動揺
(あの…レストランで…)
ゆう
「それはどういう意味…ですか?」
高瀬
「ゆうさん、あなたは
水野純平…
彼の妹さん…ですよね?」
ゆう
!?
高瀬
「僕は純平の同僚で
同じ部署で一緒に仕事をしていました」
心臓の鼓動がどんどん早くなる
太陽が地面を焼く音も
噴水の水が弾く音も
鳥の歌声も
子供達がはしゃぐ声も
何も…聞こえない…
真空の世界がゆうを包んだ…
高瀬
「びっくりさせて…本当にすみません
突然、こんな話……
でも今日は…
この話をあなたにしたくて…
今日でなければ…ダメな気もして…」
「その理由は…ゆうさん分かっていただけますか?…」
ゆう
「………。」
ただ…黙っていた
言葉が出てこなかった
今日は純平…
私のたった一人の兄の
命日だ…
高瀬
「話を続けてもいいですか?」
…ゆうは黙ってうなづいた
高瀬
「純平は『夕凪』で飲んでるとき
よくゆうさんの話をしていました
酔って妹自慢もよくしていて
写メをみせてもらったこともありました
明るくて優しいけど
繊細だから
すぐ考えすぎるんだって
ほんとに
よく…話していました
『俺、シスコンだからさ笑
いや、あいつに彼氏できたらどう思うかな…
彼氏に「こいつっ!」って思うけど、でも言えなくて
「ゆうをよろしく!」とか良い兄貴づらしそうでさ…』って…
どう思う?と聞かれて
お前なら、ゆうを幸せにしないと許さねえとかいって
背中叩きそうだな笑
なんて…話したりもしました」
ゆう
「お…兄ちゃん………」
声にならない声がかすかに漏れる
高瀬
「だからあなたに会ったことはなかったけど…
いや、正確には一度だけ
会っていますが…」
それは純平のお葬式の時のことを言っていることはゆうにもわかった
高瀬
「正直、その時は僕もかなり憔悴していて…
あなたに声をかけることもできませんでした
申し訳ありません…」
ゆう
「そんな…
それはわたしも…同じです
兄のために来てくださってありがとうございました」
震える声を絞り出した
高瀬はそっとゆうの手を握った
「ちゃんとお話したことはなかったけど、あいつがよくゆうさんのことを話していたので、どうしているのかと…いつも思っていました」
その手の温もりが優しすぎて
ゆうの瞳から涙が溢れ出た…
高瀬
「今まで話せなくて本当にすみません…
もっと早く話せばよかったかもしれないけど…
今になってしまいました」
ああ…そうだったんだ
だからこの前の日曜日
珍しく空けておいくださいなんて…言ったんだ
兄のことは毎日忘れたことはない
ゆうにとって優しすぎるくらい優しい兄だった
今もその日のことを思い出すと胸が苦しくなる
でもここにも同じ思いでいる人がいたんだ
こんな…近くに…




