表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希う  作者: 樒 七月
23/45

23 欲しいモノ

 ケータが苦しそうにもがいている。腕を引っ掻かれても手を放さない。

 このままだと危ない。気絶するだけなら良いけど、死んでしまうかもしれない。

 ユウキの腕を折るか。でも、それでケータの首の骨が折られたら。

 怖い。また、誰かが死ぬのを見たくない。

 代わりになれるならなってやるのに。俺を狙えば良いのに。どうやったらユウキは手を放すんだ。

 俺が出来ることなんて。

「ユウキ! 俺がお前にあげられるモノなら何でもやるから!」

 そう叫ぶと、ユウキの手から力が抜けた。ケータは落下し、噎せていた。

 良かった。ケータが無事で本当に良かった。

 下を向いてケータの無事を確認していると、ユウキの腕を掴んでいた手を反対の手で掴まれた。逃がさないというような力加減に、顔を上げて視線を合わせた。

「……本当に?」

「ああ。その前に、お前が取り戻したいモノを教えてくれ」

 腕から手を放し、掴まれた手に手を重ねた。

 ケータが死ななかった代償はいくらでも払う。もう誰かが死ぬところを見たくなかった。クリーガーならどんなに傷付いても傷は治るけど、死んでしまったら命は戻らない。4回勝っても取り戻せない。だから、俺があげられるモノなら何でも差し出そう。それは自己満足だ。

 ユウキのためでもケータのためでもなく、自分のためだった。

「ない」

「取り戻したいものが? 失ったものも?」

「オレには最初から無かったんだ」

 ユウキは吐き捨てるように言った。

 それは嘘だ。いや、嘘を吐いているようには見えないから、勘違いしているのか。クリーガーの戦いに参加できるのは、何かを失った者だ。それを取り戻すための戦いだから、何かを失っていることが前提になる。俺のように失っているものがわからないのか。もしかして、失っているけど取り戻したくないとか。

「生まれた時から何も無かった。すぐに施設に預けられたから両親の顔は知らない。金もない。人が寄ってくるのは顔が良いから。反吐が出そうだった」

 ぎゅっと握られる手は小さい子供のようだった。お願い、手を放さないで。一人にしないで。そう言っているようだった。

 周りにいる人が信じられなかったのかもしれない。自分には何もないから。寄って来るのは利用しようとしているから。

 だから、クリーガーの協力者がいるケータが許せなかったのか。

「俺は何をあげれば良い?」

「何でも良い?」

「俺があげられるものなら」

「家族愛が欲しい。親でも兄弟でも良い。家族に与えられる愛が欲しい」

 即答だった。つまり、本当に欲しいモノだ。

 まさか、そんなモノを要求されるとは思わなかった。家族愛なんて「そういえばそんなモノもあったな」と思う感情だった。確かに、家族がいなかったら与えられることはないだろう。施設の職員は家族愛とは違うと感じたわけだ。

 でも、俺だって両親から貰った記憶がない。兄さんもあんな性格だから優しくされた思い出もない。俺が知っている家族愛は、従兄弟のお兄ちゃんから与えられたモノだ。

 それがユウキの望むモノかわからないけど。それが欲しいならいくらでも与えよう。それはお兄ちゃんのようになりたい俺の願いとも合致する。

「いいよ。ユウキが望む『家族愛』をあげる」

「絶対だからな! 今更無しってのはナシだから! 裏切ったら許さない」

「ああ、わかって」

「またお前は!」

 頷こうとしたところで、ケータの声が被った。声が出しにくいのか、咽喉を擦っている。無理に話さなくても良いのに。

「お人好しすぎるだろ。俺のためとかだったら止めろ」

「ケータのためじゃない。自分のためなんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ