第61話
丸一日歩き続け、日が再び落ちた頃に、男の子はひとつの大きな明かりを見つける。彼が目にしたものは、非常に大きな城を中心に広がる街並の、東に位置する獣人たちが暮らす黒の国に辿り着いたのである。
赤の国の女王が座する、王権の象徴たる純金の城とは対照的に、黒の国の王城は幾年もの月日を、移り変わる王や民を共に過ごしてきたに久しい、暗がりの遠目からでもわかる荘厳さを醸し出していた。
男の子が早速都市を囲う分厚い壁の入り口に立てば、見張り役を担っていた豚顔の獣人ふたりは、彼の顔を見るなり手にしていた槍を喉元へ突きつける。
警告ではない、明確に殺意を剥き出しにして見張り役は、いったい何の用か、と威圧するような強い口ぶりで問い質す。
男の子はそれに気圧されることなく、差し向けられた鋭い穂先に敢えて一歩踏み込み、懐から紹介状を突き出し眼を強く見開き言う。
私はこの国の王の元へ謁見しに参った。諸君らが人間の私を信用せず、憎むならばそれでよい。二十でも三十でも、気が済むまでその槍で私を穿て、と。
確固たるものをぶつけられた見張りの槍は、強い震えが帯び始め、目の前をぶらぶらと揺らぐ。そこへ騒ぎを聞きつけた様子の、額から伸びる雄々しい一本の角が特徴的な、金髪の美しい獣人が制止する。
男の子から見るに、その人物は男物の服装を纏うその姿と凛々しさの見て取れる表情から男性と見えるが、ともすれば女性とも取れる声の高さに加え、微かに見える幼さから男の子よりひとつかふたつは歳が下と鑑みる。
見張りは彼の姿を確認すれは素早く刃を収め、美男子の道を開ける。それは非常に高貴な出立ちをしており、一挙一動から止ん事無い身分であることを伺わせた。




