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希う  作者: 樒 七月
38/45

38 自己完結

 ユーキの希望もあり、好意に甘え、夏休みはユーキの家で過ごすことにした。ケータには学校を知られているから、夏休みに入っていて良かった。俺が自宅に帰っていないことは分かっているだろう。自宅以外にケータが俺について知っているのは学校だけだ。だから、学校で待ち伏せされる可能性が高い。

 俺も、ケータについて知っているのは学校だけだ。記憶を取り戻してからケータの妹が入院している病院は調べたけど、見舞いに行ったときにケータがいるとは限らない。ケータに見つからないようにケルンを渡す方法は、学校しかなかった。

 ケータの通う高校は、夏休みでも受験に向けての補習があり、登校する日がある。こんなに早くケルンが手に入るとは思っていなかったから、一ヶ月先の予定はお互いに把握していた。それがこんなことで役に立つとは。

 ケータからの連絡は一日に一回はあった。電話には出ないし、メールも見るだけにしている。それでも、何かあった時のために着信拒否にはしていなかった。まだ、協力関係は切れていない。クリーガーのことで何かあったら、助けに行くつもりだ。ケータは条件を摂取できないだろうし。

 そんなことが起こる前にケルンを渡したい。

「悪いな」

「別に良い。暇だったから」

 ケータの通う学校の正門が見える側道で、ヨースケと一緒に立っていた。

 ヨースケは戦いから棄権して、一般人になっている。クリーガーとしての戦闘経験はあったけど、全部引き分けにしたとのことで、勝てる戦いを引き分けにしたらしい。そういうところは、記憶にある幼い頃のヨースケと変わらない。

 ヨースケの強さについては、汐里から全国中学校柔道大会に出ていたことを聞いた。ずっとヨースケと連絡を取っていて、俺が記憶を失っていることも伝えていたらしい。

 それを知っていたから、ヨースケの取り戻したいものは俺との関係性、つまり俺の中のヨースケの記憶だったわけだ。

「俺の記憶のために戦うなんて、何考えてんだ」

「大切だったんだ。汐里と修二とお前と一緒にいた思い出が」

「本当にお前は……見た目不良なのにな」

 そういえば、目付きが悪いからという理由で母親に柔道を習わされたんだったか。見た目で絡まれるだろうから、という理由で。ヨースケも逆らわずに真面目に取り組んだようで、全国大会出場という結果を残している。

 勉強好きのシュージ、可愛くて要領の良いシオリ、目付きが悪くて不愛想なヨースケ、地味なイチローこと俺。この戦いで、失っていた幼馴染みの関係を取り戻した。

「ケータとは会わないで良いのか?」

「ああ。会うと、また事故のことを思い出すだろうから。ケータも多分同じだ」

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