20 幕間
次の日、登校前に研究所に寄って兄さんに着替えを渡した。会って話すのは久しぶりだけど、昨日電話で話したからそれほど緊張しなかった。兄さんはいつもと変わらず無愛想だった。泊まりが続いて疲れが溜まっているのだろう。渡そうか迷っていた昼食用の弁当を差し出すと、両手で受け取られた。学食とコンビニ弁当で飽きていたわけか。疲れていても食欲はあるだけマシだ。部屋には兄さんの他に研究員はいなかった。仮眠でも取っているのかもしれない。
研究所から学校へ向かう途中、ケータにメールを送った。学校へ行く途中にケータの通う高校があるから、タイミングが良ければ途中で会えるだろう。すぐに返信があり、駅近くの公園で会うことになった。学校には余裕で間に合いそうだ。
「おはよう。朝から悪い」
「おはよ。ちょうど良い時間だ。いつもこのくらいにここを通るからな」
「良かった。じゃあ、コレ。容器は放課後に返してくれれば良いから」
「ありがと。助かる」
ケータは兄さんと同じように両手で弁当を受け取った。鞄にスペースがあったようで、弁当箱を上手く収めていた。兄さんの同僚の分として作ってきたものだけど、部屋にいなかったから持って帰った。置いて帰るのもどうかと思うし、兄さんも何も言わなかったし。余った分をどうしようかと思ったとき、ケータの顔が浮かんだ。ケータに何度か手料理を振る舞っていて、気に入ってもらえてるみたいだったから、連絡してみるかと気軽にメールを送った。すぐに返されたメールからも喜んでいるみたいだったし、弁当を両手で受け取ったところを見ると本当に嬉しかったみたいだ。喜んでもらえて何より。
放課後にはクリーガーと戦うことになるだろうから、少しでも栄養を摂ってもらいたい。
「じゃあ、放課後に」
「ああ。またメールする」
軽く手を振ると、腕時計が日光に反射した。思わず手首を握って隠した。
誰かに見られたくないからじゃない。今、俺が見たくなかった。
手を伸ばしたけど届かなくて。もう失うのは嫌だったのに。
お兄ちゃんと同じように、誰かを助けられたらと思っていたけど。それができなくて。
現実から逃げるように、俺はまた記憶を失っている。
この戦いで4回勝った時。失った記憶を取り戻した時。
俺はどうなるんだろう。
お兄ちゃん、俺は幸せになってもいいのかな。




