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希う  作者: 樒 七月
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44/45

44 後日談

書こうと思っていて、入れることができなかった設定です。

 クリーガーの戦いを棄権した後、自宅に帰った。ユーキに連絡すると、一緒に行きたいと言って久しぶりに俺の家で泊まることになった。ユーキが一緒で良かった。記憶を取り戻してからずっとユーキの家にいたから、初めて自宅に帰ることになる。事情を知った今は、家に入るのに少し緊張した。

 ケータは、一度病院に戻って優ちゃんの状態を確認してから家に来た。検査の結果は後日ということで、今病院にいても仕方ないとのことだ。今日は両親もいるし十分甘えれば良い、自分は明日から補習がないから毎日見舞いに行く、ということらしい。

 三人揃ってソファーに座り、お茶を入れて一息吐いた。話題は自然とクリーガーのことになった。

「そういえば、お前たちはどうやってクリーガーに覚醒したんだ? 条件を摂取したんだろ?」

 隣に座っているユーキ、正面にいるケータは眉を上げた。

 変な質問だったか。でも、他人の唾液、汗、涙、血液が口に入る機会なんて考えにくい。俺も特殊な状況で覚醒したわけだし。

「そうか、お前は偶然彼女の涙が口に入ったって言っていたな」

「何それ、聞いてない。偶然口に入るってどういう状況?」

 ケータは思い出したようで、頷いていた。ケータには、クリーガーについて教えてもらった時に俺の覚醒時のことも話していた。ユーキには話す機会がなかっただけで、別に隠していたわけじゃない。

「それはまた後で話すから。で、どうやって覚醒したんだ?」

「プールだ」

「オレも。体が軽くなってビックリした」

 そうか。プールでは全部が混じっている。そう考えると気持ち悪いけど、それはお互い様か。プールで水が口に入るのは必然だ。そして、自分にクリーガーになる素質があったら。

「へえ。俺は怪我が治ってラッキーって思った」

「怪我してたって! 何その状況!?」

「それは後で。プールってことは、夏には覚醒する奴が増えるのか」

「そうだな。このタイミングで棄権できて良かったな」

 ケータは口元を緩めた。ケータが本当に笑うのを見るのは初めてだ。いつもは嫌な笑い方や、作り笑いだった。優ちゃんが元気になって、戦いを棄権できたことでやっと安心できたのかもしれない。

 笑顔が本物かどうか見極められるなんて、嫌な特技だ。近くで作り笑顔を見てきたから、自然と身に付いた。両親の世間向けの笑顔、汐里の笑顔は9割が偽物だ。

 そういえば、ケータは汐里をずっと『彼女』と呼んでいるな。

「ケータは相変わらず汐里を名前で呼ばないんだな」

「仲良くするつもりはないからな。俺とは合わない」

「同族嫌悪か?」

「そうかもな」

 そういうことか。世渡り上手というか、上辺だけの付き合いというか。そういうところが同じだから、合わないんだろう。汐里の方は何とも思ってなさそうだけど。汐里は、俺に関わる人は積極的に関わろうとする。そこに好き嫌いはない。だから、ケータとも俺のことで連絡を取ったんだろう。

 きっと、二人とも自分が認めた人だけは特別なんだ。ケータはジュンやユーキのことも、過去を知ってからはちゃんと名前で呼んでいる。まあ、汐里風ではなく順、友希という呼び方だけど。

 俺のことはイチローって呼んでくれているけど、協力関係があったからかな。

「とにかく、最初に会ったクリーガーがケータで良かった」

「俺もだ。イチローが協力してくれて良かった」

「ズルいよね。最初って特別じゃん。条件も貰ってさ」

「ケータに会っていなかったら、お前にも会っていなかったかもしれないんだ」

「そうだけどさ」

 ユーキは分かりやすく拗ねていた。ケータは呆れた顔で相手にしていない。この二人は仲が良いんだか悪いんだか。

 ここにヨースケがいたらどうしただろう。ヨースケも幼馴染みで特別だから、ユーキは拗ねるかもしれない。でも、ヨースケはぼんやり見ているだけだな。ジュンがいたら、汐里のことで共通の話題があって盛り上がっているかもしれない。

 昨日の敵は今日の友ってところか。奪い奪われる戦いだったけど、結果的に俺は幸せだった。

「みんなに会えて良かった」

 思わず漏れた笑みに、ケータは薄く笑い、ユーキは無邪気に笑った。

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