43 クリーガー
きっと、声をかけてきたのがケータだから協力しようと思ったんだ。ケータが優ちゃんの兄だということは記憶の片隅にあったのかもしれない。
ケータがいたから憧れのお兄ちゃんのようになれたんだ。ジュンやユーキを助けようと思ったのはケータがいたからだ。
ケータをお兄ちゃんの代わりにしていたのかもしれない。
「ありがとう。お前がいてくれたから、今の俺があるんだ」
「本当にお人好しだな。お前がそう思うなら、俺のお願いを聞いてくれるか?」
「俺にできることなら」
「お前にしかできない。俺と友達になって、これからも俺と妹に会ってくれ」
そんなこと。それは俺の方が頼むことだ。
それをケータからの願いということにして、俺に許可を与えてくれた。
協力関係は解消して、これからは友達で、今後も妹に会って良い。
クリーガーの戦いに参加して得たものは、棄権しても無くならなかった。
ジュン、ユーキ。
失ったものを取り戻したいと思った人たち。そして、代わりのものを手に入れた。
ヨースケ。
忘れていた幼馴染み。今では思い出せている。
ケータ。
俺が助けられなかった少女の兄。クリーガーの戦いの協力者。失ったモノを取り戻した人。
ケータのおかげで、俺も失った記憶を取り戻すことができた。
涙を手の甲で拭って、笑った。ああ、俺は笑えている。
「わかった」
「じゃあ、まずは」
腕時計が震えた。ケータも気付いたようで、眉を寄せた。
近くにクリーガーがいる。しかも、戦闘条件を満たしている。
ポケットから瓶を取り出して蓋を開け、液体を指に付けて舐めた。細胞が活性化するのを感じる。
反対側のポケットからケースに入れた針を取り出し、指に刺した。
「ケータ」
ケータはすぐに指を口に含んだ。この流れは二人で決めたことだった。戦闘条件を満たしていない場合は準備する時間があるから、まずは指に針を刺してからケータの手に血液を付ける。戦闘条件を満たしている場合は先に俺がクリーガーになっておく。傷が塞がるのが早いから、指はそのまま口に入れる。
これが最後の戦いだ。
「逃げるが勝ち!」
ヨースケの手を取って、研究所へ向かって走った。ケータも分かっていたようで、同時に走り出していた。
4回勝って、失ったものを手に入れた。もう、戦う必要はない。




