第69話
約定通り、正午に差し掛かった時刻を見計らい、男の子は試合に挑むべく指定された場所─城下町の中央広場へ向かおうとする。
与えられた部屋から退室しようとしたその時、背中を駆け抜けた悪寒が、彼を咄嗟に三歩飛び退かせる。
直後に部屋の扉を砕き炎の玉、岩の塊、水の刃、風の金槌がそれぞれ一斉に飛び出す。何事かと構えれば、そこに立っていたのは昨日敵意を剥き出しにしていた豚顔の見張り役ふたりと、彼をこの部屋に案内した体毛が黒い筋骨粒々の獣人、蛇のような外見の獣人であった。
一体なんのつもりであるか。この行為は王子の意向であるか、と男の子が強く問い質すと彼等は口を揃えてこう言った。
曰く、王子は関係はない。貴様に王子の刃に露と消える名誉など相応しくない。我らにとって信仰とは自らを昇華し神に近付く為のものであり、誓いはその為に必要不可欠なものである。それをよりにもよってこの国の王子の誓いを、しかも人間が破らせたのであれば、まさしく万死に値する行為である、と。
ならばどうする、と構えを崩さずに再び問う男の子に、間髪入れずに魔術による攻撃を見舞う。命乞いなど聞く気はないと言わんばかりの飽和攻撃が繰り出される。
しかし、彼らが部屋を滅茶苦茶に破壊された様を確認する間は訪れなかった。風の金槌は鉄拳で打ち消し、水の刃は槍で切り払い、炎の玉は蝿のように叩き落とし、岩の塊は蹴り砕かれる。
披露された武芸に思わず呆気に取られる時には既に遅く、徒手空拳によってひとりひとり丁寧に意識を刈り取られていった。
赦せ、と一言だけ告げると、男の子はすぐにぼろぼろの部屋から飛び出し、神速のごとき速さで広場へ急ぐ。




