24 家族愛
ちゃんと説明しておいた方が良いか。誰かのためじゃなく、自分のために戦う理由。
いろんなことを忘れているけど、俺の原点だけは忘れない。
それを説明する前に。
「で、この戦いはどうするんだ?」
「エンデ。これで良いよね」
あっさりと宣言したユウキは、期待するように凝視してきた。なんか前と雰囲気が違ってないか。幼くなったというか、子供っぽくなったというか。ジュンや汐里とは違って計算してやっていないところが危うい。期待されるとそれに見合うモノを返せるか不安になるんだけど。
一息吐いてケータを見ると、ケータは胡坐から片膝を立てた後、呆れたような表情で見上げてきた。ジュンに続いて呆れられるのは2回目だ。説教は後にして、今は勝ったんだから結果オーライだ。終わり良ければ全て良し。人間万事塞翁が馬。
ケータに向かって苦笑すると、掴まれた手に力が込められた。地味に痛い。クリーガーの力だから、骨が折れるかもしれない。折れてもすぐ治るけど、折れる痛さは同じだ。
「ユウキ」
「戦いは終わったデショ。だから次はオレの番」
「……わかった。でもその前に俺の自己紹介というか、説明をさせてもらう。ユウキの言う『家族愛』と違っていても困るからな」
力が込められた手をそのままに、その場に座った。引かれるようにユウキも座り込んだ。
3人でこんな風に話すなんて何時振りだろう。幼馴染みと遊ぶときはいつもこの三角だった。二人と隣り合うこの距離感が懐かしい。
そうだ。その話をするんだった。
「俺の両親は共働きで、仕事が忙しくて家に帰ってくることは少ないんだ。兄も自分勝手だしな。俺の家族愛は、従兄弟のお兄ちゃんから感じたものだ」
「それは?」
「見返りを求めない愛」
言葉にすればそれが一番適当だった。いつも優しかったお兄ちゃん。甘えても良いんだと分かったときは衝撃だった。甘やかすだけじゃなくて躾けられた。親から教えてもらうことをお兄ちゃんから教えてもらったと言っても過言ではない。たまにしか会わないから、お兄ちゃんから褒められるように頑張った。
そんな時感じたのは、お兄ちゃんは俺に家族の愛情をくれるけど、俺はそれを返さなくても良いということだった。同じだけの想いを返さなくてもいいというのは気楽だった。友達でも恋人でも、愛情には見返りを求めるものだと思っていた。自分が好きなんだから、相手も好きを返してくれると期待している。好きを返さないと離れていく。そうじゃない愛情は、初めてだった。
「ユウキは彼女からの愛じゃ駄目なんだろ?」
「あーそっか。彼女だと、オレも愛情を返さないといけないから面倒だった」
「お前、好きで付き合ってたわけじゃないのか」
ケータが呆れて目を細めて睨んだ。軽蔑している。好きでもないのに付き合うというのが嫌なのか。俺は汐里がいたから自分が付き合うということを考えたことがなかった。多分、汐里の恋人、シュージが帰ってきてからそういうことを考えられると思う。シュージが近くにいないと、自分のことは後回しにしがちだ。
「付き合ってみたら好きになるかもしれないじゃん。だから、告白されたら試しに付き合ってみたり」
「付き合ってみたら面倒になったって? それって相手にも失礼だろ」
「最初から言ってるし。好きにならないかもしれないって。それでも良いからって付き合ったのに、愛情を要求するってさー」
「相手も相手だけど、お前もお前だ。好きな奴に好きになってほしいってわかるだろ」
ケータの言っていることは正論だけど理想論だ。相思相愛で始まる関係なんて限られている。試しに付き合うのはアリだ。でも、ユウキのは間違っている。
「自分には何もない」と思っているから、与えられるものは受け取る。でも、与えることを考えていない。何もないんだから、与えられるものは何もないと思っているのかもしれない。見返りを求める愛情が面倒になるのは当たり前だ。
だから、家族愛という見返りを求めない愛を望むんだろう。
「で、その『家族愛』でいいのか?」
「うん。それがいい」




