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希う  作者: 樒 七月
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26/45

26 特別

 特別、と強調して言うと、ユーキは困ったように笑った。

 本当に見返りを求めない好意に慣れていないんだな。ユーキの見た目や印象から交友関係は広そうなのに、上辺だけの関係ばかりだったのかもしれない。それとも、ユーキが信じていなかったのか。自分に与えられるもので無償のものなんてない。そう思っていたみたいだし。

 一方的に与えるだけの好意は疲れるかもしれないけど、出来るだけのことはしよう。お兄ちゃんがそうであったように。

「これから家に来るか? 泊まっても良いし」

「行きたい! 泊まりたい!」

「俺と会った時と同じだな」

 ケータの何気ない呟きに、ユーキは過剰に反応した。握手したままの手が痛い。

 ケータはユーキのことが嫌いなのかも。まあ、さっきまで戦ってたわけだし、好きにはなれないか。しかも首を締め上げられた上に簡単に負けを宣言されたし。自分勝手すぎるというか。

「ユーキ。俺はケータに協力してるから、ケータの戦いを優先する。それだけは変えられない」

「……わかった。それを、それだけを我慢したら良いってわけ?」

「ああ。幼馴染みよりもお前を優先する。弟、だからな」

 汐里の方の問題は落ち着いたし、ユーキを優先しても大丈夫だろう。大抵のことは汐里は自分で解決するし。まあ、汐里にユーキのことを説明する方が面倒かもしれない。ケータのように呆れられるか、諦められるか。俺のお兄ちゃんに対する憧れを知っている分、諦めの方かも。

 弟、という単語が嬉しかったのか、困った笑顔は擽ったそうな笑みに変わった。誰かの笑顔を見るのは好きだ。それが本当の笑顔だったなら。汐里の笑顔は半分が作り物だけど、ケータはあまり笑わないけど、たまに見せる本当の笑顔が好きだった。その笑顔が俺によって引き出されたものだったら。

 ああ、俺はそれを望んでいたのか。

「で、ユーキはどうするんだ? このまま戦い続けるのか?」

「あーオレは自分が生きてるっているのを実感したくて戦ってたからね。もう戦う理由はないんだけど」

「じゃあ、棄権するか?」

「いや、アンタたちの戦いが終わるまで棄権しない。アンタたちに何かあったときには助けたい」

「は? 『たち』って、俺も助けるのか?」

「イチローが協力してるんだから、当たり前でしょ」

 本当は嫌だけど、と言いたげな様子で、ケータも「そういうこと」と納得していた。俺を基準に考えるのは止めて欲しい。

 ユーキには棄権してほしかったけど、俺が棄権しない限りは無理か。戦い続ける限り、俺がいなくなる可能性がある。今までは自分を大切にしていなかったけど、これからは気を付けないといけない。大切な人を失う痛みを知っているから、俺がユーキを傷付けないようにしないと。

「で、アンタは後何回勝てばいいの?」

「後2回だ」

「ふーん。オレが代わりに戦っても良いけど」

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