25 お兄ちゃん
再度の即答に、苦笑が漏れた。それだけ渇望していたのだろうか。手に入れられないと思っていたから、手に入ると思ったら逃さないように飛びつく。こういうところは汐里に似ているかもしれない。汐里よりは素直そうだから、楽かも。
掴まれた手を解き、握り直して握手に変えた。
「うん、弟でいくか」
「あーそれが良いかもな。お前は甘えたいんだろ? じゃあ年下ポジションだな」
ケータは諦めたのか、話に乗った。ジュンの時もそうだったけど、害が無くて自分に関係ないと判断したらどうでも良いみたいだ。俺が協力者として動くのに影響がなければ良い。まあ、俺もケータよりユウキを優先するつもりはない。
「そういえば、『お兄ちゃん』とは最近会ってないのか?」
「あーお兄ちゃんは死んだから」
「……悪い」
「いや、説明不足だった。憧れていた従兄弟のお兄ちゃんが死んで、お兄ちゃんのようになりたいと思うようになったから。前から理想像はお兄ちゃんだったけど、いなくなってから一層目標になったんだ」
お兄ちゃんの突然の死に、一時期抜け殻のようになっていた。惰性のように生きていた。兄さんからはキツイことを言われたりしたけど、汐里は何も言わなかった。そんな時、お兄ちゃんの手紙が見つかった。そうなることを予測していたかのように「自分がいなくなったら」という内容の手紙だった。
俺と兄さん宛ての手紙には、「自分がいなくなって生きるのが辛くなったら、誰かを助けることで辛さを忘れてほしい」ということが書かれていた。お兄ちゃんのことを忘れるんじゃなくて、辛いことを忘れることを勧めていた。お兄ちゃんらしい内容に、目標を決めて生きることにした。
兄さんは病気で苦しむ人の助けになるために、薬の研究の道に進んだ。俺はまだ進路を決めていない。選択肢が増えるように勉強はしているけど、どの大学、どの学部に進学するかは決められない。今はクリーガーの戦いが優先だけど、この戦いで進路が見つかるかもしれない。クリーガーになったからこそ、ケータ、ジュン、ユウキに会えた。
この戦いは俺に必要だったんだ。3回負けることで何かを失うという条件でも、2回までは戦える。その間で、きっと何かは見つかっていた。最初にケータに会えたのは幸運だった。
「お兄ちゃんはいないから、思い出だけになるけど。想像だと美化しているかも」
「でも、それがアンタの家族に対する愛情なら良いよ」
ユウキは楽しそうに握手したまま手を上下に振った。可愛い、と言えなくもないか。そういえば、お兄ちゃんには弟がいたけど、弟はこんな感じだったかも。最近会ってないから今はどうしているかわからない。同じ弟でも俺はこうではないし、ユウキとの擬似兄弟は結構楽しくなるかもしれない。
「彼女風に言うと『ユーキ』か」
「そうだな」
「彼女? アンタに彼女がいるの?」
「ただの幼馴染みな。俺はイチローで、こっちがケータ。特別な呼び方だ」




