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第22話

帝国へと帰還した勇者を待ち受けていたのは、脅威を取り除いてみせた勇気ある行動に向けた万雷の喝采などではなかった。


彼らが帝国を季節が移り変わるほどの期間を留守にしている内に、未曾有の疫病が蔓延する事態となり、日夜対応に追われ凱旋を祝うあそびすら持てずじまいであったというのだ。


帝国じゅうを観察し終えた男の子は、自らが見た光輝く世界の指先からゆっくりと、しかし確実に崩れ去る様を目の当たりにした。


同時に、あくまで指先爪先といった部分はもはや致命的といえる有り様であるにもかかわらず、首都に近ければ近いほど疫病の害が目立たないという事態に疑問も抱いた。


男の子は皇に謁見を申し付けるや否や、なぜ民を皆救わないのかを直談判する。それを耳にした富ある者達は嘲笑をもってそれに答えた。


なぜ嗤う、と憤慨する男の子に皇は駄々をこねる子供をあやすかのように語る。我らの両手はあまりに小さく、多くを掬おうとしても零れ落ちるのが定め。故に全てを救うなど無理、無謀。かつてこの世界を統べ今は理想郷に移り住む太古の神々ですらそのような奇跡は叶わぬのだ、と。


男の子は歯噛みした。そんなことが認められるものか。憤りを抑えきれず、吐き捨てるように皇に暴言を言い放つと、不敬として警護の兵達から槍を一斉に向けられ、抵抗むなしく捕えられてしまった。


男の子は謹慎として、城の地下牢に放り込まれてしまう。三週も経てば出してやろう、と兵士達は伝える。


牢の中で男の子は、そんなに待ってなどいられん、と焦燥を露にする。しかし、どうすれば疫病に苦しむ民を救えるのか、皆目見当がつかないのである。


薬など民すべてに配るにしても、そんなもの大量に持ち合わせてはいない。かといって自らが調合する術を会得しているかといえば、そうでもない。男の子は武芸十八般に長け、聡明さも兼ねてはいれど、決して万能とは程遠く、とくに魔術や薬学などとなるとてんでだめであった。

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