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第3話

誤字報告、ありがとうございました。

何回か読み直しているんですが、見つけられませんでした…反省^^;

 王宮の中庭(あの噴水があるところ)で偶然にも第二王子と接近遭遇してしまったオレだが、その3日後、正式に申し入れをして王子の私室に通されていた。


「先日は失礼いたしました。ルシアード公爵が第3子、セイスリック・ルシアード、お召しにより御前に参上いたしました」

「うん。先日はこちらも準備不足で思いがけない仕儀になった。今日はその埋め合わせもあって来てもらったんだ。まずは座って話そう」


 形式通りのやり取りを交わし、茶の供応を受ける。そのあと、王子の一声で人払いがなされ、メイドが一礼して部屋を出る。パタン、と扉が閉まった。

 数瞬の沈黙、沈黙、沈黙。そして……


 殿下が椅子にそっくり返った。


「あっはははははははは!! わ、笑いをこらえるのが、こんなに、つらかった、とはっ!! く、苦しい~~っ!!」

「ひどいっすよ殿下。そんなに笑わなくったっていいじゃないですか!」

「そ、そんなこと言ってもさ~、ぷくくく。あの後、大騒ぎだったんだよ? キミの退出があまりに早かったから!」

「そ、それはっ! そもそも殿下があんなとこに居たのが間違いじゃないですか。オレがすべての原因だって言うなら、殿下にも半分持ってもらいますからね!」


 大声出してやりあい、そのあと二人して肩で息をつき、同じように座って紅茶を飲んで。

 カップ越しに目線があった途端、またしても笑いの発作がこみあげた。


「ふふっ、久しぶりに大声で笑ったらすっきりしたな。何をいじけていたのかと自分でも笑えてくるよ」

「あだ名がひどいですからね。『真ん中王子』なんて。挙句に『顔しらず』はないです。一体何様ですかね、言い出したのは」

「そうだなぁ、多分講師のうちの誰かだろうね。兄上を教えていた人達だから、違いが大きすぎて呆れたんだろう」


「それでもですよ。ふざけてるんですか、その人は。何でもかんでも出来るんだからある意味すごいですよ。普通じゃできないことですって」

「何でもかんでもって」

「あれ、違いました? どれでも卒なくできる、ってオレ聞いたんですが」


「ああ、一応できるよ。あくまでも普通の人よりはね。それだけさ」

 なんでもないように殿下は答える。それにオレはカチンと来た。


「あのですね、それすらできないのが普通なんですから、殿下は突き抜けてるんですよ。少なくとも大半の人間よりは上です」


「え」


「やること為す事すべて完ぺきにこなせるのは神様くらいです。殿下はやれば出来るんですから、神様の下の下くらいには位置してるんですよ。それを何悲観してるんですか、馬鹿馬鹿しい。ましてやできない人間が付けるケチにいちいち反応してどーすんですか」


「……」


「何をやっても文句言う奴は一定数いるんです。そんなのに付き合ってうろうろしてるくらいなら、そっちもやってみろと笑い飛ばしゃいいんですよ。勿体ないことしないでください、ホント」


 一度火が付いた想いは消しようがない。自分でもびっくりするくらいの勢いで言葉が繋がっていく。

「…………」


「才能ない人間からしたら腹立つ理由でごねられて不貞腐れて、一体何をどうしろってんですか。小さい子だったらケツひん剥いて百叩きの刑にしてますよ、オレは。殿下もそうされたいんですかね? お望みならすぐにでも……え? なに泣いてるんですか、殿下?」


「うぐっ、えっ、えっ、ぐすっ」


「は、あの、オレ、まだ何にもしてませんよね? 手も出していませんよ、ね? ど、どーして泣くんですかぁ!」


「ぐすっ、うぐっ、くっ」


 ボロ泣きする殿下に、オレの頭は真っ白け。父上や兄上たちに迷惑かけちまった、どうする? こうなったらこのまま逐電するしかない。すぐに家へ取って返し、アレとアレとアレを持って、辻馬車拾って、まっすぐ辺境までいけば何とかなるか、な? よし、すぐに……


「行くな!!」

「は? で、殿下?」

 気が付けば扉に向かう格好で殿下に引き留められていた。


「行くんじゃない!!」

「え、あの、もしかして、言葉にしてました? 逐電する事を?」

 返事はコクコク上下する頭。あやや、オレの悪い癖がたれ流し……。

 しばし立ち止まり、ため息ひとつ。うん、根本に立ち帰ろう。


 ポンポンと殿下の背を叩き、もう一度座る。殿下はオレにつかまったままなので、まずはハンカチで顔を拭いてチン!

 そして茶を入れなおし、殿下の前へ。


「落ち着いて、まずは一口どうぞ」

「ん……美味しい」

「それはよかった。オレの趣味で紅茶入れるのが得意なんです。家族の誰もが喜んでくれるので」

「そうか。キミの家は仲良しなんだな」

「殿下だってそうでしょ。悪いとは聞いたことないですよ」

「そ、うだな。悪くはないな」


 王室ファミリーの仲違いなんて、ゴシップネタにも上がったことないぞ、確か。

 それよりちゃんと謝っておかなきゃな。


「それくらいの距離でいいんですよ。それよりすみませんでした。まさか殿下が泣かれるとは思わなかったもので」

「あ、いや。うれしかったんだ。あんな風に言ってくれた人が今まで居なかったから。一気に肩の力が抜けて、そしたら涙が出てきてしまったんだ」


 興奮が冷めて気恥ずかしくなったんだろう、紅くなってる。


「殿下、気張りすぎです。もう少し気楽にしてないとハゲますよ?」

「なっ! ハゲは勘弁してほしい、な」

「なら、適当に気を抜くこと、覚えないと駄目ですね」


「う、うん、分かった。キミがそばで教えてくれたら、気楽になれると、思う」

「あ~ハイハイ、了解です~」


 なし崩しに了解させられた。くっそ~、詐欺にあった気分だ。


「で、ですね、殿下」

「イル、でいい」

「イル殿下?」

「抜きで」

「あ~……イル?」

「うん、それで頼む」


 何だ、この距離感。ひょっとして懐かれた?

 とと、それより大事なことがあったんだ。


「で、お話ですが。この間の事覚えてますか?」

「匂いの事なら、うん」

「あれ、オレの思った通りでした。ムスキーノート…ムスクをベースにしてチューベローズの香りを乗せ……もうひとつ、魅了の魔法薬が入ってました」


「魅了……!?」

 

 でん……いや、イルの顔が一気に引き締まった。

 魅了魔法なんて、禁忌のひとつだしな。


「あの魔法は特殊な木の実を使うんで、強烈なにおい成分を持つ香水でないとごまかせないんですよ。あのチューベローズでさえも消しきれなかったんですね。成分分析でわかりましたが」


 あのあと、家に戻ったオレは父上と兄上たちに事情を話し、分析をお願いしたんだ。でもって、魅了魔法を確認したってわけ。

「では! では、兄上がおかしかったのも、魅了されているんだと?」

「その可能性がありますね。今、兄上たちに調査をお願いしてます。搬入経路が分かり次第、次の手を打ちますから」


 結果が分かった時の父上、兄上たちの表情はそりゃあもう怖かった。みんな笑顔なんだけど、その裏に火山の噴火やら津波やら猛吹雪やらが隠されているようで、オレ、逃げ出したくなったから。


「最終目標が王太子殿下なら、やらかす日時は大体特定できますしね。その時が勝負です」

 どうやるか、今我が家総出で計画を練っている。一国の王太子を馬鹿にしてくれたんだ、それなりの報復は覚悟してもらおう。


 と。殿下改めイルが顔を上げた。

「その計画、僕も乗っていいか?」

「え、で……ゴホン、イル、がですか? そりゃあまあ、父に聞いてみますが」

「頼む。兄上をおかしくした奴らに一泡吹かしたいんだ」

「そう、ですね。それも面白い、かも」


 うん、オレ、ひらめいた。これならいけるかも?

 オレの顔、満面の笑みになってるんだろう。イルも目を輝かせてる。


「よっし。一度帰って計画してみますか。大筋が決まったらまた来ます」

「ああ、待ってる」


 こうして『お馬鹿な計画をぶっ潰そう!』計画は起動を始めた。

 因みに、命名はオレ。良いだろう!




読んでいただき、感謝です!



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