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フリーアの娘〜最高神を宿した村娘が特別部隊に守られて役割を終えるまで〜  作者: 晴坂しずか
第2章 フリーアの娘とエノータ派

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第21話 ずっと前から

 イズンはふっと息をつき、彼女を見上げる。

「素直になりなさいよ。あんたが素直になって彼と話が出来れば、すぐに解決できるような問題だとあたしは思うけどねぇ」

「っ……そう、ですよね」

 自覚があるらしく、メイリアスは悔しそうにうつむく。

 ユーティアはそんな友人の姿を見て、自分も何か言ってあげたいと思った。しかし、イズンのように心を読むことができないため、どんな言葉がメイリアスの胸に響くか分からない。

 すると、イズンは呆れたように視線を外して言い捨てた。

「馬鹿げた話だと思うけど、パシェイソンはあんたに嫌われたんじゃないかって思ってるよ。何かあるたびにあんたのこと考えて、嫌われやしないかっていつも不安にしてる。あんたが素直にならないからだ」

 メイリアスの表情に変化があった。

「そういえば、あたし……自分から好きだって、言ってなかったかもしれない」

 彼からすれば不安になるのは当然だと気がついたようだ。

「そういうことだったんですね。ありがとうございます」

 と、メイリアスは穏やかな顔をした。

 イズンは彼女をちらりと見ただけで、返事をすることはなかった。それでもメイリアスはかまうことなく、仕事の続きへと戻っていく。

 様子を見ていたユーティアは内心で、やはりイズンはすごい人だと感心していた。


「あ、ダリウス……」

 仕事を終えて廊下へ出たメイリアスは、階段を上がってくる人物に気づいて足を止めた。

 ダリウスもまた、その場に立ち止まって気まずそうな顔をする。

「メイリアス……何で、こんなところに?」

「な、それはこっちの台詞よ」

 と、震えそうになる足を動かし、彼の前まで向かう。

「何か用があるんじゃないの? 軍人が遅い時間にこんなところにいるのは変だわ」

「……そ、そうだよな。じゃあ、言うけど」

 と、二段上に立っている彼女を見上げるダリウス。覚悟を秘めた瞳でじっと見据え、唇を開いた。

「この前は、ごめん。オレ、自分の気持ちばっかり押しつけて、勝手だった」

 メイリアスははっとして脳裏にイズンの言葉を思い出す。

「だから、ちゃんと話し合おう。今度はお前の意見、ちゃんと聞くから」

 と、ダリウスが優しい顔をして微笑む。

 メイリアスは一段、階段を下りた。

「あたしの方こそ、ごめんなさい」

 もう一段下りると、目の高さが彼とほぼ同じになる。

「あたし……あなたに甘えてたのかもしれない。あたしだって、本当は……」

 その先が言葉にならない。感情ばかりがあふれて泣き出しそうになるメイリアスを見て、ダリウスは言う。

「何だよ? ちゃんと聞いてやるから言えよ」

 メイリアスは一度口を閉じると、少し気持ちを落ち着かせてから告げた。

「あたしだって……あたしだって、あなたのことが好きなの! ずっと前から好きだったの!」

 言い終わる頃には頬が熱くなっていた。それでも強気に彼を見つめ続けたメイリアスを、ダリウスがうれしそうな顔をして抱きしめた。

「そっか。ずっと前から、か」

「ええ、そうよ。あたしに優しくしてくれた、日から……」

 今思えばきっかけは単純だった。仕事でミスをして落ち込んでいるメイリアスを励まし、笑わせてくれたのが彼だった。

「あんたは覚えてないかもしれないけど」

 と、メイリアスが言うとダリウスは即答する。

「覚えてるよ。だってオレ、あの時にはもうお前のことが気になってたから」

「っ……!!」

 メイリアスは彼の背中へ腕を回すと、うれしさを言葉に出来ない代わりに首元へ頬を埋めた。

 両親のためとか、貴族だからとか、そんなことはすべて関係なかった。ただ互いが互いを好きでいるなら、それだけで十分だったのだ。

「オレはお前を笑顔にしたいんだ。そのためなら、どんなことだってしてみせるよ」

「うん、ありがとう……」

 彼の温もりに包まれて、初めてメイリアスは素直な気持ちでいられたように思った。


 机の上に置かれていた書類を手に取り、ティースは紙面に目を走らせた。

 大量のキャンドルの発注について書かれており、それは親しくしている者からの報告書なのだと分かる。それだけなら何てことはないのだが、ティースは目をみはった。

「まさか、本当に本気で……」

 兄の本気を思い知った気がして胸が高鳴った。

 直後に扉が開き、戻ってきたアルバライト=オーフェは神妙に両目を細める。

「感心しないな、ティース」

「あ、これは……っ」

 と、慌てて書類を机へ戻す。

 アルバライトは部屋の奥まで歩いてくると、慣れた動作で椅子へ腰を下ろした。わざとらしく息をつき、ティースを見上げる。

「お前をここに呼び出した理由、報告書を読んだなら、もう気づいているな?」

「……うん。だけど、それは」

 兄を間違えているとは思わないが、止めるなら今しかなかった。

 しかしアルバライトはそれを拒む。

「準備は快調に進んでいる。あとはティース、お前にかかっているんだ」

 ティースは唇を引き結んだ。

「どうしても、やらなくちゃいけないの?」

「ああ。あれを手に入れるにはお前が適任だからな」

「でも、そんなことしたら罪になるよ」

 臆病にそう返したティースへ、アルバライトは呆れた顔をして見せた。

「馬鹿だな、お前は。自分の立場をよく考えてみろ」

 じっと兄に見つめられ、ティースは目を泳がせる。それから彼の言葉を理解して、はっとした。

「そ、そんなの無理だよ! いくら僕でも出来ることには限界がある。それに兄さん、あの部屋の管理者が誰だか知ってる?」

 アルバライトは鼻で笑った。

「シルフィネス・ヴァリ・オードだろう?」

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