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超能力JKと探偵専門学生  作者: 紫雪
京都編

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56/60

56.心配されてる

「さっき聞いたことだけど」


 土田さんの車に乗せてもらい、なつめさんのアトリエに連れて行ってもらっている。後部座席に座る私たちは松さんとの電話の内容について話し合っていた。


「太陽がくれたメモの写真送ったら、白タクの件は名前書いてあった人たちに話聞くみたい。募集してたSNSアカウントは捨て垢だからだいぶ時間かかるとか言ってたけど。で、こ(・)っ(・)ち(・)の(・)事(・)件(・)の方はもうちょっと気づいたことないか絞り出してもらってたんだけど、車について」


「車?」


 私がきき返すと、月緋さんは「そう車」と足を組み直し、こちらに体を向ける。


「葉賀さんは犯人がどこから来たか分からないって言ってたから、車で移動もあり得るんじゃないかと思って。訊いてみると確かに路地に入る自動車は何台かあったんだけど、犯人が使うのはありえないらしい」


 月緋さんは両手の人差し指を立てると、指を近づけた。指と指に挟まれた道が完成する。「これ路地ね、で防犯カメラが……」と右手で指そうとするが、既に役割が与えられていた右手が持ち場を離れたことで一本道が崩れてしまう。少し考えて、私に指示を出した。


「泉璃道作って」


 私はしぶしぶ両手で空気を挟み、道を作った。月緋さんは私の手首辺りを指さす。


「こっちにコンビニの防犯カメラがあるとすると、こっちに道の出口を映す防犯カメラがある」


 月緋さんは指先の方を「出口」と表現した。


「そんなカメラあるんですか?」


「あるらしい。そっちもコンビニだけど」


 それならそっちのカメラに映る人間を調べれば済む話なんじゃ。犯人=なつめさんは被害者の女性を尾行していない。なら、向かいから来ているはず。


 月緋さんはそのまま右手をグーにして、道の間を下から上へと通した。


「車の速度を測ってみたら、一度止まって連れ去る余裕なんてなかったって」


「速かったってことですか?」


「いや別に。車から降りて、刺すかなんかして、被害者を車に入れて、また出発するって流れがどんだけ手際よくても、出口の方に映るカメラに間に合わないみたい」


「屋外ですが、密室、とも言えますね」


 運転席で土田さんが言う。月緋さんは「聞いてたんすか」と内心びっくりしていそうだ。土田さんは「すみませんね」と謝りつつ、会話に参加する。


「犯人の移動方法が分からないというのに、誰なのか特定できるのですか?」


 ふふっと笑う土田さんは、どうやらただ私たちをからかっているようだ。素がこっちなら、太陽さんが適当に対応するのもちょっと納得。月緋さんは困る様子もなく、むしろ堂々と相手をした。


「犯人分かってるけど証拠がないんで。それを探しに行くんです」


 土田さんは「そうですか。それなら犯人は黒井守様ですか」とさらに訊いてくる。月緋さんは「教えない」と敬語を取る。元々とってつけたような言葉遣いは苦手なようだ。薊くんの件でも、柚希先生と話すときでも。


 言いたいことは言いたいように言う。


「俺らから警察が教えてくんない情報得ようとしてるんでしょ。カメラの話は何でもいいんだけど。俺ら午後も明日もやることあるから、邪魔されちゃ困る」


 月緋さんは表情一つ変えずに続けた。


「今、狸坂重丸か誰かが話を聞いていて、なんか行動するつもりなら先に言って」


 土田さんは何も言わず近くの駐車場に入り、車のエンジンを切ると、「到着いたしました」と振り返った。


「失礼いたしました」


 そう言うと、土田さんはポケットからエアタグを取り出した。「話は私が後でお話しするつもりでしたが」とちゃっかり情報を流すつもりだったことを告白する。土田さんが持っていたということは、私たちがどこに行くのかが知られているということだ。


「こちらお持ちになっていてください」


 怪しみながらエアタグを受け取った月緋さんは「位置情報誰が把握してるの」とエアタグを私に渡す。


「重丸様です」


「なんのために土田さんに持たせた?」


「どこに行くのか深由様が気にしていらしたそうです」


 車から降りる。「そう」と相槌だけ打つ月緋さんは半分納得していないようだった。月緋さん視点ではグレーに見える人物。いい人だけど悪い人。私にとっては誰かが悲しむ願いを持つ人。何を願っているかはだいたい見当がついている。


「これ私が持ってていいんですか?」


 土田さんに訊いてみると、当然のように大きく頷かれた。


「深由様は万が一を心配しておりましたので。糸端様がお持ちになるのが一番かと」


 月緋さんは「俺は?心配されてない?」と訊くが土田さんは「そうですねえ」と猫に話しかけられたように適当に頷いた。


 少し歩いて、入口に立つ。両側に商店街が並び、上はアーケードでつながっている。ここから地域が変わりますよと言わんばかりに商店街名が頭上でアピールしていた。夏休みだからか、暑いのにも関わらず多くの人と時間が行き来している。


「師匠?みたいな人にアポ取ってるの?」


 すっかり遠慮がなくなった月緋さんは土田さんに尋ねる。土田さんはほほ笑んだ。


「取った方がよかったですか?」


 あ。これは。


 月緋さんは苦笑いをする。


「やっぱ犯人知ってるでしょ」


「午後にもご予定があるでしょう?行きますよ」


 土田さんが太陽さんと仲がいい理由が分かった気がする。さくさく先導する土田さんの後ろで、月緋さんは「未来の太陽と話してる気分」と両手を挙げて伸びをした。

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