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第45話

男の子の顔に返り血が飛ぶ。同じだ、と述懐する。まだ自分と母の世界が生きていた頃、一度死んだ世界のことを。飛び交う断末魔が耳に届く度、鮮明に思い出される地獄。


蹂躙劇を続ける男の子を見る黒い鎧の兵達には、容易く命を奪う様はまるで悪鬼羅刹を思わせる。


一方で、その瞳には涙が溢れ返り、とても今まさに殺しをしている者とはとても思えなかった。


そこへ、彼を止めるために一匹の魔獣が立ちはだかる。赤の軍団が使役し切り札としていたモノで、神話の時代から生息していたとされる怪物中の怪物であり、分厚い城壁を粉砕し大穴を開けたのも、ひとえにこの魔獣の力があればこそであった。


その姿は十尺以上はゆうにある体躯に、名工が鍛え上げた刀剣にも勝る、鈍い輝きを放つ鋭い牙と爪を持ち、全身を覆う金色の剛毛と鬣を敵の鮮血で彩る、飢えた獅子を思わせながらも、それを遥かに上回る程の凶悪な面構えをした四足獣だった。


常人ならば目にするだけでたちまち震え上がり、雄叫びを耳にすればたちまち恐慌し、思考が麻痺し、やがて迎える死が目に見える形になったかのような存在が立ちはだかる。

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