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第55話

───一寸先も見えぬ鉄の臭いが漂う汚泥の道を踏み歩く内に、男の子は微かに射し込む光に目を覚ます。


身体中の血の巡りを確かめると同時に、脇腹に纏わりつく痛みが、今そこに存在する生を男の子に認識させる。


傷口は塞がってはおれど、中身は未だ癒えておらず、少しの動作で全身が痺れる程の痛みが走り悶える程であった。


その肉の痛みに歯を食い縛りながら身体を起こせば、見覚えのないテントが目の前に広がる。辺りは男の子と同じ、或いはそれ以上の重態の者が多数横たわり、一部は既に息を引き取ったと思われる者も存在した。


無事であったのか。と隣から声を掛けられる。男の子がそちらを向けば、全身が茶色く変色した包帯に巻かれた男がいた。


彼はシーツの上に身体を預け、辛うじて震わせている喉と瞳以外は微動だにせず、顔面に至っては元々の顔立ちわからない程に爛れ、どうにか犬或いは狼と思われる骨格であることが判別できる程であった。


この男もかの無色の王同様獣人であった。あらためてテントを見回してみれば、男の子以外は皆悪魔の血縁である獣人達であった。


包帯の男は目だけを男の子に向け、君が赤の軍勢を倒したのかと訊き、これを肯定した彼に感謝を述べる。


曰く、これであの場で散った彼らの怨念は晴れ、無事に輪廻の輪へ旅立つ事ができるであろう、と。

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