表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希う  作者: 樒 七月
PR
37/45

37 自分のこと

 ケータから逃げた後、ユーキが追ってきていたのを撒いた。ケータはクリーガーになっていなかったから追いつくはずがない。ユーキも初動が遅れたから追いつけなかった。

 クリーガーの効果が消えるまで、走り続けた。適当に走ったけど、方向は何となくわかる。携帯電話の電源は切っていた。今は誰からの電話も出たくない。でも、アイツには連絡しておかないと。近くにあった公衆電話で汐里に電話を掛けた。

 記憶を取り戻したことを説明すると、「そう」とだけ返された。良かったね、でもなく大変だったね、でもない。当て嵌まる答えなんてなかった。

 汐里には家に帰らないことを伝え、その後にユーキに連絡してユーキの家に泊めさせてもらった。ユーキには心配をかけさせたくなかった。ケータとのことは、俺の問題だ。ケータはユーキと連絡先を交換していないから、俺の居場所が知られることはない。汐里に連絡しているかもしれないけど、汐里もユーキの連絡先は知らないはずだ。知っていたとしても教えたりしないだろう。

 ユーキには、失った記憶を取り戻したことを説明した。幼馴染みのヨースケのこと、両親のこと、それにケータの妹を助けられなかったことも。

「イチローは悪くないじゃん。ケータも犯人が捕まったことを知ってるんだから、心配することないと思うけど」

「問題はそこじゃないんだ。俺がそのことを忘れていたっていうのが問題なんだ」

 ケータはどう思っただろう。妹の事故の現場にいた男。最初は犯人だと疑われた男。本当は妹を助けようとしたということも知ったはずだ。その男が、事故の記憶を失っていたとしたら。

 俺だけが辛いことから逃げた。

「嫌なことから目を背けていたんだ。今でもあの子は戦っているのに」

「その事故が嫌なことだと思っているのが許せない? 嫌なことだから忘れたっていうのが」

「ああ。自分が嫌なんだ。何も解決しないのに逃げる自分が。だからユーキ、俺が嫌いになったら言ってほしい」

 俺が俺を嫌いなのに、他の人に好きになってもらえるなんて思っていない。両親でさえ放任している俺を信頼してほしくない。汐里にもそのことは伝えている。

 全部偽善なんだ。偽物なんだ。お兄ちゃんのようになりたいという理由で誤魔化しているんだ。

「嫌なことから逃げるって普通じゃん。誰もが立ち向かっているわけじゃない。自分に厳しすぎるって」

「記憶を忘れるのが普通か? ヨースケのようにお前のことも忘れるかもしれないのに」

「その時は、忘れたくなるようなことがあったってことだろ。そんなアンタでも、オレは一緒にいたい。偽物でも良いんだ。イチローの家族愛は、オレにとっては本物だから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ