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第72話

明瞭な差をもって付けられた黒星に、王子は男の子が歯噛みしているのかと顔を覗けば、むしろ彼はあの暴れ馬を如何にして乗りこなしたのかを嬉々として訊く様子であった。


敗北による負の感情が見えぬ男の子の態度に若干の戸惑いを覚えつつも、黒の王子は咳払いひとつすると、丁寧な口調で疑問へ応える。


曰く、乗りこなすというのは間違いである。私が操るのではない。愛馬が如何にして快く駆け抜けて貰うのか、それさえ肝に命じればどのような生き物としても背中を預けることを許すだろう、と。


同時に、貴殿は我らにとって最も尊いものである誓いを破らせたという意味では度し難い悪であるが、恐れも嫉妬もない姿勢による問いには、一人の王子として答えねば、それは国の恥となるであろう、ともいう。


再び中央広場へと戻り、続く第二試合の幕開けの準備が進められる。時間は無制限、降参をする又は闘いを続行不可と見なされた段階で勝敗は決するものとした。


決闘用に多種多様な槍が用意され、黒の王子が選んだものは、銀色の分厚い片刃の斧と、同じく銀の鋭い穂先が複合した、並の兵士ではまともに振るうことすら叶わぬ重量の槍であった。


一方の男の子はというと、仇なす者の心臓を貫く菫色の魔槍では無用の血が流れることを危惧し、これを地に突き刺し用意されたものを宛がうこととした。


ふと、彼は審判を担う獣人に、試合に用いる槍は一本のみであるかと訊き、複数の使用は問題ない事を確かめると、反りのない股が十字に割れたの長槍と、投擲用とおぼしき柄が短い槍の二本を借り受けることとした。


審判は鎧は借りないのかと訊くと、男の子はと重いからそんなものは必要ないとすっぱり言い放ち、青い外套を纏う普段の軽装で二本の槍を携え挑む。


型破りに見える構えを取る男の子に警戒を強め、冑をかぶり重々しさが漂う斧槍を構える。三つ、呼吸を終えるその瞬間、試合開始の鐘が大きく鳴り響く。

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