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第51話
雄々しさの象徴とも言える剛毛はしなやかさを失い、金の鬣を自分から流れ出た蒼で痛々しく染め上げながら、それでもなお戦おうとする。
その姿に男の子は違和感を覚えた。獣らしくない、と思っていた。幼い頃から狩りをしていた彼からすれば、獣の行動の基本は生きるために直結すると学んでいる。
しかし魔獣は生き残るために逃げたりするのではなく、まるで天から糸で操られていて、壊れた人形を無理矢理演じさせているように敵意を剥出しで潰れた咆哮を上げるのであった。
魔獣は全身をびくびくと痙攣させながらも、一歩もその場を動けない。槍に染み込んだ毒が効果を見せているようで、悲鳴を上げ苦しみに悶えながら、しかし完全には息絶えることはなかった。
見かねた様子の男の子は吹き飛ばされた大弓を拾い上げると、矢を一本番い魔獣の眉間に狙いを定める。
せめてもの慈悲。自分には伺え知れない苦悶から楽にしてやる。そう決意した一射は的の中央を綺麗に貫き、そして悲鳴は完全に途絶えた。
辺りが静まり返ったと同時に、魔獣の首輪が光を失い真っ二つに割れる。まるでもう必要ないと言いたげに。




