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第82話

首輪の紋章が輝きを一層強く放つと、赤い竜は悲鳴を上げながら、自身を傷つけた者を滅するべく、炎の義手が二回りは巨大な物へと姿を変え、一歩ずつ地鳴りを響かせて迫り来る。


一方で、全身を激痛に苛まれる男の子と黒の王子の両者は、血塗れで横たわる身体をやっとの思いで奮い立たせるも、強大に過ぎる竜を、どうして倒せなかったのかを思案する。


笑いっぱなしの膝を立たせる男の子は、黒の王子の手から離れ、砂の大地に突き立てられた白銀の聖剣を見つける。よく見れば、輝く刀身にはまだ鎖が二つ巻き付いており、それが聖剣本来の力を縛っているのであった。


なぜそうなったのか、それは誓いをまだ二つ遂げていないからに他ならない。一つは、怨念無き戦いであること。もう一つは、此を振るう者は命を知る者である、という誓いであった。


黒の王子は述懐する。御身は赤い竜を通して赤の国、ひいては赤の女王への堪えがたい怨念を抱いている。そして、命を知る、という意味を掴みかねていた。それゆえに、聖剣は私に力の全てを授けてはくださらなかったのだ、と結論付ける。


崩れ落ち、突き刺さった砂の針で身体中から血が流れ出、雄々しき角にはひびの入り、大地を這う黒の王子は沸き上がる自身への至らなさに怒り、そして悲しむ。王としての不足が民を滅ぼすのだと思えば、悔しさで身が捩れる思いであった。


男の子はふらつきながらも立つ。砂に埋もれた聖剣を手に取り、焼け爛れた両手で力を込め握る度、叫びたくなる程の激痛に晒されながらも、迫り来る赤い竜に黒の王子を護るように立ちはだかる。


ふらふらの足に地鳴りのひとつひとつが大きく響き、すくみかける。しかし、目だけは相手を見据え、そして自らの過去、垣間見たひとつの夢の問答を思い出していた。


そして彼は唱う。我、此を振るう者、勇気ある者である。我、此を振るう刻、其即ち護るための戦いである。我、刃を向ける者、此即ち邪悪なる者である。我、此振るう敵、自らより強大な者である。我、共に往く者は、善き心である。我、怨念無き戦いである。我、此振るう者、命を識る者である。この七つの誓いを果たした者、この上無き誉れと力を授かるであろう。


その瞬間、巻き付く鎖の全てが解き放たれ、白銀の聖剣は陽の光全てを吸い込んだかのように、その刃が眩き虹彩を放つ。


ただの一振りであった。輝ける一閃は振り下ろされた灼熱の手を掻き消し、七つの首輪と胴を光の奔流で斬り裂き、竜は悲鳴ひとつ上げずに地へと伏す。

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