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第28話

魔女は男の子の答えを聞くと、燕尾服に向け彼をもてなすよう命令を下す。


この城を訪れる者はその殆どが我が神性を宿す力を求める野蛮な輩であり、客人としてもてなすことは久しい、とのことである。


燕尾服が語ることによると、貴君に襲いかかった、あらゆる鎧兜をも貫く白矢の雨に濡れぬ者のみが主の御前へと参れるという。


最後に謁見が叶ったことは百年程前であったとも述べ、故に貴方様は貴重な来訪者であるのです、と。


来客用の一室に案内された男の子は、ひとまず手近な座椅子に腰掛け、息をつく。燕尾服は料理をお持ちいたします、と述べ退室し、部屋には男の子ひとりが残される。


託された魔槍をじっと見つめ、本当にこの一刺しで戦を終幕させ得るのか、と首をかしげる。


そこへ、扉を開け部屋へと何かが進入してくる。上質かつ様々な布地で作られた白獅子の頭に、首から下が学士のような風貌の二頭身にぎっしりと綿詰めされた、所謂ぬいぐるみとでも言うべきモノだった。


ぬいぐるみは器用に幾つかの書物を抱えており、近くの机の上に乱雑に積む。なにごとか、と彼が思えば、口が無い筈であるぬいぐるみが声を発する。


驚かせたかい。その涼しさのある声の主には、男の子のなかにひとりだけ心当たりが付いていた。


お前は導師殿か。と問えば、ぬいぐるみは全身で肯定を表す。口無しのぬいぐるみはまた爽やかさのある声で語りかける。


曰く、私は君の身に付けている腕輪を介しこの使い魔を送りつけている。君が魔女と謁見している間に、その魔槍と関係がありそうな書物をまとめておいた、と。


それに対し男の子は導師に何故ゆえ回りくどいことをする、と述べる。貴殿ならばこの問題の答えを心得ているのではないのか、とも言う。


導師は男の子に、自分は人の成長のための通過儀礼を設けることははすれど、人を救うことはしない、という。


曰く、私や混血の魔女の手にかかればあらゆる難事は解決できよう。しかしそれでは我らに頼りきりになり怠惰のまま成長することをやめてしまう。


我ら、旧き神々の血と叡智を受け継ぎし者は人に試練を課す。だが奇跡は我らにすがることにあらず、自らの力で導くなり。それが神々の信仰を捨てた時、人に課せられた義務なのだ、と。


そう言い残すと、ぬいぐるみはぱたりと力無く倒れ込み動かなくなるのだった。

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