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超能力JKと探偵専門学生  作者: 紫雪
京都編

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50/60

50.杜撰

 私の発言に、一番驚いたのはもちろん、この場にいない柚希先生だった。酔いが覚めてきたのだろうか、さっきまでよりも口数が多い。


「今ので分かったの?」


 私は「はい」と答える。月緋さんも分かってはいそうだけど、いまいちつかみ切れていない様子だった。


「たしかに杜撰な計画だと思いますが、その割にはよく注意している部分がありました」


 さっきの話の流れで分かったようだ。月緋さんは「あ」と手を打った。


「監視カメラだ」


 その通り。私は続ける。


「先生が薊くんを操ったのと同じように、なつめさんにも操ろうとした人がいます」


 月緋さんのスマホから、『ちょっとー』と酔っぱらいの声が聞こえる。否定しないし関係ないから無視。


「カメラをモニターでチェックしている監視員です。なつめさんは、監(・)視(・)員(・)に(・)怪(・)し(・)ま(・)れ(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)身(・)振(・)り(・)手(・)振(・)り(・)を(・)大(・)げ(・)さ(・)に(・)し(・)て(・)い(・)た(・)、と考えられます」


 月緋さんが応答した今回、監視員側からは月緋さんの表情は見えない。だからこそ、監視員にとっては、なつめさんの動きだけが事の重大さを測るものになる。


「怪しむ月緋さんの表情が見えないことをいいことに、なつめさんはそれっぽく振る舞ってたのでは?」


 スーツケースを持って人の部屋に入ろうとする奴など、正直怪しいだろう。監視員の記憶に残ってしまってもおかしくない。その怪しさを軽減させるために行動し、かえって月緋さんの記憶に残ってしまった。月緋さんは「たしかに」と頷いてくれる。


 じゃあ、もし私が出ていた場合は?


「じゃあ、泉璃が一人で黒井守なつめに応対していた場合も、同じことが言える」


「その時はもっと大げさだったと思います」


 本当は人をケースに詰めているのに、それすら悟られないようにするんだから。


「帰り際誰もいない部屋に、手を振ったりでもしたんじゃないですかね」


 廊下に出て、あたかも部屋の中で私に別れを告げるような仕草でもすれば、監視員は私が部屋にいると誤解するだろう。


「そんなおっそろしいこと考えんなし」


「彼にとっては疑われることさえしなければ勝ちなんです。正直言って、誰かに容疑をなすりつける必要はないです」


 こうなった場合、監視員はなつめさんが部屋を出て行った後に、私が何らかの形で連れ去られたと考える。密室が完成する。ここに、なつめさんが「僕が行った時から窓は開いていた」とでも証言すれば、警察は犯人が外から侵入したとでも考えるだろう。捜査を遠回りさせるくらいはできる。その後は分からないが、時間を稼げばどうにかなるのなら、なつめさんに勝算はある。


 ここまで説明して、私の話は終わった。静かに聞いていた柚希先生が口を開く。


『糸端さんの話がもし本当だとしたら、やっぱりちょっと粗いと思う』


「それは泉璃の考えが、ってこと?」


 月緋さんの質問を、先生は否定した。


『いや、その犯人の行動が。穴が多すぎる。俺がもしその通りにするなら、目標にもうすぐ到達するから急いでる、くらいの段階じゃないとやらないね』


「俺がとか言うなよ」


 変わらず犯人の立場になってものを言ってくれる。まあそのために呼んだのだけど、ここまで真面目に取り組まれるとだんだん申し訳なくなってくる。


「先生は、犯人の目標が何なのか分かりますか?」


 先生は少し考えるような声を出す。眠そうだ。


『ここまで来たら、二人で考えれば分かるんじゃない?』


 どうやら眠たいらしい。長考した感じを出しといて、あまり考えていなかったようだ。『ただね』と話を続ける。


『機会があればもう一度狙ってくると思うよ、それくらい焦ってたんだろうね』


 だんだん声が小さくなっていく。ありがたい助言をいただき、ついでに月緋さんに質問した。


「そういえば、なつめさんからもらったのって何だったんですか?」


 月緋さんは特に何の意味もないようで、ごみ箱を指して言った。


「白いユリ。一本だけ」


『それならなおさらだねー』


 眠たい声で、先生が言った。どういうことか聞こうと思ったけど、『僕(・)寝るから切るー』という声でタイミングを逃してしまう。


 月緋さんの「おやすみー」を律儀に聞いてから切られた電話は、ある種の静けさを漂わせていた。


「さて」


 空気を断ち切るように、月緋さんは立ち上がる。時計で時間を確認した。


「もうちょっとしたらお開きになるだろうし、松さんたちと合流したら風呂入って寝よ」


「もう終わりですか?」


 今日はもう考えないのだろうか。もう少し煮詰めたらなつめさんの目的が分かりそうなのに。


「これ以上は想像でしかない。から、また明日、気になっていたとこ見に行こ」


 観光できなさそー、と背伸びをする。今はもう、参考にできる情報を使いつくしてしまった。


 月緋さんは着替えるため、一度自分の部屋に戻るそうだ。上着を抱えてドアを開ける。葉賀さんが帰ってきていないだろうかと私も廊下へ向かうと、だいぶかわいがられたのか、ほくほくした顔の太陽さんが自分の部屋に戻ろうとドアノブに手をかけていた。目が合う。


「ツキもしかして」


 タイミングが悪かった。ちゃんと突っ込んでくれる警察もいないうえ、デジャヴに飽きたらしい月緋さんが「しー」とか言いだすから、誤解を解くことができなかった。

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