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第70話

既に街中は試合を観ようと大衆が群がり、殆どの道が狭まってしまったため男の子は、煉瓦の屋根の上を駆け抜け約束の場所へ急行する。


いざ着いてみれば結果的に時間ぴったりの到着であり、そんな彼は早々に広場の中央へと躍り出れば、ひと足先に戦いのための鎧を纏い、美しき彫刻のように佇む黒の王子と対峙する。


広場の中央は巨大な舞台とおぼしき広大さを誇り、あらゆる競技も執り行うに不足しないであろう頑強な石畳で舗装されていた。


黒の王子は臆せずこの場に現れた男の子への敬意を表し、つい先刻耳に入れたであろう配下の無礼を詫びつつも、瞳はただ相手を焼き殺さんとする程の激情がたぎっていた。


ここまで試合はいったい何で行うのか、という疑問を訊く機会に恵まれなかった男の子に、黒の王子は合図を送ると配下に馬を何頭か連れさせる。


曰く、我が国における伝統的方式に乗っ取り、三本試合を行う。まず最初に街中を舞台に馬による競争を行い、次に槍の技を競い、最後は森に赴き猟の腕を競うのだ、という。


そう言って彼、彼女が手綱を握ったのは、通常の倍はある巨躯を持ち、見る者の心に強い恐怖感を与える黒い体毛の馬であった。


黒馬は触れようとする王子の手を振り払わんとけたたましい嘶きを上げ暴れ狂う。どう見ても人の手に余る暴れ馬に、王子はいたく満足げにこの馬で競うと決める。


一方の男の子はどれが良いかを品定めをするなか、自分から彼に寄ってきた人懐っこい茶褐色の毛が特徴の馬に決める。


実のところ、男の子は馬の扱いにはそれほど長けている訳ではなかった。帝都にて暮らす間、勉学と共に嗜みとして赤髪の騎士に手解きをしてもらった程度であり、それゆえに扱い易い馬に気に入って貰えたことに幸運を覚えていた。

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