第38話
自らの対峙した魔性の実態を耳にし、あらためておぞましいと身を震わせる男の子が息つく間もなく、彼の耳に鈴の音が鳴り響く。
無色の王曰く、近くに仕掛けていた罠に何者かが懸かった、とのこと。男の子も助けていただいた恩を返したいとのことで同行を取り付けると、青の外套を纏い、強張りの弓と菫色の魔槍を携え向かう。
男の子が眠っていた家屋の外は緑の生い茂る密林であり、無色の王の誘導に従い付いて行けば見晴らしのよい丘にたどり着く。
無色の王は指差す。指先の遠く離れた地点には、赤い鎧を纏う兵士達が蛇のごとく列を成し、森の入り口まで迫っている。
どういうことかと男の子は問えば、無色の王はあの軍勢は赤の女王が差し向けたものであり、このような事態一度や二度ではないと答えた。
男の子はそれを聞くや否や、強張りの弓を構えたと思えば矢を射る。放たれた矢はちょうど進軍をする兵士達の先頭に突き刺さり足を止めさせる。
突然降り懸かった矢に微かなどよめきが生まれた軍勢に向け、男の子は肺にいっぱいの空気を吸い込むと、角笛のごとき声を張り上げる。
これより先に近づくことは許さない。この言葉を無視し進む者は全て射殺す、と。
子供の声、と侮る先頭は兵士は警告を無視し入り口に差し掛かると、次の瞬間には肩を射抜かれ絶叫を上げる。
次に激昂した兵士が槍を構え踏み入れんとすれば腕が吹き飛び、盾を構える者がいればそれを砕き胴を射ち抜かれた。
その後も放たれた矢の悉く必中を成し、矢が尽きれば近くに転がる石ころを番え、百は血染めにしたところでとうとう弓に番うものが無くなってしまった。
一方の軍勢はというと、いっこうに赤い蛇はとぐろを巻いたまま、尾まで見える様子はなかった。如何に優れた弓の射手だとしても、射るための物が無ければどうすることもできず、歯噛みする他なかった。




