第16話
周囲の醜聞を出陣式の代わりに受けながらふたりは都を跡にした。死人を操る悪魔は都から離れた場所に存在する、凶悪な犯罪者を幽閉しているとされる監獄塔を拠点とするとの情報を聞きつけ、数日を掛け森や山を抜けた。
道中、人形のように操られたリビングデッドが行く手を阻むことが幾度もあり、その中には卓越した剣術などを披露したモノもいた。
赤髪の騎士が言うに、死人の魂の残り香のようなものを感じとり、その魂の記憶や経験を再現させることも可能だとのこと。
同時に、再現といえど嘗て生きていた頃の技すべてを完璧に投影することはまず不可能に近いとも述べ、それはこれから相対する悪魔がどれほど強大かを物語っていた。
勇者は信頼する騎士から授かりし聖槍で群がる死人の軍団を一払いでそれらをまとめて両断する。
不浄不徳貫く槍の前に仮の肉が使い物にならなくなったと見るや、蛆の湧きつつある頭から細長い何かが飛び出す。赤髪の騎士はそれを見逃すことなく、一節の詠唱と共に炎の矢を幾重にも喚び出すと、その悉くを焼き殺した。
呆然とする勇者の少年を尻目に高速で詠唱を絶え間なく行い、何もない空間に光の小剣を矢継ぎ早に喚び出しては撃ち出し、リビングデッドの軍団を浄化、殲滅する。
優れた叡智を披露する赤髪の少女に、勇者の少年は万雷の拍手をもって讃える。
当の本人も、やはりわたしは武具を振るうのは性に合わない。魔力の矢を嵐のように撃っていたほうがいちばんです、と自嘲気味に漏らすのだった。




