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第68話

導師が提示した案曰く、今日の正午、黒の国の正当なる儀礼に乗っ取った形式による試合を行い、勝利者は敗者の生命を含めた一切合財を所有物とする、というも約定を設けるのであった。


この試合でもし男の子に勝利したのであれば、直ちに彼を殺害することで秘密を知る者がこの世から消え、貴女が立てた誓いを守ることができよう、と説く。


そして、この試合を男の子が拒否した或いは約定を反故にした場合、最も苦痛に満ちた形で彼の命を絶つとも言う。


具体的には、今この場で押し留めている銀の刃の時をゆっくりと動かし、首の肉と骨が少しずつ断ち切られる末路である、と告げる。


無論、そうなれば男の子の命の灯が掻き消えることは誰の目にも明らかであり、彼が首を縦に振る他になかった。


黒の王子が怪訝な顔持ちのまま刃を首から遠ざけられると、この場からすぐに立ち去れとだけ言うと、剣を鞘に収めその美しい肢体をまた泉に浸け清める。


態と困難な道に誘導した導師に苦々しい表情を向けながら、九死に一生を得たことに心の底から安堵を覚えていた。


同時に、導師がなぜ黒の王子が女性であることを知りながら害されることはないのか、と訊けば彼はこう答える。


曰く、今は暫しの暇を頂いている身ではあるものの、私は黒の国の先々代前の王の血を引く者の一人であり、百年前は宮廷に仕えていた事がある故という。


百年前、そう聞いた男の子はやはり驚愕を露にする。この者はただ者ではないことは確信していたものの、流石にヒトの理から大きく外れた存在であるとは知覚していなかった故である。


隻眼の導師は姿を消す前に、伝えなくてはならない事があると言う。曰く、貴殿は今まで殺戮をもって事を収めてきた。此度の試合は貴殿にとっても分岐点である。これまで同様全てを殺すか、或いは全てを救うか、という試練なのだ、と。

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