11 条件摂取
よくされる勘違いだ。汐里と一緒にいることが多いから、恋人だと勘違いされる。
本当にただの幼馴染みで、汐里の彼氏は他にいる。
「あーだから汐里のことを『彼女』って言ってたのか。汐里の彼氏はもう一人の幼馴染みで、遠距離中だ」
「そうか……それじゃあ、これからは俺と一緒に行動するのに支障はないか」
「そうだな。汐里には仲の良い友達がいるから、俺がいつも一緒ってわけじゃないし」
最近一緒にいたのは、汐里が変な奴に付き纏われていると言っていたからだった。彼氏が近くにいない間は汐里は俺が守ってやる、と二人に約束していた。もう、誰も失いたくない。大切な人がいなくなるのは、もうたくさんだ。
付き纏っていた奴は俺を彼氏と勘違いし、集団で襲ってきた。それがクリーガーになるきっかけだったわけだけど。襲ってきた奴らは警察に捕まったし、汐里のことは解決したということで良いだろう。
「クリーガー探しって、時間の無駄が多いからな。試験勉強でもするか」
「それ良いな。わからないところは教えてくれるか?」
「ああ。俺には勉強の合間に少し戦い方を教えてもらえると助かる。また負担をかけて悪いけど」
ケータにとって『条件を提供される』ということは、返せない恩みたいなものなのかもしれない。きっと血液が条件というのが大きい。傷付けないと手に入らないものだから、手に入れるのに躊躇する。自分の血液で良ければ悩まなかっただろう。でも、他人のものだから葛藤がある。
クリーガーの戦闘は、条件で制限がかかっている。唾液なんて、いつだって手に入る。涙は汐里のようにすぐに出せる人もいるし、目を開けていれば出てくる。汗は肌を舐めれば良い。その中で、血液は物理的に手に入りやすくて、道徳的に手に入りにくいものだ。傷付ければすぐに手に入る。でも、傷付けるという行為が難しい。
そんな条件を提供し、それに見合った見返りを求めない俺は、ケータにとってどう見えているんだろう。汐里という協力者がいる俺は、一人でも戦える。それでもケータに協力するのは、見返りを求めているからじゃない。本当の目的は。




