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第10話
灰色の空を呆然と見上げ立ち尽くす男の子に、声を掛ける者がいた。赤髪の騎士であった。彼女はその美しい髪も息も乱しながら無事であった男の子に駆け寄る。
男の子は赤髪の騎士を見るや否や、皆は無事か、と藁にもすがる思いで問うが、彼の質問に少女は苦悶の表情とともに残酷な事実を涙ながらに口した。
わたし以外の人々は昨晩亡くなった。女子供、老若問わずすべてあの炎と暴力の渦に露と消えた、と。
少女はただただ、ごめんなさい、ごめんなさい、と泣き崩れ嘆きの声を上げるしかできなかった。
どうしてわたしは自分だけおめおめと生き延びてしまうのか。どうして君に二度も過酷な受難を背負わせてしまったのか。
無力を嘆く少女に、男の子は頼みがあると告げる。なにかと涙で顔を歪ませている少女は訊くと、こう答えた。
自分のこの長い髪を切ってほしい。せめて自分やこの場にいない父の代わりに母と共に行くものを用意してあげたいと。
少女は言う通りに、一筋の涙で頬を濡らす男の子の美しい髪を腰に下げていた宝剣で切る。
髪は風に乗り、哀悼の花代わりに、荒野と化した屍の林に舞い散るのだった。




