騒いだな、あのチェリー嬢。さて王太子は、と。
「ミラルダ・ロードリック公爵令嬢。どれほど詫びても私の犯した罪は消えないだろう。だから君にゆだねよう、この私の処罰を。どのような罰も受け入れる。さあ、処分を」
(うわ、令嬢の前に片膝ついて頭下げた。あそこまでできるとは! 本物や、あの王子は(感激)! あそこまで潔い人とは……!)
「兄上は尊敬できるお方だからな。だからこそ、兄上なのだ」
(言ってる意味が分から~~ん!!)
「ブライアン王太子殿下、わたくしに貴方様を裁けとは無理を仰います。なぜなら、わたくしは貴方様の妻となる身、貴方様に罪があるというのなら、わたくしも罪がある事となりましょう。魅了にかかって出た言葉はもはや偽りのものと明らかになりました。貴方様には罪などございません。どうか、お顔をあげてわたくしをご覧になってくださいませ」
「私っ、私は、まだミラルダの隣にいていいのか?」
「望むところでございます。わたくしの大事なお方……ブラン様」
「すまん、ミラルダっ! すまなかったっ!」
「あ、兄上っ! ミラルダ嬢が濡れてしまいますっ!!」
(あ~あ、イルったらも~。濡れてもいいから抱きしめさせりゃいいのに。せっかくの名場面だってのにさ)
「ここは舞台じゃないからいいんだよ。これ以上ロードリック公爵の逆鱗を逆撫でしたくない」
(成程、それもそうだ)
「ところでセシル。キミいつまでそこに居るのさ。もう出てきても良いんじゃないのか?」
(そう言ってもこれは独りじゃ無理なんだよ。まだメインが済んでいないしね)
「あ、そうか。じゃ、あとは兄上に……」
(イルがやるって決めただろ!? さっさとやれ!)
「そう言っても僕じゃ迫力が」
「イリアード? 何やっているんだ、その柱の前で?」
(ほれ、行け! 諦めて腹を括るんだな!)
「……分かったよ。よぉし、やるか!」
(イルはやれば出来るんだから。頑張れよ!)
「うん!!」
読んでいただき、ありがとうございます!
正統派(?)婚約破棄からのざまぁ、にはなりませんでした(ぐっすん)




