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2日め、仲良しこよしの男子2名

自動扉を抜け、我々は指定都市駅への道を歩く。指定都市とはいえ、通勤・通学時間からずれているためか、道行く人の数は随分と少ない。飲食店街も開店している店舗は少なく、閑散としている。指定都市の昼と夜の顔の違いを体感しながら我々はてくてくと歩く。


道行く人の数が少ないぶん、指定都市駅へは20分とかからずに到着した。駅構内へと我々は歩みを進める。私の買ったジャケットとTシャツ、友人の買った書籍が入っているコインロッカーの前に立つ。


「うん? あぁ、しまった……」私は声をあげた。


「どうしたの?」返事を返す友人。


「ほら、ここのロッカー、ランプが全部赤色。どれも使用中だよ、参ったなぁ……」


「じゃあ、荷物を持ったまま遊園地に行く?」友人の声は不安げである。


「いや、よし……じゃあね、ほら、駅の裏手に高いコーヒーを飲んだ喫茶店があったじゃない、あっち側にもロッカーはある、はず」指定都市に慣れているとはいえ、ロッカーは滅多に使わない私、少し自信がない。


我々は指定都市駅の構内を縦断して裏手側に出た。ロッカー探しで時間を消費したくはないのだが、こういう時に限って目当てのものは見つからないものである。手分けして捜索するも、発見できない。これは2日め、幸先の悪いスタートだな……私の心に暗雲が広まる。


「あのさ、この駅じゃなくてもいいのでは?」友人が言う。何を言っているんだコイツ。駅のロッカーにその重量級のボストンバッグを預けなきゃ機動性が著しく低下するでしょうが。この駅じゃなくてもって、どこを指して言っているんだか。


「だからね、指定都市駅じゃなくても、降りる駅にもロッカーはあるんじゃないの?」と続けて友人。


──そういえば。


昨日、ショッピングセンターのある指定都市郊外駅で降車したとき、その駅の構内にロッカーが並んでいたっけ。あぁ、そうだ、私は馬鹿だった。馬鹿というか、思考の柔軟性に欠けていた。何も指定都市駅のロッカーに固執する必要はないのだ。機動性が必要なのは遊園地での話であって、そこに移動する間は電車に乗るわけだし、ごもっともな指摘である。それに、郊外駅であればまず空きがあるとみて良い。


頭の中で思ったことをそのまま友人に伝えると、友人は誇らしげな顔をしている。してやったりの表情である。


「君、意外と頭が固いんだね」友人が微笑しながら言う。その台詞に、私が大きな舌打ちをしたのが友人には聞こえただろうか。


「ホームに移動しましょうか……」私は小声で友人を促した。


遊園地のある方角に向かうローカル線の車内。車窓からは住宅街と、あれは大学だろうか。あぁ、18歳の私に度胸があれば、この都会でキャンパスライフを送っていたのか……。でも、その度胸のなさのおかげでこの友人と知り合えたわけだし──あれこれ回想していると、負傷した私の左肩を気遣ったのか、それとも偶然なのか、A駅と中継駅では私の左隣に座っていた友人が今日は右隣に腰掛けて、耳打ちしてくる。電車内では小声で。教授したことを実践している友人。この24時間で随分と成長したものだ。


「あのさ、最初はゴーカートに乗りたいんだけど」と友人。


「お化け屋敷は最後にしよう、前菜がゴーカートでお化けがデザート」と私。


2人仲良く座席に座ってくすくす笑う。仲良しこよしである。そんな話をしつつ、車窓からの眺めを楽しみ、我らが地元の大学で2人が出会った頃の思い出話をしているうちに、ローカル線の電車は遊園地のある指定都市郊外駅へ到着した。


重要案件だったロッカーの問題は、あっさり解決した。降車して改札を抜けると、並んだロッカーにはかなりの余裕があって、料金も指定都市駅のロッカーより横幅があって100円安い。重量級のボストンバッグと不要な着替えをロッカーに押し込み、我々は2日めの目的地、遊園地へと向かった。


「昨日から結構歩いてるけど、大丈夫かい? 睡眠時間も短かったようだし」私が言うと、友人は答える。


「全然」言って友人は恒例のサインを送ってくる。


2人並んで遊園地への道を歩く。天気も良好。雑談をしながら歩く。歩道の電信柱には、遊園地まで200mとの案内が出ている。もう少しだ。そう思うと、わくわくしてくる。大の大人がこれから遊園地ではしゃぐのだ。昨日出発してから24時間が過ぎている。あっという間の1日だった。お互いが社会人となってから、初めてプライベートで出向いた指定都市。こんな時くらい、はしゃいでもいいじゃない?


「おっと、見えてきましたよ」声のトーンを上げながら友人が言う。


「お、着いたねぇ、来ましたよ、遊園地」私も声のトーンが上がる。


ゲート前の案内板を2人で仲良く眺める。


「どうせなら、フリーパス買っちゃう?」私が提案する。


「そうしよう、そうしよう」さらにトーンの上がった声で友人が答える。


ゲートをくぐり、受付の遊園地ユニフォームに身を包んだ女性に終日フリーパスのチケット料金を支払う。


受付の女性から「あらら、男2人ですか、色気がないねぇ……」こんな台詞を言われた気がしたけれど、それは私の幻聴。私と友人はフリーパスを首から下げると、前菜のゴーカートへ向かって駆けた。


(10話に続く)

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