第79話
決意を新たにした男の子の耳に直接導師の声が届く。曰く、赤い竜は王城へ真っ直ぐ此方に飛来する。貴殿の想像した光景が許せぬのであれば首肯くがよい、という。
愚問である、といい男の子は即座に首肯く。導師は承ったと言えば、今度は黒の王子の耳にもお告げを与える。
曰く、今一度権能を行使し、諸君らを竜の直上に跳躍させよう。そなたに授けた菫色の魔槍と、黒の国に伝わる王権の証、白銀の聖剣を以て災厄を払うのだ、と。
同時に、しかしそれで私も暫くは力を使い果たして、先程のようにそなた達を救うことは叶わぬ、とも言う。
陽の傾き始めるなか、ふたりへ覚悟の是非を問う導師。黒の王子は息を整え、呪文の称え始める。
我、此を振るう者、勇気ある者である。我、此を振るう刻、其即ち護るための戦いである。我、刃を向ける者、此即ち邪悪なる者である。我、此振るう敵、自らより強大な者である。我、共に往く者は、善き心である。我、怨念無き戦いである。我、此振るう者、命を識る者である。この七つの誓いを果たした者、この上無き誉れと力を授かるであろう。
この詠唱の後、王子の周囲から魔方陣が展開され、そこから轟く雷鳴と共に、空間を裂いて、漆黒の鞘に収められた一振りの剣が招来する。
喚び出した剣は鍔に光の一点も射し込まぬ深黒の宝石が収められており、これまた白金の装飾が施された柄をを手にし、刃を解き放とうとすれば、漆黒の鞘から拘束の鎖が鍔に巻き付いておりそれを妨げる。
黒の王子曰く、この聖剣は王の権威の象徴であり、鎖は手にした者に王の資格の是非を問う。解くには七つの誓いを遂行する必要があり、それが先の詠唱である、と。
巻き付く七つの鎖が次々に断ち切られ、ついに抜刀すれば、抑え込まれていた膨大な力が臼煙として吹き出し、この世のあらゆる銀よりも輝かしい刃が露になる。
導師の言葉に、王子は射し込む夕陽の色で染まる聖剣を構え、男の子は多くの血潮を貪欲に吸い込んだ菫色の魔槍を弓に番うことで答え、強き闘志を露にするのであった。




