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第83話

赤い竜を倒すことはできたのかを確かめる程の力は、今の一振りに全てを注いでしまい、男の子はまるで糸が切れた人形のようにへたり込む。


千切れかけの手足を引摺り、男の子に駆け寄る黒の王子は、まず彼に息があるかを確かめる。その次に、遂に地へと崩れ落ちた竜を確認する。


かつて自分達の国最後の盾を司る黒竜は、その身を醜い赤に染められた。そして今、護るべき国の全てを焼き尽くす水際のところで、幸くも食い止められた。


竜は放たれた眩き虹霓によって臓物の悉くを蹂躙され、赤の上に噴血を重ねる様相になりながら、それでも尚瞳の輝きに曇りはなく、息絶えてはいなかった。


あまりにも強大な不死の肉体の力に驚嘆する男の子と王子であったが、その直後に竜が瞳を輝かせると、唐突にふたりの頭に直接響き渡る声が現れる。


隻眼の導師ものではない、それとは別の威厳に満ちた声であった。まさか、と思い王子は口にすれば、声の主は自身をそなた達が倒した竜であると紹介する。


曰く、よくぞ我が身を解放してくれた。我を縛る楔は、聖剣の放つ真の輝きを前に砕かれた。勇気あるふたりに感謝を、と。


黒の王子は涙を流す。神の代行者たる黒竜の帰還、ならびに偉大なる者からの感謝に、身に余る光栄と噛み締める。


異邦の者たる男の子にも、その竜の放つ威厳は身体の芯まで染み渡るようで、これまで見たあらゆる王をも越えるであろう、強い威厳を確かに見た。

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