7話
ベッドの中に戻って、少しだけ寝て、小屋のなかで朝を迎えた。
ドワーフが朝方取ってきた食材がテーブルに並べられた。
「少しの間、彼らのお世話になることにしたの。エラもよろしくね」
「ありがとございます。それと、よろしくお願いします」
こんなにお腹いっぱい食べさせてくれるなら何時まででもいたいものだ。
壁に飾ってある地図にはここの場所やわたしの村の位置も印してあった。
わたしにとって都合がいいのは村とここが近いということだった。
「それとわたしからも提案があるんだ」
わたしからの提案にスノウの泥を落として綺麗になった顔がこちらを向いた。
やっぱり彼女は想像した通りに顔立ちが良かった。少し目元が勝ち気そうな感じの。
わたしからの提案はこうだ。
ーーーわたしがリンゴ売りとなって、村から情報をもらってくるの。都合が良いことにここはわたしの住む村から近いからリンゴもたくさんとってこれるし、わたしの情報が漏れてなければ、怪しまれることもない。それにそうだとしても追われてるわけでもないわたしが一番リスクが少ないわけだし、どう?ーーー
一息に言い切った提案に賛成もなければ、反対もなかった。
そもそも身動きがとれるのはわたしかドワーフの訳だから、他に選択はないと思ったのだ。
ドワーフはあまり人間の村では歓迎されないし、お兄さんも追われてるとなるとわたしが一番話を聞いてくるという点では動きやすいのだ。
スノウもお兄さんも良い顔はしなかったけど。
提案をして次の日すぐわたしは行動に移った。夜明けすぐに住んでいた村に行き、リンゴをこっそりと籠につめ、その足で当たりをつけていた村へ向かった。
売り文句はこうだ。
「いかがです? リンゴは入りませんか? 甘くて蜜たっぷりのリンゴですよ! もぎたて新鮮、一番美味しいですよー! 」
事実ではあるが、買ってもらえるわけでもない。
今回は目的は別にあるのだから、まあ気にすることではないが。
ここまではお兄さんに頼むわけにもいかないので、ドワーフにわたしの住む村と王国軍が通ったであろう村まで連れていってもらっていた。
帰りも時間がきたら、村の外れで落ち合うつもりだ。
「おねえさん、よければいかがです? 食卓に一品! 」
「いらないよ、そんなもの」
つれない言葉だ。彼女で何人目かなんて数えるまでもない。
「そんなこと言わずに。一つ買ってもらえるだけでも。じゃないとお母さんが王国軍に捕まっちゃう」
わざとらしいかとは思ったが、ひねることを知らないわたしの精一杯の表現だ。
「うちだって同じさ! 数日前に王国軍が通ったお陰で店がボロボロなんだよ! 八つ当たりしやがって! 」
彼女が掃き掃除していた家の前にとれかけた看板から酒場と読み取れた。
確かに中でテーブルは壊れて、椅子も皿もひっくり返ってる。片付けているのは数人だけだ。店先も窓ガラスが割られていた。植木鉢もひっくり返っている。
「……ひどいですね。よければわたしも手伝いますよ」
「あんたみたいなガキが何できるっていうんだい! とっととうせな! ……まったく厄日だよ。王国軍は何日かしたらまたくるっていうし、ガキには絡まれるしね! 王女がなんだっていうんだい! どうせ、もうの垂れ死んでるだろうよ! 」
ここまでだろう。この人、口がゆるゆるだ。
彼女が見えなくなるまで距離をおいてから、段差に腰を掛ける。時間はまだまだあるけど、特にこれ以上聞くつもりはなかった。
聞いてもたいした答えは返ってこない気がしたのだ。




