第63話
男の子が旅の疲れを癒すために布団に横たわって暫くすると、扉を叩く音と共に開かれ、先程とは別の、蛇のような外見の獣人が食事の用意ができたと言い案内される。
連れられてきた食堂は、長いテーブルクロスが敷かれた年季の入った食卓の上に既に幾つかの皿が置かれており、上座には椅子に腰かけて彼を待つ黒の王子が居た。
相対する形で下座に着くと、そこへ順次料理の乗せられた皿が配置されていく。王子は陽のように穏やかな顔持ちで、毒など盛られていないから遠慮なく手を付けたまえ、と促す。
お言葉に甘えて、といった様子で前菜と思われる皿に食器を伸ばし、口に運ぶ。近くの森で採取したとされる新鮮な野菜の数々に舌鼓を打つ。
ふと、男の子は周りを見回せば、互いに同じ料理が用意されたと思いきや、黒の王子のほうは一品だけ皿が少なく、メインディッシュとおぼしき肉料理が用意されていないことに気がつく。
なぜ貴方の皿には肉が盛られていないのか、と疑問を口にする男の子。それに答えるために黒の王子は部屋に立て掛けられたタペストリーを指差し、誇り高い心持ちで言う。
曰く、我々黒の国は太古から存在する神を信仰している。王族ならびに黒の国へ忠誠を誓った戦士達には信仰の証として誓約を立てる事が習わしであり、神はそれを遵守する限り加護を与える。事実、是を守る限り御加護は絶対であり、私はあらゆる戦場において傷を負ったことは唯の一度もない、と。
私の場合は、日が沈む間は肉を口にしないという誓約を課している。と疑問の答えも続けて述べる。
もし是を破った場合加護は失われ、一日経った時に神からの裁きという形で代償を支払う事となる。一度失った加護を取り戻すためには、裁きを受けた後七日間あらゆる者との接触を絶ち、不眠で神に祈りを捧げる必要があるとも告げた。




