表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希う  作者: 樒 七月
PR
19/45

19 情報

 汐里を家まで送り、ジュンとは駅に続く大通りで別れた。汐里はジュンと連絡先を交換していたから、これからは俺がいなくても大丈夫だろう。二人で気の済むまで話せば良い。今日は話し足りなかったみたいだし。

 さて、ジュンはまだ駅には着いていないはずだ。携帯を操作し、ジュンに電話をかけた。

『もしもし』

「今いいか?」

『うん。何?』

「棄権したんだな」

 無言は肯定だった。待ち合わせ場所で会った時、腕時計は反応しなかった。昨日の戦闘から24時間経ってなかったから、時計は光るはずだった。でも、何の変化もなかった。

 つまり、ジュンはクリーガーの戦いを棄権したということだ。

『……うん。君が紹介してくれる汐里に失礼かなって。リスクを負ってまで取り戻したいものじゃないなって。今日汐里に会って、棄権して良かったと思ったよ』

「そうか。俺も久しぶりに汐里の楽しそうな様子が見れて良かった。有難う」

『……棄権しない方が良かったかな。君を助けられないね』

「いや、棄権して良かった。俺より、汐里を助けてやってくれ。汐里の友人であるためには、クリーガーは棄権しないといけなかったから」

 クリーガーである限り、近くの者を巻き込む可能性がある。1回の敗北を覚悟して、一般人を傷付ける奴もいるかもしれない。だから、ジュンがこれからも汐里と会うなら、クリーガーであってはいけない。俺のことは考えなくていい。俺は、棄権を考えている奴の助けなんていらない。

『じゃあ、情報だけ。君の最寄り駅から2駅先の広場で、クリーガーと戦ったことがあるんだ。負けちゃったんだけど。その人は、取り戻すための戦いじゃなくて、戦うことが目的なんだって。だから、2回負けている人は相手にしない。その人がいた場所をメールで送るね』

「助かる」

 そういえば、1回勝って1回負けていると言っていた。1回勝った方の情報じゃなくて良かった。そんな奴を紹介されても、戦えない。既に1回負けている奴と戦って、もし止めを刺すことになったら。俺はそこまでして戦いたくない。ケータが戦うというなら、協力はするけど。

『あと、なるべく戦わないでほしい人がいる。この人も戦うことが目的の人なんだけど、相手を痛めつけるのが好きなんだって。すぐに回復するから、かなりエグイ攻撃をするんだ。僕は実際戦ってないけど、戦っているところを見たことがある。相手が「エンデ」と言えないように咽喉を潰して、痛めつけるの繰り返し。24時間の制限があって良かったよ。見つかったけど、逃げられたから』

「わかった。いろいろ有難う。気を付けて帰れよ」

『うん。じゃあ、また』

 ジュンからは通話を切らないだろうから、こっちから切った。そろそろ駅に着くだろう。

 二人のクリーガー。どちらも戦うことを目的としている。取り戻すための戦いなのに、そうじゃない理由で戦うなんて。

 もしかして。もう取り戻したから、後は楽しんでいるだけなのか。4回勝った分はプールできて、3回負けた時の保険になるのかもしれない。2回負けている人を相手にしない方は少しは相手のことを考えているみたいだけど、痛めつける方は嗜虐的だ。傷付けることが楽しいだけだ。すぐに治る玩具。そんな感覚なのかもしれない。

 ジュンが送ってきたメールを、必要な部分だけケータに転送した。すぐに返信があり、明日ジュンが示した場所に行くことを提案してきた。そして、自分が戦うことも。ジュンと戦ったのは自己満足だけど、ケータの戦いは本来あるべき姿だ。失ったものを取り戻すための戦い。誰かを犠牲にしてまでも取り戻したいと強く願った者が参加する戦い。

 戦いに参加しているんだから、一度は何かを失っているはずなのに。それなのに戦いを楽しめるなんて、どんな気持ちなんだろう。

 もし俺が戦うことになったら。その先を考えるのが怖くて考えるのを止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ