表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/89

第54話

選べ、と声は告げる。ひとつは穏やかなる道。激しい悦びも、想像を絶する苦痛もない。此れをつまらないと嗤うか、しかして存外、悪いものではない。ヒトらしい、暖かな最期だ。


もうひとつの道は、貴殿にこの上無き万雷の喝采を与えるだろう。人を救い、善を成し続け、遂には英雄として最高の誉れを授かるだろう。


だが、その場所へ至り、そして生を終えるまでに、途方もない絶望を幾度も味わうことになる。煉獄すらぬるま湯同然であろう、血塗られた道だ。


男の子を試すような物言いをする掠れた声に、彼は答えを示すために一歩踏み出す。迷いのない足取りは重く、しかし力強く踏み締めた一歩を積み重ね、赤黒い泥濘ぬかるみの道を歩く。


後悔はないか。掠れた声は先程とは違い、行く先を案ずる親のような、または溜め息と共に心底呆れ果てたような口調で問う。


男の子は振り向くことなく、ただ首を左右に振る。これ以上の問答は必要ないと言いたげに。


それきり、男の子は歩を緩めずに泥濘む道を駆け出し、立ちはだかる荒野を行く。影法師はそんな彼の後ろ姿を、ただただ憐れみの目で見守り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ