第64話
疑問を解決させた王子に礼を述べつつも、男の子はまたひとつ疑問を浮かべる。使用人とされる者たちは配膳に徹するのみであり、あと十人以上はゆうに腰掛けられるであろう長い食卓には、彼と上座に居る黒の王子のみが馳走されていることである。
首を傾げている男の子に気がついた黒の王子は手にした食器を一旦置くと、真剣な、それでいて重々しさのある面持ちで彼の疑問を晴らす。
王の血を引く者は、この城にはもう私しか居ないのだ。どういうことかと男の子が問えば、私以外の王の血を引く者は悉くが戦場にて露と消え、或いは赤の女王に骨の髄まで食い散らかされ、その結果自分のような、齢十四を迎え成人の儀を行ったばかりの自分にお鉢が回ってきたのだ、という。
そう言い放つ王子に嘘偽りなく、太陽のような瞳は分厚い雲に遮られるように曇り、今にも怒り狂う雷鳴を轟かせんとする空模様を形作っていたことが何よりの証明であった。
表情こそ、つい先刻まで見せていた穏やかさを保つが、陽の光のごとし暖かな瞳は、近づくもの全てを悉く燃やし尽くす灼熱の業火を放ち、見ている男の子の肌をもじりじりと焼くようであった。
同時に、その瞳の奥から見え隠れする、血を別けた者との離別を経た者の、自らと同じ悲しみを背負い涙した心の片鱗が顔を覗かせていた。
男の子は食事の最中、黒の王子の瞳をずっと気がかりのまま、旅の中ですっかり空いた腹に晩餐を噛み締めながらを取り込むのであった。




