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希う  作者: 樒 七月
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 あの事故のことは時折夢で見ていた。いつも手を伸ばして届かないところで目が覚める。あの後、警察署に行って大変だったのに、夢ではそこまで進まない。道路に倒れていく女の子と目が合ったところで夢が終わる。

 事故に遭った女の子の名前は、地方のニュースで報道されていたのを見て知った。優ちゃん。お兄ちゃんの名前と同じ「ユウ」だった。お兄ちゃんと同じ名前を持つ子を助けられなかった、ということが辛かったのかもしれない。あの時の気持ちだけはまだ思い出せていない。

 ケータに会ったらきっと、夢の続きを鮮明に思い出すだろう。曖昧な記憶が、はっきり形作られるはずだ。ヨースケのことも、記憶を取り戻してからヨースケに会って鮮明になった。忘れていたのが不思議なくらい、いろんな思い出が溢れてくる。それがケータに会って同じように思い出したら。

 嫌いじゃないのに、会うことができない。

「時計が反応してるぞ」

 腕時計が震えていた。また言われるまで気付かなかった。下校ラッシュは過ぎ、今は人通りが少ないから、クリーガーが特定できれば戦闘可能だ。腕時計はケータを対象外にしていたのを解除したから、ケータにも反応するようにしている。でも、ケータの学校には他にもクリーガーがいるかもしれない。

 校門の死角に隠れ、人が出てくるのを待った。

「ケータだ」

 学校から出てきたのはケータだった。周りに人はいない。一緒に帰る友達はいないみたいだ。下校時間が違うから、友達は先に帰ったのかもしれない。

 久しぶりに見るケータは、前と違っているように見えた。毎日のように会っていたから、違和感がある。

 深く息を吸い、腕時計を向けた。言葉と共に吐き出した。

「フェスト」

 2回目の宣言は、苦しかった。

お兄ちゃんの「ユウ」は「由宇」です。

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