追いかけっこの果ては
エルゥは夜中の道をただ一人で歩いていた。家出したのだ。もう、あんなところにはもう戻りたくない。心からそう強く思っていた。
それから、1年たった。この1年間はずっと昼はずっと町中を歩き回り、夜には裏路地などの人が来ないような場所にいた。もちろん、ず~っと一人だった。誰も自分も見ている人なんていない。でも、あんな日々よりはずっとマシだっただろう。そうではあっても、やはり、寂しかった。
今も、真っ暗闇で裏路地で座り込んでいた。急に、横から何かの気配を感じ取った。しかし、横には人も、猫も、虫一匹もいない。この気配は覚えていた。しかも、エルゥは生き物の気配に敏感なわけではない。感じ取った気配はいつしかのものと今のものだけだった。でも、今回のこの気配は、エルゥをどこかへ導こうとしていたようだった。
エルゥは立ち上がって、行き先を自分の足に任せて歩き出した。
ふらふらと歩いていれば、「おい、君。」と誰かに声をかけられた。その人は紺色を基調とした制服、頭にはその人が何なのかわかるような黒い帽子を被っていた。
「・・・・・・・・警察?」
「そうだよ、嬢ちゃん。今何時だと思ってるんだい?子供はこの時間にいちゃダメでしょ?親が心配するでしょう?」
やばい、捕まる。
「あれ?お嬢ちゃん、よく見たら・・・・あっ!待ちなさい!」
エルゥは全力で走り出した。ここで捕まってしまっては、またあの苦しい生活に戻ってしまうから。
それは絶対に嫌だ。
「待て!」
後ろから警察官が追いかけてきている。ここで捕まえることができなかったら、あの警察官の給料や信頼は減ってしまうだろうが、悪いがこちらも捕まるわけにはいかなかった。
「待ちなさい!エルゥちゃん!」
警察官はエルゥの名前を知っていた。なぜ知ってるのか疑問に思うだろうが、今はそんなこと気にしている暇も余裕もない。
警察官との追いかけっこをしていると、気が付けば山に入っていった。好都合だ。ここなら警察をまくことができるだろう。
暗い山の中を走っていると、目の前に女性が見えた。
エルゥは走るスピードを落とし、女性の前で止まった。女性は、この世界には存在しないような純白のローブのようなものをきて、頭には金色のサークレットを身に着けていた。
「探しましたよ。あなたを迎えに来ました。」
女性はエルゥに告げた。
「迎えに?私をまたあの地獄のような生活へ引き戻す気なのか?」
「いいえ、わたくしについていけば、あなたはもうあんな目には合わないでしょう。」
「どこへ連れて行く気だ。」
「とある異世界せす。」
異世界。そんなものがあるとは思えなかった。でも、なぜかこの者のいうことは真実だと思ってしまう。自分をからかっているとしか思えない。それでも・・・・・・。
「行きたい。連れて行ってください。その、異世界へ。」
「いいでしょう。さぁ、こちらへ。」
エルゥは女性の元へ歩く。そして、目の前で止まれば
「お名前は?」
と聞いてきた。エルゥは考え込んだ。そして、こう答える。
「白天 恵瑠。それが私の名前だと、思ってほしい。」
「そうですか、では、参りましょう。」
女性が何かの呪文のようなものを唱える。そのあいだにエルゥを追いかけていた警察官がここまでやってきた。
「おい!となしくしな・・・・・・!?」
女性とエルゥは青い光に包まれ、消えていった。
そして、とある想像世界で新たな住人がやって来たのであった。
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宙を舞っていたヘアバンドはエルゥの後ろの地面に落ちた。
恵瑠は空を仰ぐ。
「ああ、全部思い出した。」
「そうだろ?あの憎い人間どもを忘れるなんて、平和ボケしすぎだろ。」
「その平和を誰かさんに壊されそうな危機なんだけどね。」
「で、どうだ?」
「何が?」
「思い出したんだろう?あの苦しみを、あの憎い人間どもを。なら、私の気持ちがわかるだろう?」
「そうだね。」
「じゃぁ、全部潰そう!人間が住む世界を全部!!」
恵瑠は少し間をおいて、こう答えた。
「それはできない。」




