26 特別
特別、と強調して言うと、ユーキは困ったように笑った。
本当に見返りを求めない好意に慣れていないんだな。ユーキの見た目や印象から交友関係は広そうなのに、上辺だけの関係ばかりだったのかもしれない。それとも、ユーキが信じていなかったのか。自分に与えられるもので無償のものなんてない。そう思っていたみたいだし。
一方的に与えるだけの好意は疲れるかもしれないけど、出来るだけのことはしよう。お兄ちゃんがそうであったように。
「これから家に来るか? 泊まっても良いし」
「行きたい! 泊まりたい!」
「俺と会った時と同じだな」
ケータの何気ない呟きに、ユーキは過剰に反応した。握手したままの手が痛い。
ケータはユーキのことが嫌いなのかも。まあ、さっきまで戦ってたわけだし、好きにはなれないか。しかも首を締め上げられた上に簡単に負けを宣言されたし。自分勝手すぎるというか。
「ユーキ。俺はケータに協力してるから、ケータの戦いを優先する。それだけは変えられない」
「……わかった。それを、それだけを我慢したら良いってわけ?」
「ああ。幼馴染みよりもお前を優先する。弟、だからな」
汐里の方の問題は落ち着いたし、ユーキを優先しても大丈夫だろう。大抵のことは汐里は自分で解決するし。まあ、汐里にユーキのことを説明する方が面倒かもしれない。ケータのように呆れられるか、諦められるか。俺のお兄ちゃんに対する憧れを知っている分、諦めの方かも。
弟、という単語が嬉しかったのか、困った笑顔は擽ったそうな笑みに変わった。誰かの笑顔を見るのは好きだ。それが本当の笑顔だったなら。汐里の笑顔は半分が作り物だけど、ケータはあまり笑わないけど、たまに見せる本当の笑顔が好きだった。その笑顔が俺によって引き出されたものだったら。
ああ、俺はそれを望んでいたのか。
「で、ユーキはどうするんだ? このまま戦い続けるのか?」
「あーオレは自分が生きてるっているのを実感したくて戦ってたからね。もう戦う理由はないんだけど」
「じゃあ、棄権するか?」
「いや、アンタたちの戦いが終わるまで棄権しない。アンタたちに何かあったときには助けたい」
「は? 『たち』って、俺も助けるのか?」
「イチローが協力してるんだから、当たり前でしょ」
本当は嫌だけど、と言いたげな様子で、ケータも「そういうこと」と納得していた。俺を基準に考えるのは止めて欲しい。
ユーキには棄権してほしかったけど、俺が棄権しない限りは無理か。戦い続ける限り、俺がいなくなる可能性がある。今までは自分を大切にしていなかったけど、これからは気を付けないといけない。大切な人を失う痛みを知っているから、俺がユーキを傷付けないようにしないと。
「で、アンタは後何回勝てばいいの?」
「後2回だ」
「ふーん。オレが代わりに戦っても良いけど」




