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第20話

それはすぐに訪れた。男の子は意図して隙を晒し、好機到来とみた鎧の騎士が手にした銅の剣が襲う。浴びれば命が絶たれるであろう必殺の一太刀を紙一重で捌き、即座に反撃として頭部目掛け横一閃を振るう。


肉を斬った感触が弱い。男の子はそう手応えを感じた。青銅でできた兜に剣の威力を削られ一撃必殺には至らなかったものと理解したためであった。


ひび割れた兜は今の宝剣の一撃で完全に損壊し、真っ二つに割れ騎士の素顔を揺らめく熱気に晒される。


それを見た勇者の男の子は言葉を失う。自身の目を疑った。これは虚像だ。そうに違いない。そう必死に、必死に自らへ言い聞かせる。


男の子の脳裏に焼き付いているその顔は、自らに血肉を分けた父親そのものであったのだから。


ああ、そうか。知っていて当然だ。自分に武芸の一切合財を授けたのは何を隠そう我が父。懐かしさを感じるのも剣の先がわかってしまうのも至極当然であった。


男の子の理性は沈着冷静に疑問を解答に導く。だが魂、ひいては心は違った。軋む。また、軋む。痛い。痛い。痛い。痛い。


以前も同じようなコトがあった。燃え盛る景色。充満する死臭。そして、そして。


それから先、男の子の記憶はひどく曖昧だった。いや、わざと曖昧にしている、と言った方が適切である。無理に思い出そうとすれば、胸に刺さった針が自身の核と呼べるものを抉るような痛みに悶え苦しむ結果に終わる。


ただ、男の子が明確に覚えていることといえば、口と鼻に充満する鉄の味に、刀身を血塗れにした宝剣、肉体を文字通りの八つ裂きにされた醜悪な悪魔。


そして、彼の父と同じ顔をしたリビングデッドの騎士の胸を貫き、命を削り合う死闘の末に勝利した瞬間垣間見せた、穏やかな表情。


それを目の当たりにした瞬間、自分のなかの見えないなにかがまたひとつ、崩れ去る音がしたことだ。

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