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第74話

広場に響く二重奏は唐突に打ち切られた。大きな払いで斧槍を弾く男の子は一歩跳躍すると、つい先程凪ぎ払われた短槍が地に落ちる寸前に、爪先から蹴りで投げられる。


再び襲う一撃をまた払おうと王子が振るい弾こうとすれば、短槍は全身を犠牲にしたことで大きくひしゃげ、対価として斧槍は先端の柄ごと抉るように破壊され、王子の手を離れ後方へ大きく吹き飛び、観衆の一歩手前に深々と突き刺さる。


一瞬の動揺が黒の王子と、それを見守る民たちを支配する。それを見逃すことはなく、男の子は脱兎の如く一歩で詰めよる。その場凌ぎの回避すら不能の、確殺の間合いであった。


戦慄した次の瞬間、死をも覚悟した黒の王子であったが、彼─彼女の視界は唐突に晴れる。確実に頭蓋まで届くであろう距離で放たれた一突きは、被っていた冑のみを弾けるように破壊するまでに留まった。


冑によって隠されていた美しい金色が露になり、風に靡く絹のような髪はただの一本も切られることなく、昼の日差し受けより輝きを強くする。


黒の王子の額から雄々しく生える、自身の誇りの具象とも言える一本角には掠り傷ひとつすら付けず、被る冑のみを真っ二つに砕いたのである。


眼前の穂先に息を呑みながら、見事であると、黒の王子は繰り出された絶技への称賛を述べ、両手を上げて降参の合図を取るのであった。


広場に響動めきが広がる。僅かな刻、時計の長針がひとつ進む程度の間に繰り広げられた攻防に皆驚きを隠せぬ様子であった。


決闘の終了を互いの一礼で終えると、王子は男の子に向け改めて、試合の後に貴殿を殺してしまうことが惜しい、と洩らす。


自分の勝利を欠片も疑わぬ、ということを遠回しに告げる姿勢に、眉をひそめる男の子であったが、既に今の勝利の歓びを程々に次の競技への意志を固めつつあった。

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