6話
テーブルいっぱいのご馳走が目の前に並んだのをみたとき、夢のようだった。
王女様のために見栄に見栄をはって全ての食材を使った料理達はとても美味しくて、お腹がこんなにも満たされるものだとはしらなかったのだ。
だらしなく椅子にもたれ掛かり、寝転ぶ。
「わたし、初めてだよ。お腹いっぱいになるまで食べたの」
誰に言うでも言葉が漏れた。
頭を撫でてくるお兄さんの手を止めようとは思わなかった。
「それで、王女サマはこれからどうするだ? 」
「どうするって……あなたこそどうするのよ。もう戻れないでしょう」
わたしも、あなたも。
暗い声だ。王女様には戻りたい場所があるのだろう。
「俺はどこでも生きられる」
「エラはどうするつもり? 」
「家へ帰すさ。そこに住むのもありかもな」
男手が増えれば村のみんなも喜ぶだろう。
ただ、
「あんまりおすすめしないよ。わたしの村は王国軍がよくくるから」
「どういう意味だ」
「わたしの住んでる村はリンゴを名物としていて女王様ってリンゴ好きなんだってね。わたしたちの村は女王様に税ではなく、リンゴを納めてるから。よく来るんだ。危険だと思うよ」
意識半分で話してるから、変に聞こえてなければいい。ゆったりと口から溢れる言葉に対して、彼らが何を話し合っているかは聞いていなかった。すでに夢の中だ。
夢の中ではお母さんとお父さんが生きていて、そこにスノウが国王と一緒に笑っていて、お兄さんがわたしの隣に立って何か言っていた。困ったような顔でわたしを見てから頭を下げるのだ。
そこで目が覚めた。
辺りを見渡せばそこは小さな家でわたしのボロボロの家とも違った。
本当に夢のような夢だった。
隣のベッドには王女様が寝ていて、床にはベッドで寝れなかった二人のドワーフが寝転がっていた。ただ、お兄さんの姿はなさそうだ。
また外に出されたのかも知れない。
「お兄さん、こんなところにいたんだ」
切り株を背もたれにして、寝てはいなかった。目を開けて森の奥深くをみていた。
「寝てなくていいのか」
「たくさん寝たよ、たくさん食べたしね」
母さんだって隣のおばちゃんだってあんなに食べたことないんじゃないかと思った。
お腹が減ったままでは満足に寝れるものではない。リンゴではお腹は膨れない。いつも小さな物音で目が覚めるのだ。
こうやって数日離れるだけでそれが懐かしい、と思ってしまう。
「これからどうするの? 」
「さあな。王女様次第だろう」
「そっか。スノウ次第かあ」
お兄さんはそれに従うのだろう。わたしが寝てる間にどんな話をしたかは知らないが、少しは仲良くなったということだろう。
「なら、わたしも一肌ぐらい脱いであげようかな」
わたしなりに助けたかった。スノウに死んでほしいわけじゃない。お兄さんに全部任せたいわけじゃない。でも、できないことをしたいわけじゃない。
わたしにできることをできる範囲でやりたい。




